2. ミミコンのススメ

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2.1 ミミズコンポストとは?

簡単な紹介

生ゴミなどの有機物を、ミミズと微生物の力を借りて、分解し、黒く、栄養価の高い堆肥(compost)に変える処理方法、またはその堆肥のことをミミズコンポストと呼びます。 これは、ミミズが生ゴミを食べて、細かくし、表面積を増やすことで、微生物の分解を早める生ゴミ処理方法です。微生物が活動することで初めて、生ゴミをミミズが食べられるようになり、さらに生ゴミを最終的に分解している主体は、微生物であることに注意が必要です。

比較的簡単に行うことができるため、ヨーロッパやオーストラリア では各地で普及が進んでいます。キャノワームという会社が家庭用のミミズコンポスト容器を販売しており、かなり有名ですので、興味があればコチラから
日本の会社であれば「金子みみずちゃんの家」を販売している光和商事さんも有名です。(コチラから

また、コンポストをつくる容器のことは、コンポスターと呼ぶのが一般的ですが、私達のようにコンポストと呼ぶ場合もあります。

左)金子みみずちゃんの家 右)キャノワーム 参照:各公式HPより

なぜ、ミミズを使うのか

<糞の効果>

ミミズは、生ゴミ、枯葉、土などの有機物を消化する際に、必須元素であるリン酸やカリウムを植物が吸収しやすいに変え、カルシウムを再び結晶化し、さらにビタミン類も合成します。従って、ミミズの糞には、作物の成長に関わる栄養素が多く含まれています。特に、カルシウムに関して、ミミズは石灰線という器官から炭酸カルシウム(アルカリ性)を分泌しているので、酸性に傾いた土壌を弱酸性にして土壌のpHを矯正できるのも強みです。 また、ミミズが有機物と一緒に飲み込んだ様々な微生物達のうち、ミミズの体内で消化されなかったものはそのまま糞と一緒に出てくるので、ミミズの糞には土壌微生物が多く含まれているのも特徴です。 さらに、ミミズの糞には多様なアミノ酸、酵素、植物成長促進物質が含まれているのではないかと考えられています。

参照:横山和成「図解でよくわかる土壌微生物のきほん」p111

<高い繫殖力>

ミミズは雌雄同体でありながら、基本的に他の個体と交接し、各々が子供を産みます。 繁殖方法がとても面白いので、下のスライドで詳しく説明します。(読み飛ばしてもOKです)

ミミズが科によって生殖方法が違うという不備が発覚したため、現在改訂中です。(2020.11.8)
代表的なコンポストミミズであるシマミミズは、フトミミズ科のものと異なり、環帯よりも頭側に雄性孔が存在します。そのため、粘液管の形成に伴って、精液が、体壁と粘液管との間に生じる一定の通路を通り 受精嚢孔に達します。(下図のようなフトミミズ科のものより、精子が辿る経路が少し長いという風に捉えて下さい。)

1. 交接開始

まず、ミミズは大人になると、環帯と呼ばれる首輪のような器官が発達します。また、成体の腹側にも、雄・雌の生殖器と、精子を受け取る受精嚢も発達します。そして、成体同士が、お互いの腹部を粘液や剛毛で密着させて、交接を開始します。

2. 精子の排出

貯精嚢という器官で蓄えていた精子が、雄性孔から排出されます。精子は、相手の受精嚢孔を通って、受精嚢を目指します。

3. 交接終了

精子の交換が完了すればお相手は用済みなので、2匹は離れ、各自受精の準備に入ります。しばらくの間、相手からもらった精子は、受精嚢に蓄えられます。精子の効力は半年間持つと言われています。

4. 卵胞膜の形成

環体からアルブミンが分泌され、この物質が環体の外側を固めることで卵胞膜(図のピンクの部分)が形成されます。その後、卵胞膜はミミズが後ずさりすることで、頭部へ移動するのですが、その際に、卵巣から雌性孔を通して、卵が卵胞膜内に排出されます。

5. 精子の排出

卵胞膜が、受精嚢孔まで移動すると、受精嚢で保管していた精子が、受精嚢孔を通って、卵胞膜内に排出されます。これで、卵胞膜内には精子と卵の両方が入ったことになります。

