航空機の機体へのCFRPの適用拡大が進んでおり、最新の民間航空機であるボーイング787やエアバスA350では、主翼、胴体、尾翼など機体重量の50%がCFRP構造となっています。CFRPはアルミ合金(ジュラルミン)と比較して、比剛性・比強度に優れるため、機体重量の低減に寄与します。また、耐食性や耐疲労特性にも優れるため、航空機のメンテナンスコスト低減にも有利です。
ところで、航空機は飛行中にしばしば避雷します。アルミ合金は導電性が高いため避雷による影響はそれほど大きくありませんが、CFRPでは雷撃によって損傷が引き起こされることがわかっています。実際の航空機では雷撃損傷抑制のためにLSP(Lightning Strike Protection)が適用されているため安全上の問題はありませんが、CFRPの雷撃損傷を軽減することは航空機の運用コストを低減する上で重要です。そのためには、CFRPの雷撃損傷メカニズムを解明することが必須となります。
研究室では、JAXA連携大学院(平野義鎮研究室)、JAXA航空イノベーションハブと共同で、CFRPの雷撃損傷メカニズム解明のための基礎研究を進めています。また、JAXA航空イノベーションハブの共同研究として、導電性性樹脂を適用することによってCFRPの雷撃損傷を抑制するための基礎研究も行っています(JAXA-東大-山形大-名大の共同研究)
雷撃損傷メカニズムの解明を目的として、(1)インパルス電流による模擬雷撃試験(アークエントリー試験)、(2) インパルス電流によるCFRP直接通電試験(コンダクション試験)などを実施しています。模擬雷撃試験は、主に名古屋大学ナショナルコンポジットセンターの設備を利用しています。
雷撃現象は、雷撃電流によるジュール発熱、電磁気力、プラズマの発生による衝撃波、繊維の酸化や昇華、樹脂の熱分解による層間はく離、熱分解ガスによる層間圧力などが重畳した複雑な現象です。前述したような実験によって個々の現象を明らかにするとともに、電気、熱、力学的な現象を統合したマルチフィジックスによる損傷シミュレーションの確立にも取り組んでいます。