研究内容 Research
中田研究室では「宇宙の研究を通じて地球の環境資源を考える」を掲げて、化学をベースとする新しい研究分野を創出することを目指しています。将来、人類が宇宙空間で暮らす時代が訪れるでしょう。宇宙空間に長期間滞在するためには、究極の環境維持および資源活用に関する技術が必要です。それは現在、地球が必要とする環境資源技術のベクトルと一緒です。このような考えから中田研究室では、宇宙に関する環境資源技術の開発を通して、地球での環境資源問題に取り組むことを目指しています。
The Nakata Laboratory is aiming to create a new research field based on chemistry, with the idea of "thinking about the earth's environmental resources through space research."
In the future, an era where humans will live in outer space will come. In order to stay in outer space for a long time, the ultimate technology for environmental preservation and resource utilization is required. It is now with the vector of environmental resource technology that the earth needs. Based on this idea, the Nakata Laboratory aims to tackle environmental resource problems on the earth by developing environmental resource technology related to space.
宇宙空間における環境制御・生命維持システム(Environmental Control and Life Support System, ECLSS)
宇宙には人間が生きていく上で必要な空気や水、食料などが存在しないため、必要な物資を地球から輸送する必要があります。しかし輸送できる物資の量には限りがあり、コストも非常にかかるため、決して物資を贅沢に使えるような環境ではありません。そこで現在、宇宙では環境制御・生命維持システム(Environmental Control and Life Support System, ECLSS)によって、資源をリサイクルし再利用しています。たとえば、国際宇宙ステーションでは、空気や水を再生する装置が稼働しています。しかし、これらの装置は重く場所をとるため、軽くてコンパクト、さらにはより効率のよい装置の開発が求められています。中田研究室ではECLSSに資する環境資源技術の開発を行っています。具体的には、光機能材料を利用した環境負荷の少ない空気浄化技術の開発を進めています。
写真(左):中田研究室で作製した光触媒フィルターを搭載した空気浄化装置は,米国Axiom Space社による初めての民間宇宙飛行士ミッションAxiom Mission 1に搭載され、日本時間4月9日午前0時17分、米国フロリダ州ケネディ宇宙センターより国際宇宙ステーションに向けて、打ち上げられました.
写真(右):国際宇宙ステーション内で実験している様子
宇宙環境における廃棄物を利用した有用物質生成とリサイクル(宇宙リサイクル)
現在、国際宇宙ステーションには様々な細菌がいることが報告されています。現在は問題が少なくとも、宇宙空間には強い放射線が存在しますのでそれによって変異し、人類に悪影響を及ぼすようになる細菌が現れる可能性も視野に入れておかなくてはいけません。また宇宙に滞在する際には、密閉空間の中に滞在することになりますので、一度、悪影響を及ぼす細菌が繁殖すると、閉鎖空間内にいる人間にとっては大きな驚異になることも想定されます。また将来、宇宙飛行士だけではなく一般の人も宇宙に長期間滞在するような時代がきた際には、人類としてこれらの細菌をいつでも制御(すなわち殺菌)できる手段をもっておくことがより望まれます。殺菌剤は、地球から補給することは様々な制約があるため、宇宙において現地で生産でき、かつ様々な細菌を不活化することができる抗菌スペクトルの広い殺菌剤が、宇宙においては望ましいと考えられます。
中田研究室では、光触媒を利用した環境にやさしい方法によって抗菌スペクトルの広い過酸化物を生成し、細菌の中でもアルコール消毒液や100℃の煮沸を行っても死滅しないような最強の耐性をもつと言われる芽胞を不活化させることに成功しています。現在は、この技術をベースに、国際宇宙ステーションで生み出される廃棄物を原料にして抗菌スペクトルの広い殺菌剤の開発を進めています。
糖質バイオマスからの希少糖の生成
糖は食料として生物に必須であるだけでなく、最近では発電用途やバイオエタノール、ポリ乳酸の原料としても期待されており、その需要が格段に高まっています。本研究では、糖質系バイオマスを光触媒によって分解し、ブドウ糖や希少糖などの有用糖を作る研究を行っています。特に希少糖は、抗がんや抗炎症作用など薬効が発見されており、新しい薬として期待されています。最近、当研究室では希少糖のリキソースやエリスロース(25グラムで約200万円)をブドウ糖や乳糖といった安い糖から合成したり、希少なオリゴ糖の合成にも成功しています。また、新しく作った希少糖の生理活性についても研究しています。