◎ iGEM 2010で本学学生チーム「Tokyo-NoKoGen」が金メダルを受賞

 11月6日(金)〜8日(月)、米国マサチューセッツ工科大学で開催されたiGEM(International Genetically Engineered Machine competition)2010において、本学の学生チーム「Tokyo-NoKoGen」が金メダルを受賞しました。
 iGEMは、合成生物学の理念に基づいて合目的な機能を遺伝子レベルで設計した「生物ロボット」を競うコンテストで、2003年に初大会が開催されて以来、年々規模が拡大され、本年度iGEM 2010では世界各国から128チームの参加がありました。 
 iGEMでは、過去のチームが開発した、BioBrickと呼ばれる規格化された「遺伝子」や「制御系」などの生物部品を組み合わせて生物ロボットを作ります。生命工学のエンジニアとして、エンジニアリングマインドに基づいて優れた生物ロボットをデザイン・作成し、また、規格に従って新規BioBrickを構築・評価し、登録するという重要な課題が各チームに課されています。さらに、倫理的な側面を考え生物ロボットを多くの人に正しく理解してもらうことも重要な使命です。
 

「Tokyo-NoKoGen」受賞メンバー

 
 
【受賞した研究の概要】
 Tokyo-NoKoGenは、特定の物質を貯蔵し、目的場所に運ぶというタンカーの一連の動作を生物で実現することをめざし、大腸菌を宿主とした生物ロボット「EcoTanker」を開発することを目的として研究を行いました。EcoTankerは環境中に存在する標的分子を取り込み、これを目的の場所に運ぶことができます。
 「EcoTanker」は、まず蛋白質の殻でできた「EcoTank」中に標的分子を取り込みます。次に、青色光に従って目的の場所へ移動します。その後、緑色光によりEcoTankerが自己集合し、続いて細胞間シグナル伝達系(クオーラムセンシング)により自己溶解します。
 これらEcoTankerの一連のシステムにより、環境中に存在する標的分子で満たされたEcoTanksを容易に回収することが可能になります。標的分子は環境中の有害物質や産業上有用な物質など対象を選ばず、目的に応じて変更可能であるため、バイオレメディエーションや産業上の用途において有用な生物ロボットになると期待されています。

「Eco Tanker」仕組み図
 
【受賞に伴うコメント】
 私たちiGEM 2010 Tokyo-NoKoGenは計18名の生命工学科の学部学生を中心に主体的に活動をしてきました。その結果としてiGEM大会本部が定めた最も厳しい要件をクリアし、「金メダル」を獲得することができたことを嬉しく光栄に思います。
 Tokyo-NoKoGenは昨年結成され、iGEM2009に本学から初めて参加し、銅メダルを獲得しました。Tokyo-NoKoGenは本大会が国際大会であることを意識し、国際経験豊富な生命工学科のStefano Ferri先生に指導を頂きながらプロジェクトを進めてきました。特に、「研究の独創性」、「研究アプローチ」「組織として・地域としての特徴」について明確な意識を持ち、これらをチームの課題としてどのように表現していくかについて、国際的視点ならびに審査員側からの視点に基づき、ご指導いただきました。さらに、合成生物学が目指すべき「遺伝子材料の標準化」に向けて私たちのチームが貢献すべきことについてご指導をいただきました。
 iGEMの活動は、実に魅力に溢れています。何よりも自由な発想にもとづき、まさに「生命工学のエンジニア」としての夢を思う存分語ることができます。また、チームの運営を通してプロジェクトマネージメントの重要さを実感するとともに、こうしたスキルを積極的に学ぶことができます。さらには、チームの枠を越え、Wiki等を介した海外チームを含めた他チームとの情報交換・コラボレーションにより研究に対する姿勢を含め、お互いに学ぶべきことがたくさんありました。これらはほんの一例で、本気で取り組めば取り組んだだけ、得られるものに尽きることがないのがiGEMの魅力だと感じました。このように、iGEMでの活動を通して学ぶことのできる多くは、卒業論文や修士論文などの個々の研究活動ではなし得ないことであり、私たちにとって新鮮かつ大変刺激的な活動でした。この活動を通して、チームメンバーがお互いに築いた絆は生涯の糧です。
 最後になりましたが、プロジェクトを進める上での研究の場の提供とプロジェクトの科学的な妥当性やオリジナリティに対する貴重なアドバイスを下さった早出先生、池袋先生、津川先生に御礼申し上げます。
 私たちは来たるべくiGEM 2011へ向け、活動を開始します。現在、新メンバーを大募集しています。ともに「生命工学エンジニア」の夢を語ろうではありませんか。
(工学府生命工学専攻修士2年 池袋研究室 村上 慶行)
 
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