プログラム全体構想
事業の趣旨
平成19年度から平成21年度の3年間で、真に必要とされる女性獣医師再教育プログラムの構築を図り、平成22年度以降の事業の基盤を整備していきます。平成22年度からは東京都獣医師会など周辺獣医師会の後援を得て、履修証明書の発行を可能とする本格的再教育プログラムを、本学の事業として実施・運営することが本事業の趣旨です。
事業実施体制
本事業は、文部科学省の協力と支援のもと、東京農工大学獣医学科および動物医療センターが中心となって実施する。本学女性未来育成機構や後援獣医師会および教材作成および医療機器メーカーなどの協賛企業の協力を得て、さらにプログラムの充実を図る。
| 後援獣医師会 | (社)東京都獣医師会・(社)埼玉県獣医師会・(社)山梨県獣医師会 (社)横浜市獣医師会・関東地区獣医師会連合会 |
|---|---|
| 協賛企業 | アテックス㈱、㈱インターズー、㈱ファームプレス、三浦工業㈱、 ㈱ラスターテック |
なお、事務局の体制は、以下の図に示すとおり、プロジェクトリーダーである松田浩珍教授のもと、基礎獣医学・応用獣医学・病態獣医学・臨床獣医学の各コースにコースマネージを置く。

事業内容
教育プログラムとして、本学獣医学科の専門分野教員の協力を得て、基礎獣医学、応用獣医学、病態獣医学、臨床獣医学、臨床獣医師養成講座初級・基礎コースの5つの再教育コースを設置します。出産や育児で休業した、あるいはスキルアップを図ろうとする女性獣医師、また、再就職を希望する獣医師全体を対象に、大学ならではの教育実績を背景とした高度な人材再教育プログラムを整備します。
現在育児休業中の女性獣医師もその対象となることから、本学における女性未来育成機構の協力を得て学内に託児スペースを開設するなど、女性が安心して再教育を受けられる支援体制や環境を整備していきます。
本学では、「獣医学教育の充実」をスローガンとしてここ数年教員の増員を行っており、中でも社会的ニーズの高い応用獣医学(公衆衛生・伝染病対策など)および臨床獣医学(動物医療)分野の優秀な教員を多数採用してきています。
本プログラムの主旨は、これら本学の有する人的資源をフルに活用し、有能な女性人材を掘り起こし、国民生活の充実と安全・安心のために役立てようとするものです。
具体的には、受講者は自分の目的やレベルに合わせ、下記の各コースとカリキュラムを自由に選択し再教育を受ける。カリキュラムは、単数あるいは複数履修が可能で、さらに、複数のコースを組み合わせて受講することも可能です。
平成22年度以降開設予定講座
基礎獣医学再教育コース
臨床獣医師を目指す獣医師のための基礎講座である。臨床の基礎として非常に重要であるにもかかわらず、現場ではなかなか学ぶことのできない生理学や解剖学を改めて習得する。それにより、病気のメカニズムや治療法について知識を深める。また、薬理学の基礎を再習得することで、薬の働くメカニズムを知る。本コースは以下の科目より構成される。それぞれの科目は単独での履修が可能であり、コース修了証明書の取得には、3科目のうち2科目を履修する必要がある。
⒜基礎生理学:1日2時間×7回
⒝基礎解剖学:1日2時間×7回
⒞基礎薬理学:1日2時間×7回
応用獣医学再教育コース
近年急激にニーズの高まった、鳥インフルエンザ・豚インフルエンザ・狂牛病、そして狂犬病などの感染症対策及び食の安全や公衆衛生に関する最新知識と検査技術を学ぶスキルアップ講座である。特に、家畜疾病予防や食品衛生関連の職場への復帰や再就職を目指す女性獣医師に、病原体検出のための実験操作や試料の取り扱いなどを習得させる。これにより、埋もれていた人的財産を掘り起こし、さらに、危機管理体制の強化にも貢献する。本コースは以下の科目より構成される。それぞれの科目は単独での履修が可能。コース修了証明書の取得には、2科目とも履修する必要がある。
⒜家畜疾病予防:1日2時間×7回
⒝食品衛生・安全管理:1日2時間×7回
病態獣医学再教育コース
