中田研究室では、マトリックス単離赤外分光法を用いて励起三重項状態にある有機分子の構造や赤外吸収スペクトルについても調べています。
ここでは一例として、ナフタレンの研究を紹介します。
ナフタレンの励起三重項状態の赤外吸収スペクトルを測定し、密度汎関数法計算で予想されるスペクトルと比較することによって、その構造を調べました。
図1 マトリックス単離されたナフタレンの赤外吸収スペクトル
黒:紫外光照射中から照射前のスペクトルを引き算
青:紫外光照射後から照射前のスペクトルを引き算
緑:密度汎関数法計算によって予測された励起三重項状態のナフタレンのスペクトル
黒で表したスペクトルで上向きに出ているピークは、紫外光照射中に現れているので、励起状態か生成物による吸収。下向きに出ているものは、基底状態のナフタレンのピーク。 青で表したペクトルで上向きに出ているものは、紫外光照射後に現れているので、反応生成物のピーク。
したがって、黒で上向きで、青では現れていないピークが励起状態のピークであることがわかる。密度汎関数法計算で予測された励起三重項状態のナフタレンのスペクトルと比較すると、水色で示した上向きのピークは励起三重項状態のナフタレンの吸収によるピークであることがわかる。
図2 密度汎関数法計算によって予測されたナフタレンの励起三重項状態の構造
* 図1で両方に上向きで出ているピーク(*)は、ナフタレンラジカルカチオンによる吸収。
(工藤)
詳しくは下記の文献を参照してください。
1.M. Nakata, S. Kudoh, M. Takayanagi, T. Ishibashi, C. Kato, J. Phys.
Chem., 104, 11304-11309 (2000).