混合プロセスはプロセス産業において,主要な工程の一つである.混合プロセスでは各成分の均一性,ならびにマテリアルバランス調整すなわち濃度制御が単位操作の要の技術をなす.本論文で取り上げる混合プロセスは,粉体状の固形分と液体を連続的に混合させて,一定濃度のスラリーを作るプロセスである.当該プロセスにおいては,固形分比のみならず調整槽液面も同時に制御する必要がある.両者を制御量として固形分と液体の各供給流量を操作端とする当該プロセスは,相互干渉のある動的非線形特性を持つため,特にスタートアップ時などのワイドレンジの運転が必要なときは,調整に時間を要し,自動制御が望まれる.しかし,従来型の制御ループ構成では,ワイドレンジの運転操作における,高速で滑らかな自動制御は困難である.非線形プロセスのワイドレンジな制御には,非線形制御が適しているが,適用においては対象に応じた適切な手法の選択と,実装上の工夫が不可欠である.本論文の制御対象のプロセス特性は,物質収支に基づく高精度の第一原理モデルが作成できることから,フィードバック線形化の手法が好適と判断し,当該手法を用いて2入力2出力の制御設計を行った.また流量計測誤差などの外乱による定常制御偏差を解消するための,積分要素の組込みと制御変数の設定方法の目安を示し,シミュレーションによる性能検証を行った.さらに実用を想定して,DCSへ容易に実装できる形に,コントローラを簡略化する方法を提案した.当該簡略化を行っても,適切な参照軌道時定数を設定すれば,制御性能の劣化を抑えつつ,良好な制御性能が得られることをシミュレーションにより確認した.