研究概要
糖やタンパク質のような生体高分子と、他の生体高分子や細胞との関係を解明することは、
農学や食品の研究につながる、社会的な要請の高い課題です。当研究室では、糖・タンパク質・
細胞の構造的・機能的なかかわりの解明および関連した研究を主眼とし、
「糖に作用する酵素の解析とその応用」(主として殿塚)と「食品の形態・味と生体の相関解析とその応用」
(主として小薗)という、大きく分けて二つのプロジェクトを行っています。
殿塚隆史(教授)
糖は、澱粉やショ糖のような食品に含まれているものから、セルロースのような生物の
構造を支えているものまで、多様なものが存在します。糖を酵素によって別の糖に変換する
ことで、その利用範囲が広がります。「糖に作用する酵素の解析とその応用」では、食品
からバイオマスまで、食品産業や環境分野に関連する、糖質に作用する酵素の探索を行います。
さらに、立体構造を明らかにし、遺伝子工学・酵素化学の手法を用いて、これらの酵素は
どのようにして特徴的な機能を発揮できるのか解明します。この成果をもとに酵素の機能改良
などを行うことにより、有用な酵素の取得を目指します。
殿塚自己紹介のページもご覧ください。
主な研究テーマ
・食品製造用酵素の構造と性質の解析および機能の改良
・糖に作用する新規有用酵素の取得と酵素を用いた糖の創出
・バイオマス分解酵素の構造と性質の解析および新規酵素の探索

機能性オリゴ糖を生成する酵素です。当研究室で立体構造を解明しました。
このような食品製造酵素などを対象に研究を行っています。
小薗拓馬(助教(テニュアトラック))
食事は、栄養をもたらすという側面に加え、「おいしい」や「楽しい」といった精神的満足をももたらし、
人々の健康・幸福にとって重要な行動です。味覚は舌の味蕾により感知されます。
食品の成分や形態を知り、それが味蕾や舌によりどのように感知されるかを知ることは、
食品の味や食感を理解する上で重要です。「食品の形態・味と生体の相関解析とその応用」では、
食品自体や成分の形態を電子顕微鏡等により可視化するための技術開発と解析に取り組みます。
また食品成分が味蕾といった生体側のシステムによってどのように感知されるのかについて、
食品成分と味覚受容体の相互作用、そして細胞内シグナル伝達について、
形態と生理機能の関連性から理解を進めます。これらの知見を元に、食品の味機能や
食感の改変等に繋げることを目指します。
主な研究テーマ
・食品や生体組織を対象とした電子顕微鏡による観察手法の開発と形態解析
・食品成分と味覚の相互作用に関する研究
・細胞内Ca2+シグナルの“多用途性”に関する研究

電子顕微鏡で可視化した
米粒(上図、SEM像)と味蕾(下図黄色枠、TEM像)の写真
電顕観察では、普段は目にできない、
ミクロ・ナノの世界を覗くことで新たな発見が多くあります。