Research Area
SUPERCONDUCTIVITY
磁気浮上の図
低温まで冷やすと、突然、電気抵抗がゼロになる現象です。
この電気抵抗ゼロという夢の現象は、無損失で大電流を流せるため、究極のエコと新しいデバイス実現のポテンシャルを秘めています。
次世代の超伝導応用として、早期発見を可能にする医療用MRI、高速輸送可能なリニアモーターカ、世界を繋ぐ無損失長距離送電、船や自動車のモビィリティ用途のモータなどに注目が寄せられています。
現在実用化されている超伝導材料はNbTiやNb3Snですが、冷却するために希少な冷媒を必要とすることが普及への課題となっています。
そこで、我々が今注目しているのは、ありふれた素材から作製でき、小型冷凍機や液体水素温度で運用可能な「MgB2超伝導体」と「鉄系超伝導体(IBSC)」です。
MAGNESIUM DIBORIDE (MgB2)
MgB2 crystal strcture
J. Nagamatsu et al., Nature 410, 63 (2001)
2001年、日本で永松純氏、秋光純教授(現 岡山大・広島大教授)らにより発見された高い転移温度(40ケルビン)を持つ超伝導体です。
銅酸化物系以外で「BCS理論の壁」を突破した初めての金属系高温超伝導体であり、マルチギャップ超伝導など特異な性質を示すことから基礎研究、応用の両面から国内外で大きな注目を集めています。
数年前にイタリアにおいて超伝導磁石として実用化。
スイスのジュネーヴ郊外にある欧州原子核研究機構(CERN)の加速器に、世界最高の2万アンペア容量の電力を抵抗ゼロで供給するケーブルにも使用されます。
持ち前の作りやすさ、電流の流れやすさ、軽元素から構成される軽量性などを生かし、医療、バイオ、加速器等のハイテク分野への応用が期待されている材料です。
【山本研で行われている研究】
〇MVT法(@特許出願済)によるMgB2バルク磁石の作製と評価
世界初の新合成法MVT(= Magenesium Vapor Transportation)法を提案、実用化を目指し特性向上に向けた研究を行っています。
〇超軽量MgB2線材の試作
MgB2の軽量性を生かした線材(= 電線)の開発に向けた研究を行っております。
〇MgB2バルクを用いた磁束線制御技術の開発
磁気を利用した新しいデバイス応用へ向けた研究を行っています。
Iron-Based SUPERCONDUCTORS (IBSC)
Ba122 crystal structure
M. Rotter et al., Phys. Rev. Let. 101, 107006 (2008)
2008年、東京工業大学の細野秀雄教授、神原陽一博士(現慶應義塾大学准教授)らにより発見された新しい高温超伝導体です。
これまで超伝導と相性が悪いと思われてきた、磁性元素である鉄を含む化合物が50ケルビンを超える高温超伝導を示したことは、これまでの超伝導の常識を打ち破りました。
柔軟な構造、多様な元素選択により、元素戦略に資する電子材料として注目されています。
2015年、テスラクラスの超伝導磁石化に成功。非常に高い臨界磁場(磁石として発生できる最大の磁力)を生かし、新世代の強力磁石等への応用が期待されています。
【山本研で行われている研究】
〇強力磁石応用に向けた高エネルギー混合法122系高温超伝導材料の開発
強い力で粉砕・混合した金属粉末を焼き固めることで、鉄系超伝導多結晶バルク(塊)を作製しています。
高エネルギー混合が超伝導体の特性を変化させるメカニズムを解明し、強力磁石を開発することを目的としています。
MATERIALS INFORMATICS
輸送特性予測シミュレーション
計算科学やデータ科学を超伝導材料科学に融合させる研究を行っています。
シミュレーション、機械学習や画像解析を用いて分析することで、優れた輸送特性を持つ機能材料を設計するための、プロセス指針を得ることを目的としています。
【山本研で行われている研究】
MOLECULAR BEAM EPITAXY
MOLECULAR BEAM EPITAXY
加熱した単結晶基板上に分子線を照射することで、方位の揃ったエピタキシャル薄膜を成長することができます。
多結晶や単結晶で得られない新機能実現と物性評価、デバイス応用を目的としています。
【山本研で行われている研究】