研究TOPICS
高機能バイオ肥料を用いた水稲栽培の技術開発を行っています。バイオ肥料とは、微生物を使った微生物資材です。一般的な化学肥料は、石油や天然ガスなどの化石燃料を原料としているので、資源の枯渇という意味で環境負荷が高い。そこで、私たちが開発したバイオ肥料と一緒に使えば、化学肥料の割合を減らしても変わらない稲の収量を確保できます。バイオ肥料の有効成分であるBacilluspumilus TUAT1株は、東京農工大学の圃場から採取したもの。作物の根の成育を促進する効果があり、現在、東京農工大学で特許を取りました。2017年5月から、全国8か所の圃場で試験的な使用がスタートしており、現在は微生物入り資材「キクイチ」という名称で、全農への登録をめざし、さまざまな地域におけるデータや農家の意見を収集することにより、農業現場で適応できる資材として、最終的な最適化を図っています。
また、研究室には、バイオ肥料の成分である外来の微生物が圃場でどのような動きをするのかを分析するチームもあります。分子生物学をベースに微生物の遺伝子を解明し、作物の育成促進に役立てます。この分析チームは、マメ科植物の肥料をテーマにしたドイツの研究機関との共同研究なども行っています。
実習では、学生たちと福島県内の圃場で、バイオ肥料「キクイチ」を用いた飼料用米の栽培を行っています。現場で自然と対峙しながら、メンバーと力を合わせて、実験の段取りを行うことで、社会に出ても役立つ研究の“総合力”を養ってほしいと思います。
研究室の卒業生たちは、公務員として全国の農業現場を支える仕事のほか、肥料メーカー、食品メーカーなどでも活躍しています。
右が「キクイチ」施用
農学部 生物生産学科
横山 正 教授(右)
東京大学農学系研究科博士課程修了 農学博士
大津直子 准教授(左)
東京大学農学系研究科博士課程修了 農学博士
Student's Voice
大学院農学府 生物生産科学専攻 修士2年
元木 太郎さん
私立帝京大学高校出身
茶園における肥料形態や害虫活動と葉内成分の関連性について研究しています。就職先の農林水産消費安全技術センターでは、肥料や農薬の検査を通じて、農業全体の安全に貢献したいです。
大学院農学府 生物生産科学専攻 修士2年
竹内 由季恵さん
私立光塩女子学院高等科出身
バイオ肥料で使われる微生物の分析を行っています。在学中から農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)や肥料メーカーとの共同研究を経験でき、就職先も農研機構に決まりました!
大学院農学府 生物生産科学専攻 修士1年
安掛 真一郎さん
国立茨城工業高等専門学校出身
福島県内の圃場で栽培する新規飼料用米に対するバイオ肥料施用効果の評価をしています。高専では化学を専攻していたので、農学と化学の融合領域で新たな研究テーマを見つけたいです。
※掲載内容は、2017年11月取材時のものです。