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平成元年(1989年)のこと

 新しい元号も始まり、「平成とはどんな時代だったか」的な考察も一段落している。改元を期に社会の流れが変わる必然はないが、思いを新たにみんなが「よ~いドン!」的なメンタルになるのは悪いことではないと思っています。

 平成元年は1月8日の日曜日に始まった。週末だったが商業施設は軒並、その看板の照明を落とし、街には半旗が掲げられた(大相撲も一日遅れでスタートし、弔意を示した)。いろんなことが起こった年だったと記憶している。個人的に印象的な出来事は下記の通りである。
・リクルートの創業者・元会長の江副浩正氏が逮捕(2月13日)
・消費税(3%)が導入(4月1日)(生協の支払いも1円単位まで細かくなって、お互いに慣れていないのでレジ前に随分と列ができたような)
・松下幸之助氏(松下電器産業創業者)死去(4月27日)
・礼宮文仁親王殿下が川嶋紀子さまとの婚約(8月26日)
・巨人が近鉄相手に3連敗から4連勝で日本一(10月29日)(「巨人軍について」で書いたように、最高のシリーズとなった)
・ベルリンの壁崩壊(11月10日)(衝撃的な映像が、毎日のように流れ、さすがに時代が変わっていく感で満ちていた)
・ チェコスロバキアでビロード革命(11月24日)。
・マルタ会談(ブッシュ米国大統領とゴルバチョフソ連最高会議幹部会議長兼ソ連共産党書記長がマルタ島で会談し、冷戦の終結を宣言(12月3日)。
・ルーマニアのチャウシェスク政権崩壊(12月22日)(この映像もショッキングだった)
・日経平均株価が史上最高値の38,915円87銭(12月29日)(1990年の大発会から株価は下落へ転じ、バブル景気は崩壊へと向かった。あまり関係なかったけど・・)。

 番外編として・・・。「濡れ落葉」(評論家・樋口恵子氏が、紹介したことで広まり、「濡れ落葉」として1989年の流行語大賞新語部門・表現賞を受賞)
(主に定年退職後の趣味もない旦那さんが、奥さんが出かけようとすると必ず「ワシも(付いて行く)」と言って、どこにでも付いきて、「払っても払ってもなかなか離れない」様子から転じて・・・。「粗大ゴミ」と同意であり、ひどい言葉ですね。今年の東大の入学式で祝辞を述べた上野千鶴子先生も「産業廃棄物」とか言っていましたね。当時は、人生の分水嶺(村上春樹さんの「プールサイド」(回転木馬のデットヒート)という短編によると35歳)の向こう側にいたので、特になんとも思わなかったが、今、こちら側で目にするとなかなかキツイ言葉ですなー。この言葉を自虐的に使う先輩方も結構いるようですが・・)

 そして自分にとって初めての原著論文を世に送り出した年である。以前の雑文で論文は英語で書け、といいつつ日本語で書いた論文だが・・・。その1944年に創刊された高分子論文集も本年7月をもって休刊となります。時代の流れですね。1月号に、関さん、多根さんのデータで論文を出せてよかったです。当然、佐藤寿弥先生には、なにからなにまでお世話になった。

 内容は、水溶性のモノマーから逆懸濁重合で高速液体クロマトグラフィー用の充填材用の5-10 μm程度の微粒子を作るというものである。Water in Oil型のエマルジョンを利用しての逆懸濁重合については、吸水性高分子(アクリル酸ナトリウムをベースにしたもの)の合成等で確立されていたが、5-10 μmというサイズのものが既往の方法ではどうしてもできなかった(例えば、ヘプタンのような溶媒を連続相に用いる)。結局、キシレンとクロロベンゼンの混合物が連続相としては、優れていることがわかった(分散剤には粘土状のものを用いたが、その混ぜ方にノウハウがあり、いつも煉っていました)。分散相の溶媒にはDMFと水の混合溶媒を用いたが、それらの比率を変えたり、不活性なポリエチレングリコールを少量添加することで、ゲル粒子の細孔径を制御できることを示した。水系のゲル浸透クロマトグラフィーばかりではなく、極めて高極性な順相系HPLCの充填材としても使えるものになった(ちょっとマニアックだが、佐藤先生が先鞭をつけられた溶媒グラジエント法による高分子の分別(共重合体の組成やポリブタジエンの異性構造による)にも利用できた。

   


   

  
 
 というわけで大変、思い入れがある論文が出たということで、今思い出しても感慨深いものがある。

 高分子微粒子に関する研究は、ある意味自分のルーツであり、定年まで続ける予定である・・・。

 そんなこんなで始まった平成だが、個人的には25歳で始まり55歳で終わった「時代」を駆け抜けた感があり、人生の第四コーナーを回ったところの自分らに代わって、最近社会に出たばかり、または数年のうちに社会に出ていく若い人たちが中心になって、創っていく時代が始まるのだな、ということは改元にあたって強く感じます。



おまけ(17、8歳の第一コーナー前を走っていた時代に取り組んだ、いわゆる初等幾何を使う問題です。当時、やり方さえも見当もつかなかったと記憶しております・・・)。

問. 鋭角三角形ABCの内部に一点Pを取り、PA+PB+PCを最小にするには、Pをどこにとればいいか?

   

解答例
下の図のようにBC、PCを一辺とする正三角形BCD、PCEを考える。
△PBCと△EDCにおいて∠PCB=60°-∠BCE=∠ECD

∴△PBC≡△EDC

したがってPB=EDなので、PA+PB+PC=PA+ED+PE≧AD
ADの長さはPの位置によらず、一定であるのでPA+PB+PCの最小値はADである。
PはAD上にあり∠APC=120°である。また、∠BPC=∠DEC=120°であるから、∠CPAも120°となる。したがって∠APB=∠BPC=∠CPA=120°となるような点をPとすればよい。

  

(2019.5.6)