東京農工大学

受験生の皆様

研究TOPICS

植物ホルモン「オーキシン」の謎を解明し、教科書に載るような発見をめざす 農学部 応用生物科学科 応用植物生化学研究室 「教科書に載るような、本質的で重要な研究をしよう」というのが応用植物生化学研究室の合言葉。

「植物ホルモン」という植物の成長調節物質について研究しています。ヒトが成長ホルモンを作るように、植物も「植物ホルモン」と呼ばれる様々な物質を作ります。植物ホルモンの濃度は驚くほど低く、1gの植物に含まれる量は、25mプールの水に角砂糖1個を溶かした程度。微量でありながら、植物の成長や環境適応に重要な役割を果たしています。

私たちが研究する「オーキシン」は、進化論で有名なチャールズ・ダーウィンが発表した植物の屈光性に関する研究をもとに、最初に発見された植物ホルモンです。オーキシンは農業においても重要で、人工的に合成されたさまざまなオーキシンが、除草剤のほか、野菜の着果促進剤や果実成長促進剤等として広く応用されています。

このように重要なオーキシンですが、植物でどのように合成されているのかは、つい最近まで70年近くも謎でした。とても幸運なことに私たちは、植物が「IAA」というオーキシンを、アミノ酸の一種であるトリプトファンから2段階で合成していることを解明しました。これは植物生理学の教科書に掲載される大きな発見でした。農工大はこの発見に大きく貢献しています。

現在、私たちは植物体内で「IAA」とは異なる移動性を示す「PAA」というもう一つのオーキシンに注目し、その生理機能の解明に挑戦しています。「PAA」の生理機能を明らかにすることで、新たな除草剤などの開発にも繋がると期待しています。

研究室の学生たちには「教科書に載るような、本質的で重要な研究をしよう」と言っています。そのためには本質的なテーマを考え、目標に向かってコツコツと研究することが大切です。生物科学の歴史に残るような発見をした時の感動を、学生たちにも味わってもらいたいです。

IAAとPAAの役割の違いについて
農学部 応用生物科学科 笠原 博幸 教授

農学部 応用生物科学科

笠原 博幸 教授

博士(工学)。国立研究開発法人理化学研究所、環境資源科学研究センターを経て2016年より東京農工大学グローバルイノベーション研究院、農学部応用生物科学科教授。

Student's Voice

比良 隼さん

農学府
生物生産科学コース 修士課程1年
比良 隼さん

東京都立立川高等学校出身
PAAというオーキシンの生合成経路について研究しています。PAAを合成できなくなった突然変異体を作り、植物の形態にどのような変化が現れるのか調べることが目標です。

平井 晶子さん

農学府
生物生産科学コース修士課程1年
平井 晶子さん

神奈川県立川和高等学校出身
質量分析計を使ったオーキシン分析などにより、シロイヌナズナの果実形成におけるオーキシン濃度調節機構を調べています。IAAとPAAの働きの違いを明らかにしたいと思っています。

山本真如さん

農学部 応用生物科学科 4年
三浦壮司さん

埼玉県立川越高等学校出身
種子植物の果実形成に重要な役割をもつオーキシン関連遺伝子が、植物進化の過程でどのように機能分化してきたのかを、コケを含む様々なモデル植物を使って研究しています。

※掲載内容は、2020年11月取材時のものです。