6. 受精&放卵

卵胞膜は口まで移動した後、放卵されて、両端が閉じた卵胞が出来ます。この卵胞の中で、受精が行われ、受精卵が形成されます。卵胞の形・サイズは、種によってバラつきがあるのですが、私達が使っているミミズは基本的にレモンのような形で3~5mm程度の大きさです。色については、放卵直後は、卵胞の色である乳白色をしており、その後、薄緑~褐色に変化するのが一般的です。

ミミズはいったん交接すれば、数個~数十個の卵胞を、一定の期間作ることができます。しかも、一度の交接で2匹が卵胞を産める状態になるので、 誕生から大人になるまでに約10週間かかるそうなのですが、これなら、条件が良ければ、ある程度は数を増やすことができますね。リアルなミミズの交接画像を見たい方はコチラから

コンポスト向きのミミズがいる!

先程、「ミミズ」と括ってしまいましたが、ミミズには種によってかなり生態が異なります。

*落葉層は基本的に森林地域のみに存在 / 南谷幸雄「ミミズを見分けよう」p9 を参考に作成

ミミズは生活型によって表層性種表層採食地中性種地中性種の3種類に分かれます。表層性種は、落葉層で生活し、落ち葉や堆肥を食べています。コンポストミミズは基本的に表層性種です。 私達は「シマミミズ (Eisenia fetida)」と「アンドレツリミミズ(Eisenia andrei)」というツリミミズ科の表層性種を使っています. そして、皆さんが見たことのある、またはイメージをするミミズは フトミミズ科の種である場合が多いです。なぜなら、 日本で分布する約170種(研究が進んでいないので、実際は500種ほどでは?と考えられている)のうち、およそ80%をフトミミズ科が占めているからです。(2018年時点)
コンポストミミズと、フトミミズ科のうち土壌生息型の種(表層採食地中性種+地中性種)との違いを、表にざっくりとまとめました。(写真が欲しいorz)

大まかな違い(まとめ)
コンポストミミズ 土壌生息型ミミズ(フ)
外見 体長5~10cm、細い 体長10cm~、太い
巣作り しない する
繫殖力 極高 中~高

一つの卵胞から生まれる子供の数は、基本1匹が多いのですが、コンポストミミズだけは、その数が2~10匹程度(諸説あり)と一定していないのが特徴です。簡潔に述べると、コンポストミミズは、地表面付近で生活し、中を良くかき混ぜる容器内において、巣を作らず、繫殖力もめちゃくちゃ強いためにコンポストに向いています。逆に、土壌生息型のフトミミズ科の種は、巣づくりのために地中深くまでたくさん孔を掘って 土壌を反転させるので、圃場での土壌改良に向いています。 また、フトミミズ科の表層性種については基本的に1年生のものが多く、春にふ化して、夏から秋にかけて産卵し、冬の寒い時期にほとんどが死んでしまいます。従って、年中繁殖できて繁殖力も極めて高いツリミミズ科の表層性種がコンポストミミズとして採用されています。
余談ですがコンポストミミズは表層性種の中でも、特に有機物の多い所でしか生きられないので、庭の土に放っても、そのほとんどが死んでしまいます。

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2.2 メリット

コンポストは、ミミズを利用したもの以外にも、様々な方法があります。(別サイトへ)。興味があれば、是非ググって調べてみて下さい。

ミミズコンポストが他のコンポストと比較して、突出していると思われる点は、☆マークを付けています。

1. 悪臭が少ない(でない)☆

私達も、実際にやってみるまで半信半疑だったのですが、生ゴミを入れすぎなければ、臭いは全くしません。むしろ、土の良い匂いがします。ミミズコンポスト最大の魅力はここにあります。なぜ臭いがでない、出にくいのかというと、ミミズ糞内・コンポスト(容器)内の無数の微生物が生ゴミの匂いを分解してくれるからです。 また、ミミズの糞は多孔質といって、たくさんの孔が開いていて、この孔に臭い成分が吸着されているからなんだそうです(消臭炭と同じ仕組みです)。 従って、ご家庭でも、臭いを気にすることなく、自宅の生ゴミを処理することが出来ます。

2. 質の高い堆肥ができる ☆

ミミズコンポストは堆肥が少しずつ熟成するので、良質なものができやすい といわれています。先程も、述べたように、ミミズの糞は栄養分が植物が吸収しやすい形となって、排出されるので、土壌肥沃度の改善ないし、収穫量の増大につながると言われています。また、高温処理をしないこともあり、堆肥に様々な微生物が豊富に含まれていることも特徴です。さらに、ミミズコンポストは微生物だけで処理した堆肥と異なり、団粒構造を持つので 土壌の物理性の改善に効果が期待されます。

