東京農工大学大学院工学研究院生命機能科学部門 小関・山田・辻本研究室

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青い花。どうして青い?

アントシアニンの液胞内修飾系

植物の花には多種多様の色があります。植物の花の色素は主に
・アントシアニン(ピンク色、赤色、紫色、青色)
・ベタレイン(黄色、赤色)
・カロチノイド(黄色、橙色、赤色)
・クロロフィル(緑色)
という化合物です。その中でも多くの花の色はアントシアニンという化合物によって発色しています。アントシアニンはその基本構造(アグリコン)が 6 種類しかないのに、そのアグリコンに様々な糖や有機酸が結合することによって、多種多様な化合物となり、これが多彩な色彩を産み出しています。

カーネーションには上図のような構造をしたアントシアニンが含まれています。このアントシアニンの合成はその基本骨格のアグリコンの合成が以下のような酵素によって行なわれています(英語の略号 1 つが 1 つの酵素によるものです。詳細については専門書をご覧下さい)。

カーネーションの黄色の花、白い花は実は、このアントシアニン合成系の遺伝子が壊れていて、その途中で合成が止まると黄色や白色の花となることを私たちは明らかにしました。

しかし、最終的に糖や有機酸がどのようにして結合するのか、どのような酵素がその反応を行なっているのかはわかりませんでしが。私どもの研究室では、世界で初めてそのリンゴ酸転移酵素と 5 位の糖を結合させる酵素の活性を検出すること、そして遺伝子を解明し、その酵素反応が植物細胞の「ゴミ捨て場」と言われていた液胞内で起きていることを見つけました。

さらに青い花の代表であるデルフィニウムのアントシアニンについて注目しました。多くの青色の花は、そのアグリコンの 7 位に糖が結合していることが広く知られていましたが、その酵素については全く不明でした。私たちの研究室において、カーネーションと同様に、デルフィニウムにおいてもその 7 位の糖は植物細胞の「ゴミ捨て場」と言われていた液胞内で起きていることを見つけました。この酵素はデルフィニウムだけでなく、青い花を咲かせる単子葉植物のアガパンサスにおいても働いていることを明らかにし、この青い花を咲かせるのに必須とも言える酵素とその遺伝子を世界で初めて得ることに成功しました。この遺伝子を青い花色のない植物種に遺伝子導入すれば、クリアな青色の花を咲かせることが期待できます。


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