宮田 晴香(MIYATA Haruka)
研究紹介
卒業論文:「オニグルミの心材形成に伴う木部柔細胞の細胞内容物の放射方向における変化」樹木は、巨大な植物体の大部分が樹幹であり、そのほとんどが二次木部から構成されています。巨大な植物体を支える樹幹は、その機械的機能を十分発揮して、植物体そのものの自重を支えるのみならず、長年にわたって風や雪に対抗しなくてはなりません。ほとんどが死細胞で構成されている樹幹の耐久性を増加させ、樹木の巨大性と永年性を保証するための仕組みのひとつが、心材の形成です。
心材の形成に伴い放射柔細胞中では心材特有の成分である心材成分の生合成と蓄積、核の凝縮および消失、デンプン粒の消失、液胞の拡大などの変化が起きます。これら細胞中の変化は単独で起きる現象ではなく、他の現象と相互関係の中で成り立ちます。したがって、心材形成機構を理解するためには、心材形成時に起こる物質の生成や消失のタイミングの違いなど、様々な現象の相互関係に着目することが重要となります。
また心材成分は心材色の原因物質ともなり、スギのように心材色が淡赤色から黒褐色にいたるまで、品種間や個体間で変動が大きい樹種もあります。スギでは、その原因に関して科学的な視点から調べた多くの報告があり、ある程度解明が進んでいます。スギと同様にオニグルミも心材色に変動がある樹種であり、これまでの研究でクルミ属における心材成分の同定およびその局在については知見が蓄積されています。しかしながら、心材成分の局在と細胞内容物の変化を関連付けた研究は十分ではありません。
本研究では、オニグルミの貯蔵物質の消費と心材成分の蓄積の関連を明らかにするため、放射方向における細胞内容物の変化を観察しました。