航空機の一次構造へのCFRPの適用が拡大しており、ボーイング787やエアバスA350などの最新型の航空機では、構造重量の50%にCFRPが適用されています。一般的な航空機に適用されているCFRPのマトリクス樹脂は、エポキシ樹脂です。エポキシ樹脂は優れた力学特性、耐久性、製造性を有していますが、耐熱温度は最大でも120℃程度です。そのため、高温部分には適用することができません。
耐熱温度が200℃を超えるような耐熱CFRPが実現すれば、航空機エンジンや、超音速旅客機の機体、更にはスペースプレーンや再使用型宇宙機への適用が期待されます。また、高温が要求される宇宙探査ミッションでも有用です。
これまでに開発されているCFRP用耐熱樹脂の耐熱性と力学特性のおおまかな関係を以下に示します。200℃を超える温度域では、ポリイミド樹脂(NASAのPMR15やPETI-5)が有望なのですが、耐熱性を向上させると、一般に樹脂は脆くなる傾向があります。これに対して、JAXAでは耐熱性と力学特性を両立したポリイミド樹脂TriA-X(トリエー)の開発に成功しました。研究室では、JAXAと共同で、TriA-X樹脂を適用したCFRPの材料開発、成形技術の開発、高温での力学特性評価、更には変形・寿命予測のための力学モデル構築に関する研究を進めています。