東京農工大学

受験生の皆様

活躍する卒業生

⾃律的に考え、⾼精度に動作する次世代ロボットをつくりたい 株式会社安川電機 技術開発本部 アグリメカトロニクス開発部 瀬⼾ 匠さん 東京農⼯⼤学 ⼤学院⽣物システム応⽤科学府 ⽣物機能システム科学専攻 博⼠前期課程修了

現在のお仕事

勤務先の安川電機は、産業⽤ロボットのメーカーとして、ものづくり業界ではよく知られている会社です。「電動機(モータ)とその応⽤」を事業領域として主に、世界トップシェアの①サーボモータ②インバータ③産業⽤ロボットを展開しています。現在、私は新規シリーズの産業⽤ロボットの製品開発に携わり、その中でもロボットの⾼精度化や⼩型化を実現するための駆動⽤サーボモータの機械設計をするのが仕事です。

機械設計といっても⼀般的にイメージされる図⾯を描く作業だけでなく、安川電機での業務は多岐にわたり、主に「設計業務」と「製品主幹業務」を担当しています。まず、「設計業務」として、新規構造や構成部品(軸受やブレーキ)の性能を解析や実測で検証する「要素技術評価」。その上で、QCD(品質、コスト、製品出荷までの期間)を基に詳細な設計をして、図⾯に起こす「詳細設計」。最後に実機で評価する「設計検証」まで幅広く担当します。さらに、「製品主幹業務」として、社内の調達、⽣産技術、営業といった各部⾨を取りまとめ、製品をリリースまで導く役割も担います。企画から設計、製造、販売まで⼀貫して携われるのが、この仕事の魅⼒のひとつです。

今までに⾃分が設計に携わったロボットやモータが社内外で受賞されたり、会社の利益貢献につながったりするのはうれしいですね。現在、社内の多くの⼈が関わって開発プロジェクトを進めており、特定の機種や技術の開発においては、リーダーを任されています。やはり機械設計は、⾃分が考えた製品がモノとして形になる達成感が、やりがいだと感じますね。

農工大での研究活動

私は⼩学校の頃からロボットづくりに興味があり、当時から多くの「ロボットコンテスト(ロボコン)」に出場しました。⾼校から機械科を選び、ここでも仲間と共にロボコンで全国⼤会出場。⼤学でもロボット開発をやりたいと考え、「NHK 学⽣ロボコン」の強豪だった東京農⼯⼤学の⼯学部に進学しました。

⼤学、⼤学院時代は、メカトロニクス系の研究室で、「嗅覚」をテーマにしたロボット研究に取り組んでいました。私の研究テーマは「ガス源を探索するロボット開発」。ガス漏れが発⽣した災害現場などでの活躍を想定したロボットです。四輪の⾞輌にレーザスキャナとサーモグラフィカメラを搭載し、室内全体の形状や壁⾯の温度分布を測定。取得したデータから室内の気流を推定し、ガス源を探り当てるモデルを考えました。研究ではロボットの構造と電⼦回路を設計、実機製作し、「C++」というプログラミング⾔語を使って、ガス源探索⽤ロボットの画像処理や動作アルゴリズムの作成も担当しました。チームメンバーと協⼒しながら学会発表などの成果を残しました。

さらにサークル活動では、「ロボット研究会 R.U.R(ロボ研)」に所属し、機械設計を担当。毎年、「NHK 学⽣ロボコン」全国⼤会などに出場しながら機械設計とプログラム制御のスキルを鍛えました。ほかにもアルバイトでロボット教室の講師をやっていて、⼩中学⽣の教え⼦と⼀緒に「Robo Cup Jr.」というロボコンで⽇本代表として世界⼤会に出場する貴重な経験もでき、今ではロボコンの審査員も務めています。

⼤学時代に⾝につけた機械設計の知識とスキルは、すべて今の仕事で役⽴っています。ただ、それ以上に財産になっているのは、問題が起こったときにロボ研や研究室で鍛えられた対応力です。失敗したり、想定外の事態が起こったりしても「どうしよう……」とフリーズせずに、臨機応変にメンバーと協⼒して、⽬的をやり遂げるという社会⼈として不可⽋の思考がここで⾝についた気がしています。

将来の目標・夢

将来の⽬標は、モータなどの基幹技術に精通した技術者として、幅広い分野で⼈を⽀援する新規製品開発を⼀任されるような存在になることです。介護・医療⽤、農業⽤など今までにない応⽤領域でのロボット開発にも挑戦したいですね。まずは現在、取り組んでいる産業市場において、ユーザーがゴール座標を設定するだけで、ロボット⾃⾝が最適な軌跡を⾃律的に考え⾏動できる、⾼機能で⾼精度な次世代ロボット開発に励みたいです。

※掲載内容は、2024年1月取材時のものです。