3. 質の高い液肥がとれる☆

ミミズの糞も素晴らしい効果を持っていますが、実は尿も液肥になるんです。茶色の液体が集まるのですが、これを一般的(?)に「コンポストティー(compost tea)」と呼びます(笑)。個人的には語呂が良いので、コンポスティーと言っています。こちらも微生物・栄養分ともに多く含まれているため、薄めて使うと植物の生育を促進する効果があります。

4.堆肥化の過程で、温室効果ガスの排出が少ない

好気性微生物による堆肥化は、発酵途中にアンモニアガス、メタンガス、二酸化炭素などの温室効果ガスが大量に発生します。ミミズコンポストのは常温でゆっくりと堆肥化を行うので、これらが極めて少ないと言われています。

5. 設備と処理の面で、小規模の運用が可能

温度管理に、電力も使わないことに加え、各家庭や各事業所ごとに処理するので、生ゴミを収集する手間・焼却費用、ガソリン代等を省くことが出来ます。

6. 毎日かき混ぜなくて良い

普通、好気性発酵型のコンポストは、酸素を入れるために、毎日かき混ぜなくてはなりません。かき混ぜないと、嫌気性発酵が進み、 悪臭が出てきます。ぬか漬けを作ったことがある方は、イメージがしやすいかもしれません。 メリット1で述べた理由に加え、ミミズが中を動き回って多少かき混ぜてくれることもあり、ミミズコンポストは生ゴミを入れすぎない限り悪臭が出にくく、夏場以外の期間では、忙しい人や3日坊主になりやすい人でもマイペースにできます。ちゃんと餌を前もってやっておけば、2週間くらいは放置していても全く問題ないと思われます。 旅行など、長期間お世話ができない場合に、誰かに管理をお願いしなくても良いのが楽ですね。(あと雨の日も)

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2.3 デメリット

1. 病原菌や雑草のタネ、害虫が生存する恐れがある。

短期的に処理する場合は、基本的に微生物の活動が著しく高まり、コンポスト内が70度を超えることが普通です。したがって、処理の過程で、雑草のタネ・病原菌・害虫(卵~成虫)などを殺すことができ ますが、ミミズコンポストは、微生物が豊富に存在することがポイントなので、基本的に滅菌操作は行いません。なので、生ゴミの中に、雑草のタネや、作物や人間にとっての病原菌・害虫が混入していた場合、これらが死滅せずに堆肥が完熟する恐れがあります。
ミミズの腸内が殺菌の役割をしているのではないかと述べている文献もありますが、正確にはまだ分かりません。 また、この問題が気になる方は、コンポスト内に落ち葉・雑草・外の土を入れない、日光に当てるといった様々な工夫をしなければならないとは思います。

2. 暑さに弱い

最近の東京の夏は、35度を超えることが当たり前になってきました。「シマミミズ」や「アンドレツリミミズ」は、最適気温である25度を超えた あたりから処理能力が落ちる可能性が次第に高まり、 35度以上になると、場合によっては、死んでしまいます。家の軒下など四六時中日陰で風通しの良いところであれば、全く問題ないのですが、 それ以外の場所では、夏場は温度管理に、かなり注意を払う必要があります。 ただ、「ハラメノウミミズ」という 暑さに強い(寒さに極端に弱い)コンポストミミズもおり、ベトナムなど、赤道に近い国では、こちらの種が採用されています。

3. 処理能力が比較的低い

好気性微生物のみを使った堆肥化の方が、処理能力(単一面積・1日あたりに入れられる生ゴミの量)が大きく、その処理量の変動も小さいです。一方で、生ゴミ投入から堆肥として使用できるまでにかかる時間はミミズコンポストの方が早いです。このように、処理能力以外にも、いろいろ比較するポイントはあるので、 目的に合ったコンポストを選択して下さい。学習用教材として使うのであれば、生物多様性が高いミミズコンポストの圧勝だと、個人的には思います。食品業者など、大量に発生する食物ロス・残渣等を処理する場合などにおいて、質よりも量を重視する場合は、ミミズコンポストはあまりオススメはできません。

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