フレキシブル固体蓄電池: Liイオン電池・他の金属イオン電池への挑戦

ポリカーボネート型SPEを用いたLiイオン電池の特性評価


 
 
 
 

 Liイオン二次電池に代表されるエネルギー貯蔵デバイスは、現代の社会には必要不可欠です。近年では、さらなる高エネルギー密度化や長時間動作に対するニーズが高まり、将来の自動車産業への本格的な実用化の流れもあって、基礎研究の確立やブレークスルーに対する期待は極めて大きくなっています。このような社会的背景の中、電解質の「完全固体化」に関する研究が改めて注目されています。高いイオン伝導性を示す無機(ガラス)固体電解質の研究開発はその代表例で、最近ではリチウム空気電池のような次世代電池の研究も本格化しています。この電解質の固体化は、従来の電解液系では達成できないデバイスの安全性(液体の漏洩・揮発、引火・爆発の危険性)の改善や軽量化につながる重要な研究です。一方、固体高分子電解質(SPE)は、固体材料としての安全性に加え、無機系では難のある加工性・柔軟性に富み、さらなるデバイスの軽量化や薄膜化も可能にする新しい電解質材料です。将来的にはフレキシブル蓄電池の実現など、次世代エレクトロニクス産業にも貢献する新材料としての期待が集まります。
 
 富永研では、特異的なイオン伝導挙動を示すポリカーボネート型電解質を用いたコインセルの作製(左図上の例, 正極:LiFePO4, 負極:Li)および電池特性評価(左図下)を行っています [1,2]。P(EO/PO)-LiFSI電解質(5 mol%)およびPEC-LiFSI電解質(188 mol%)の室温における3サイクル目の充放電曲線を左図下に示します。エーテル型のP(EO/PO)電解質(青線)は、40℃付近にEO部の結晶化に基づく部分融解ピークを有することから、室温付近におけるイオン伝導度は10-5 S/cmオーダー程度です。そのため、P(EO/PO)電解質の放電容量は60 mAh/g程度となっています。一方、PEC型電解質の充放電カーブ(赤線)は3.4 V付近にLiの析出/溶解に基づく明瞭なプラトーを示し、120 mAh/g近くの高い放電容量を示すことが分かりました [2]。この放電容量の違いには、それぞれの電解質のLiイオン輸率(t+)が大きく影響していると考えられます。ポリエーテルは、一般的にはt+値は0.1~0.4程度と低く、Liイオンのエーテル鎖による強固な溶媒和によってアニオン伝導に大きく依存します。そのため、電池特性はアニオンの電極近傍での蓄積などによって低下することが考えられます。一方のポリカーボネート型は0.5以上の高いt+を示すことが分かっており、このことが優れた充放電特性に影響を与えていると考察されます。

[関連論文]

    1. Y. Tominaga, Polymer Journal (Focus Review), 49 (3), 291-299 (2017).
    2. K. Kimura, M. Yajima, Y. Tominaga*, Electrochemistry Communications, 66, 46-48 (2016).

ポリカーボネート型SPEを用いたMgイオン電池の特性評価


 

 マグネシウム(Mg)電池は、その豊富な資源とより良い安全性のために、リチウムイオン電池にる新しい蓄電池として期待されている。Mgイオン電池は、その高い容積容量(Liの2205 mAh/cm3に対して33833 mAh/cm3)や比較的高い2.4Vの電位を示す。Mgは天然に豊富で、安全で、毒性がなく、環境に優しい。負極材料として、標準電極電位が低く、Liで問題となるデンドライトの形成を伴わず、100%近い可逆性を有するレドックスを示すことができる。加えて、LiやNaよりも化学的により安定であり、2〜3Vの動作電圧で150〜200Wh/kgの重量エネルギー密度につながる可能性がある。一方で、これまでにMg電池として安定動作する電解質や電極の組み合わせはほとんど報告されておらず、材料の発展が急務である。
 高い効率と高い比容量を有するMg電池を開発するための多くの試みがなされてきたが、実用的な適用は依然として陰極および電解質材料によって制限されている。高分子電解質は、低い引火性、高い可撓性、安全性、良好なイオン伝導性を有するMg電池のとして有望な材料である。これまでに、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、などをベースとするMgイオン伝導性高分子電解質の報告が既になされており、特にMgの酸化還元挙動に関する電気化学的評価の詳細な議論がなされてきた。

 しかしながら、Mg酸化還元反応のための高いサイクリング安定性および高いクーロン効率を達成した研究はわずかである。高分子電解質ではよく知られているポリマーであるPEOは、ポリマー鎖のセグメント運動に強く依存するカップリングメカニズムに基づくPEO中のイオン伝導によるMgイオン伝導性の向上には不十分であることが示されている。イオンとエーテル鎖との相互作用は、分節運動の減少に影響を及ぼす物理的架橋を引き起こす。PEO系電解質は、カチオン-双極子相互作用に強く依存する非晶質領域におけるオキシエチレン鎖の局所運動から生じるPEO中のイオンの移動のために、低い導電性を有する。この相互作用は、OE鎖が双極子を捕捉してカチオンを配位させ、Tgを増加させる安定な錯体を形成するので、イオンの高速移動を阻害する。本研究では、優れたLiイオン伝導性を示すポリエチレンカーボネート(PEC)をMg系電解質の新しいポリマーホストとして使用し、Mg電池用電解質としての物性評価を行ってきた。

[関連論文]

    1. A. Aziz, Y. Tominaga*, Polymer Journal, in press (2018).
    2. A. Aziz, N. Yoshimoto, K. Yamabuki, Y. Tominaga*, Chemistry Letters (OpenAccess), 47 (10), 1258-1261 (2018).
    3. A. Aziz, Y. Tominaga*, Ionics, 24 (11) 3475-3481 (2018).

様々な金属イオン電池への挑戦


 
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