東京農工大学
岡野研究室
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学振動子の集団ダイナミクス

Belousov-Zhabotinsky反応

 Belousov-Zhabotinsky(BZ)反応は,周期的な変化や複雑なパターンが生じる化学反応です.反応中は様々な化学種の濃度が周期的に変化することから,振動反応の一つとして知られています.BZ反応液を撹拌しながら放置しておくと,溶液の色が周期的に変化する様子が観察できます.また,反応液をシャーレなどに薄く広げて静置しておくと,化学反応波が広がる様子を観察できます.このようなBZ反応の時間的・空間的な構造は散逸構造と呼ばれ,心臓の拍動や動物の皮膚の模様など生体系で広く見ることができます.そのため,BZ反応は化学だけでなく生物学・物理学・数学などの分野でも研究が進められています.

BZ振動子

 離散的なBZ反応場を構築するため,フォトリソグラフィー技術を応用してリアクターを作製しました.ポリジメチルシロキサン(PDMS)で作られたこのリアクターには,マイクロサイズのリアクターユニットが格子状に配置されています.この中に,BZ反応の触媒であるルテニウム錯体を固定したシリカゲルを調製し,BZ振動子を作製しました.触媒を除いたBZ反応液にこのリアクターを浸すことで振動子(シリカゲル)にBZ反応を局在させることができます.また,この系では物質拡散によって振動子間の結合が生じます.下の動画では,結合が弱いため各振動子は独立した振動子として振る舞っています.

集団化によって促進されるコヒーレンス共鳴現象

 近年,非線形系にノイズを加えることで誘起される現象が注目を集めています.その一つに,確率共鳴現象があります.これは,検出感度以下の微弱な信号に適度な強度のノイズを加える事で,その信号の検出が可能になるという現象です.また,信号がない場合でも,適切な強度のノイズを系に加えるだけで規則的な応答を誘起することができる場合があります.これはコヒーレンス共鳴(coherence resonance; CR)と呼ばれる現象で,様々な系で起こることが実験的に確認されています.

 我々はBZ振動子の集団においてコヒーレンス共鳴の実験を行い,集団の大きさ(振動子の数)を大きくすることでコヒーレンス共鳴現象がより促進されることを示しました.この現象は,集団化によってコヒーレンス共鳴現象が促進されたことから,array-enhanced coherence resonance(AECR)と呼ばれています.ここで得られた結果は,ノイズと振動子の結合の間で起こる相互作用がコヒーレンス共鳴現象にとって重要だということを表しています.一方,振動子の数が100以上の系では,集団化による促進効果は徐々に飽和する傾向が観察されました.

光フィードバックによる結合制御

 自励振動を示す要素を結合すると,それらの協働的な作用によって規則的な振る舞いが現れることがあります.その代表的なものに同期現象やクラスタリングがあり,これらは物理学・化学・生物学などの分野で広く観察されます.これらの現象の発現には,振動子間の結合様式が重要な役割を果たします.振動子を任意の結合様式で結合するには,各振動子の反応情報に基いて系をフィードバック制御する方法が有効です.

 結合様式の違いが系のダイナミクスに与える影響を調べるため,我々はBZ振動子の集団にフィードバック制御を導入しました.フィードバック制御は,振動子の反応をコンピュータでモニターし,その情報を基にフィードバック光を系に照射する方法で行いました.

 まず初めに,遅延フィードバックを用いて大域的に結合した振動子集団のダイナミクスに与える影響を調べました.その結果,フィードバックの遅れ時間を適切に設定すると位相同期を誘起できることが分かりました.この実験から,フィードバックの遅れ時間とゲインを変えることで,振動子集団の時空間ダイナミクスを効果的に制御できることが示されました.

 更に,振動子間の結合強度が時間的に変化するようにデザインしたフィードバック制御を用いて,どのようなダイナミクスが現れるかを調べました.振動子間の結合強度は,振動子の位相に基いて時々刻々変化するようになっています.この系で実験を行ったところ,フィードバックのパラメータに依存して系内に二つ,または三つのクラスタが作られることが分かりました.遅延フィードバックの実験では系全体の同期現象は観察されていましたが,クラスタの形成は起こっていませんでした.このことから,結合強度が時間的に変化することがクラスタの形成に重要だということが分かりました.


化学振動子の
集団ダイナミクス

脂質二重膜小胞の
形態変化

DNA 1分子からの
タンパク質合成計測

タンパク質合成量の
反応場体積依存性

液滴+マイクロ流路
(論文準備中)

衝撃検出センサ
(Ring!Ring!Project)
研究テーマ
化学振動子の集団ダイナミクス
脂質二重膜小胞の形態変化
DNA 1分子からのタンパク質合成計測
タンパク質合成量の反応場体積依存性
液滴+マイクロ流路
(論文準備中)
衝撃検出センサ
(Ring!Ring!Project)