東京農工大学

受験生の皆様

活躍する卒業生

人工光合成のシステムを構築し持続可能な社会を実現する 三菱ケミカル株式会社 Science & Innovation Center Inorganic Materials Laboratory グループマネージャー 堤内 出さん 東京農工大学 大学院工学研究科 応用化学専攻 博士後期課程修了

現在のお仕事

三菱ケミカル株式会社で基礎研究を担うScience & Innovation Centerで主に無機材料の開発に携わっています。常に多くの研究プロジェクトが同時進行しており、私はグループマネージャーとして、全体を統括する立場にあります。

なかでも最も長く携わっているのは、「人工光合成」の研究。これは、NEDOの支援を受けた「二酸化炭素原料化基幹化学品製造プロセス技術開発」という共同プロジェクトで、他の化学メーカーや大学と一緒に2012年から研究に取り組んでいます。

このプロジェクトの目標は、光触媒を用いて、太陽光で水を水素と酸素に分解し、取り出した水素とCO2(二酸化炭素)を反応させて、エチレンやプロピレンといったプラスチック製品の原料を合成するシステムを構築すること。私は化学メーカーの研究員として、光触媒となる無機化合物の開発、水素とCO2を反応させる合成触媒の開発など、さまざまなプロセスに携わっています。石油資源の枯渇や環境汚染は地球レベルの問題です。こうした社会課題を企業の立場から解決する世界最先端の研究現場に立ち会えるのは、研究者として大きな喜びです。

農工大での研究活動

化学に興味を持ったのは、おそらく中学生の頃です。そこで私は、工業高等専門学校に進学し、化学の知識を深め、東京農工大学工学部応用化学科(当時)に編入しました。学部4年次から所属したのは、分子触媒化学研究室。金属と炭素が直接結合した化合物である有機金属化合物を用いて、触媒上で金属と有機分子がどのような相互作用をするか調べていました。

材料は有機から無機に変わりましたが、触媒を用いた化学反応を観察する点で現在の仕事と強いつながりがあります。それ以上に、東京農工大学では、研究者としての基礎体力みたいなものを鍛えられた気がします。仮説を立て検証を繰り返すサイクルをぐるぐる回しながら、常にクリティカルに考えながら物事を見る視点が身についたと思います。

将来の目標・夢

将来の夢はもちろん人工光合成の技術を社会実装することです。CO2削減を実現できるだけでなく、水素エネルギーの開発にも貢献できるでしょう。研究者として、持続可能な社会の実現に貢献したいと思っています。

※NEDO=国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構

※掲載内容は、2020年11月取材時のものです。