学部生へのメッセージ

土を取り巻く環境を科学する 
私たちの研究室は,地球環境の保全や持続的な食糧生産に不可欠な土壌を対象として研究しています.よく考えてみると,私たちの生活は土壌がなくては成り立ちません.地球上に土壌が存在しなくては食糧が生産できませんし,土壌が汚染されていれば生態系の崩壊が起こり,自然環境中の物質循環も成立しなくなります.私が土壌を研究しているのは,土壌学が農学,環境学,生態学などのすべての自然科学の基礎として位置づけられ,これらの学問の根源的な要素となっているところに魅力を感じているからです.

福島原発事故によって環境中に放出されたセシウムも,最終的には土壌に蓄積します.結局のところ,汚染土壌を何とかしなければ,作物を栽培することもそこで生活することすらできないのです.地味で見過ごされがちですが,ふとした瞬間に,土壌は私たちの生活や地球環境にとって不可欠な存在であることに気づかされると,自然科学分野で土壌を学ぶことの本質を感じます.


各人が研究テーマをもつ
毎年複数の研究プロジェクトを進めていますので,各人がそれぞれ興味のある研究課題を選び,責任をもって取り組むことになります.自ら考える能力を育てることが重要なことと考えていますので,研究は本人の自主性がないと進みません.しかし,意欲的に取り組めばどんどん進みますし,そのような学生には積極的に協力して一緒に研究していきます.

丁寧に指導します
卒業論文や発表のスライドには,目を通して添削や助言をします.社会に出ても恥ずかしくない文章が書けて,効果的で印象深い発表やスライド作成ができるように指導します.初めて行う実験や機器の操作については,手順を説明して一緒に行うようにします.いつでも相談しやすい雰囲気づくりを心掛けています.研究が意欲的に取り組めるよう,その課題の面白さを伝えたり,論文や書籍を紹介するようにしています.

当研究室の多くの学生は,卒論研究で取り組んだ内容の一部を,大学院に進学してから国際学会誌に投稿しています.英語での執筆なので推敲するのが大変ですが,間違いなく文章力が向上するうえに,論文資料や英語で書かれたウエブサイトなどを精査する力につながります.英語論文を執筆することによって,自分の研究成果が世界の多くの研究者によって読まれることの達成感を味わってほしいと思います.



大学院への進学を考えている学生へのメッセージ
研究活動について: 大学院に進学すると,講義よりも研究が主体の生活になります.しかし,研究を行う上で重要となるのは,その研究分野で必要とされる基礎的な科学の知識をもっているかであると思います.

この研究室では,環境化学・地球化学・土壌学を専門とした研究に取り組んでいます.これらの応用学問は,熱力学・溶液化学・分析化学など,化学の基礎が基盤となっているため,大学院進学を考えている人には,研究に特に必要なこれらの基礎科目や英語の基礎力をつけることを意識して,一緒に取り組んでいきます.研究を進めていくうちに,基礎を勉強することの重要性が,間違いなく実感できると思います.大学院修了後に技術士や環境計量士などの資格を取得するうえでも,これらの基礎の勉強は役に立つでしょう.

大学院志望の人には、私の研究内容を知ってほしいと思います.まずは研究業績のページをご覧ください.これまで取り組んでいる研究内容が,研究費の欄に書かれています.現在進行中あるいは過去の研究で興味のあるテーマが見つかったら,遠慮なく連絡してみてください.随時訪問を受けます.論文も出版されていますが,英語がとっつきにくければ,学会発表の日本語の講演要旨やスライドもありますので,お渡しすることができます.

お金について: 当研究室に限らず大学院生の4割程度は,日本学生支援機構から奨学金を貸与して生計を立てています.この奨学金は就職後に返還することが義務付けられています.ただし,在学中に優れた業績(研究論文の掲載)の成果を挙げた場合には,全額あるいは一部の返還が免除されます.これまで当研究室で奨学金を貸与した学生の多くは,返還免除が認められています.奨学金の返還免除の資格を得るためには,在学中に論文を学会誌に投稿して受理されることが必要条件となっていますが,これらの学生は修士課程在学中に論文を執筆して投稿しています.

就職について: これまで当研究室を修了した学生(多くが大学院卒)は,大手ゼネコン,農業関係の会社,経産省の出先機関に就職し,環境・社会基盤整備・農業生産のコンサルティング業務や,肥料開発研究に関わっています.就職先によっては,研究室推薦によって就職が決まっています.