遠藤 章 名誉教授に日本国際賞 

 本学農学部応用生物科学科で18年余りに渡り教鞭を執られた 遠藤 章 名誉教授博士(平成8年3月退官、現在株式会社バイオファーム研究所代表取締役所長)が、2006年(第22回)日本国際賞を受賞することになりました。
 
 日本国際賞は、科学技術において、独創的・飛躍的な成果を挙げ、科学技術の進歩に大きく寄与し、人類の平和と繁栄に著しく貢献した人に与えられるものです。この賞の対象は、科学技術の全分野にわたりますが、科学技術の動向を勘案し、毎年2つの分野が対象分野に指定されます。今回の対象分野は「治療技術の開発と展開」と「地球環境変動」で、遠藤名誉教授は「治療技術の開発と展開」分野での受賞です。授賞式典は4月20日に東京で天皇皇后両陛下御臨席のもと、内閣総理大臣、衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官を始め、関係大臣、駐日大公使、学者、研究者、政官界、財界、ジャーナリスト等約千名が出席して挙行される予定です。
 
 受賞業績は、「スタチンの発見と開発」です。「スタチン」とは血中コレステロール値を下げる画期的な医薬で、体内でコレステロールを作る過程で重要な酵素HMG-CoA還元酵素の阻害剤の総称です。遠藤名誉教授は最初のスタチンを発見し、これがコレステロール低下作用をもつことを確かめました。これが契機となって世界中で研究が行われ、いくつもの種類の「スタチン」が医薬として利用されるようになりました。

 遠藤名誉教授は当時在籍していた三共株式会社で1970年代初頭に、「コレステロール合成の律速酵素 “HMG-CoA還元酵素“ の阻害剤は体内コレステロール合成の抑制と血中コレステロールの低下に有効である」との仮説を立て、共同研究者らと共に数千株に及ぶ微生物をテストして、アオカビ(写真)から「メバスタチン」を発見しました。さらに、1979年に助教授として本学農学部移った後に第2のスタチン「ロバスタチン」を発見しています。遠藤名誉教授はメバスタチンの作用機序を解明するとともに、メバスタチンが実験動物と重症患者の血中コレステロールを強力に下げることを示し、スタチン開発の基礎を確立しました。
 
 現在、スタチンの仲間は世界中で3000万人もの患者に使われ、心臓病や脳卒中などの予防に役立っています。
 

財団法人 国際科学技術財団 ホームページ
『JAPAN PRIZE NEWS No.35』
 
 

<遠藤章氏>
 
 
 ※ 本文の一部は国際科学技術財団の資料から引用しています。  写真は国際科学技術財団から転載の承認を得ています。  
 
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