生越 恵(OHSE Megumi)
研究紹介
卒業論文:「外観の異なる外樹皮の形成過程と傷害周皮の人為的誘導」樹皮は樹木外周の保護層であり、形成層より外側の外樹皮と内樹皮の総称です。内樹皮は樹木の成長に関わる役割を、外樹皮は樹体内部を外界から保護する役割をそれぞれ担っています。この外樹皮は木本植物に特有の組織であり、樹木が肥大成長と伸長成長を行い長年にわたって生存するためには必要不可欠です。
外樹皮は樹種によって外観が大きく異なり、その樹種を形態的に特徴付けるとともに、外部から受ける刺激に対する耐性や応答にも影響を与えると考えられます。外樹皮は、内樹皮の一部から起こる周皮の形成によって形成されます。この周皮の形成に始まる外樹皮の形成過程は、樹皮の外観に関与する細胞の形成や、二次代謝物質の生成・沈着を決定するため、外樹皮の外観の決定において重要な要素であると考えられます。
また、樹皮は外傷によって内樹皮が露出した場合にも、傷害周皮と呼ばれる組織を形成して傷を塞ぐ防御機構を持っています。
このように、樹皮は樹木の保護に関して重要な役割を果たしており、樹木の利用や識別においても大きな意味を持っていますが、木材として利用される木部と比べると利用価値が低く、その研究報告は少ないのが現状です。したがって、様々な樹種について外樹皮の形成過程や構造に関する知見を得ることは、樹木の生理的特徴を理解する上で重要であると考えられます。
本研究では、外樹皮の形成機構を理解するため、スギ、カツラ、コナラ、イヌブナ、サルスベリにおける外樹皮の形成過程の経時変化と傷害周皮の形成を顕微鏡を用いて観察しました。