バイオエレクトロニクス of Matsunaga, Tanaka, Yoshino Lab.

Electrochemical disinfection



微生物の付着防止
現在、工場や発電所において海水が冷却水として利用されています。しかし、海水を取り込んだ冷却管内でフジツボ類などが付着・増殖することにより、冷却効率の低下や、乱流が発生し冷却管の摩耗が起きることが問題となっています。

フジツボ類の付着・増殖は、冷却管表面に微生物が吸着され微生物フィルムを形成することによって引き起こされます。すなわち、冷却管内の微生物を殺菌処理することによりフジツボ類の付着・増殖を防ぐことができます。

よく用いられる殺菌方法としては、塩素などの化学物質を冷却管内に加える化学的殺菌法があります。この方法では、毒性を有した化学物質が海洋に放出されるため、環境への毒性物質の蓄積が問題となります。その他の方法として、海水に電位をかけることで殺菌を行う電気化学的殺菌法があります。この方法においても、海水の電気分解により塩素を発生させることで殺菌を行っているため、化学的殺菌法と同様に環境負荷が大きく、高コストであることが問題となります。

そこで当研究室では、従来の電気化学的殺菌法と比較して低い電位をかけることで殺菌を行う、新たな電気化学的殺菌法を開発しました。
本方法は、冷却管に対し発生させた比較的低い電位により、冷却管表面に接触した微生物を直接的に殺菌するため、海水の電気分解に伴う塩素の発生もなく、より低いコストでの殺菌が可能となりました。

この環境負荷の少ない直接的な電気化学的殺菌を行うことで、管内のフジツボ類の付着・増殖が阻害されることが確認されました。これらの技術は、魚網や船底、海洋構造物などの防汚や、飲料水殺菌などでの実効性も示されています。


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水質管理
安全な水を供給する上で、ダムや浄水場などにおいて、水道原水への毒物の混入を連続的に検知することは重要な課題です。

しかし、人体や環境に影響を及ぼす毒物は多種多様であり、これらを個別に検査することは非常に困難です。そこで近年、生物に対する毒性を総合的に評価可能であることから、微生物の生理活性に基づいた毒性評価方法であるバイオセンサ技術が注目されています。

しかし、従来のバイオセンサでは他の微生物の繁殖による劣化、サンプル水中の有機物濃度の変動によって計測値が不安定となるなどの問題がありました。

そこで当研究室では鉄酸化細菌を用いたバイオセンサ型水質監視装置を開発しました。
本装置は、鉄酸化細菌の呼吸活性を酸素電極により検出することで毒性評価を行います。鉄酸化細菌は、酸性環境で生息するため他の微生物の繁殖が起こりにくく、また、鉄イオン濃度だけに依存する独立栄養細菌であるため、その呼吸活性は試料水中の有機物濃度に依存しません。

これにより、本装置は従来のバイオセンサと比べ長期にわたり安定した毒性評価が可能となりました。

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Eletrochemical biosensors




現在、溶液の混合、反応、分離、精製、検出などの様々な化学操作を手のひらサイズのチップ上に集積化するシステム(Lab-on-a-Chip)の開発がさかんに行われています。

これにより、操作に要するスペース、エネルギー、及び時間を大幅に節約することが可能となります。このシステムは特に、診療現場または患者の自宅において行う簡易的な臨床検査ツールとしての応用が期待されています。

当研究室では、この技術を利用して糖尿病検査に応用可能な免疫センサチップの開発を行いました。

開発した免疫センサチップは、糖尿病マーカーである糖化ヘモグロビン(HbA1c)とヘモグロビン(Hb)を測定し、全ヘモグロビンに対する糖化ヘモグロビンの存在比を求めることで血糖状態を診断することができます。

チップ内には分離部の陽イオン交換カラムと検出部の電極があり、全ヘモグロビンに対する抗体に結合したHbA1c及びHbを陽イオン交換カラムにより分離し、抗体に標識されたフェロセン由来の電流を検出することでHbA1cとHbの量をそれぞれ測定します。

本チップを用いることで、HbA1cとHbの分離と検出を連続的に行うことが可能になりました。これにより、従来の方法と比べ迅速かつ簡便に糖尿病検査が可能となると考えられます。


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