製薬・化粧品及び食品メーカーなどの病理検査や安全性・毒性検査に役立つ病理組織標本作成技術や実験動物取扱技術を学ぶスキルアップ講座である。特に出産や育児による休職からの現場復帰や、異なる職種から転職を希望する女性獣医師、あるいは実験動物取扱責任者の資格取得によるキャリアアップを目指す女性獣医師に、技術指導を実施する。本コースは以下の科目より構成される。それぞれの科目は単独での履修が可能。コース修了証明書の取得には、2科目とも履修する必要がある。
⒜基礎病理学:1日2時間×7回
⒝実験動物取扱:1日2時間×7回
臨床獣医学再教育コース
出産や育児で休業していた女性獣医師の小動物臨床現場への社会復帰、異なる職種からの転職、独立などを支援する再教育・スキルアップ講座。特に女性獣医師の特性や長所を生かして、女性が実施可能な手術手技(一般外科・整形外科・眼科外科)や超音波検査・レントゲン検査・CT・MRIなどの画像診断法、バイオプシー及び細胞診標本の見方、検査数値の読み方など、現場のニーズに即した実践的なスキルを習得する。本コースは、以下の科目から構成される。それぞれの科目は講義と実習から構成されており、単独での履修が可能。ただし、コース修了証明書の授与には、下記のうち少なくとも4科目を履修する必要がある。
⒜特殊外科技術習得:各1日2時間×4回
- 整形外科:骨折・椎間板ヘルニアなど女性が実施可能な手技を学ぶ。
- 眼科外科:器用で仕事が丁寧な女性に適する眼科技術を基礎から学ぶ。
⒝画像診断技術習得:次を各1日2時間×4回
- 汎用画像診断法:X線やエコーの取り方・読影法を習得する。
- 特殊画像診断法:CTやMRIの操作や読影法を学ぶ。
⒞一般外科技術習得:1日2時間×4回
- 避妊・去勢手術をはじめ、外傷処置や簡単な腫瘍摘出術など、現場ですぐ に役立つ基本的な外科技術を習得する初心者向けコース。
⒟基礎臨床病理学:次を各1日2時間×4回
- 細胞診:急増する腫瘍性疾患の現場で出来る簡易診断法を学ぶ。
- 血液検査:血液検査項目の診断的意義や読解法を学ぶ。
小動物臨床獣医師養成講座
初級・基礎コース このコースは小動物臨床への再就職を希望する獣医師資格保持者(とくに女性獣医師)に対し、初歩的な職業技術訓練を実施し、就職を有利にするための即戦力養成講座である。サブプライムローン問題やリーマンショックのあと、国内外の経済情勢の悪化により、獣医師の就業先のひとつである製薬企業の研究所などが縮小や閉鎖を余儀なくされており、獣医師資格保有者の再就職希望者が増加している。また、今後さらに多数の獣医師資格保持者が再就職活動に従事せざるを得ない状況となる事が予想される。それらの獣医師は、比較的求人の多い動物病院への再就職を志しても、技術を身につけていないため、動物病院への就業が難しい。求人側の動物病院経営者からも、本プロジェクトにおける再教育講座を受講・修了し、一定レベルのスキルを身に付けた獣医師を雇用したいという声が多数寄せられている。この2年間に渡り開催した計6回の講演会の参加者からの意見・要望、および平成20年度10月~12月に行った試験的開講における受講生・講師からの具体的な感想・意見を基に、「臨床獣医師養成のための初級コース」の設置を検討、計画した。本コースは以下の科目のとおり、基礎検査1.2と手術(講義と実習)より構成される。コース修了証明書の取得には、下記4科目とも履修する必要がある。コースの最終日には、後援獣医師会にご協力いただき、動物病院経営者等との再就職相談会を開催、また、「学び直し」における不安や疑問に専門的に答えていく。
⒜基礎検査1:各1日2時間(講義1時間・実習1時間)×3日
- イヌの取扱や各部位の名称など診療をしていく上での基礎知識
- 犬猫の疾病予防(ワクチン・フィラリア検査など)の知識と技術。
⒝基礎検査2:各1日2時間(講義1時間・実習1時間)×3日
- 日常的に行われる諸検査
⒞手術の準備・器具の扱い:講義2時間×2日、実習3時間×1日
⒟再就職に向けて:各1日2時間×2日
- 小動物臨床をしていく上での心構え
- 再就職相談会
女性獣医師再教育プログラムコースツリー

