空

 

 何かで悲しい思いをした時、そのような自分と、頭上に広がる空を、重ねる。それが、美しく澄みきっていれば、「ああ自然は美しいなあそれに比べてこの私は。」などというふうに、考えてしまうし、にごっていれば、そんな自分の心とあまりに似ていることに驚き、そして悲しさが倍増してしまうような気がする。
 空は、海が反射している、と聞いたことがある。幼い頃きいた話なので、誰かに、嘘を教えられた可能性が強いが、広々とした空が、実は、海を反射しているのだ、と信じ込んだ私にとって、自然のその大きさは、神秘であり、偉大なことであった。
 自然は大きい。例を挙げてはきりがないくらいに、大きいものは多い。いつもは意識していないのに、空を見ると、いつもそれを思う。一番身近な巨大な自然が、空だからだろう。空はなくならない。死ぬまで眺めることが出来る。これから生きてゆくうちに、私は何回上を見るのだろう。どんな空が、広がっているのだろうか。


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