ノーベル賞受賞者会議(リンダウ会議)に参加して

向井 知大
日本学術振興会特別研究員 PD
COE「ナノ未来材料」大野研究室
 
 6月26日から7月1日までの一週間、ドイツのリンダウで開催されたノーベル賞受賞者会議(リンダウ会議)に出席する機会をいただきました。本学のCOEが着実に成果をあげているという評価を得たので、一人分の枠が得られたと聞いています。リンダウは、ドイツ南西部、オーストリア、スイスにまたがるボーデン湖に浮かぶ周囲約3kmの島です。リンダウ会議は1951年に始まったもので、毎年のテーマは物理、化学、医学生理学の三つの分野について順に開催され、ノーベル賞受賞者のうち十数名が参加します。受賞者の講演を聴講できるだけではなく、参加者全員での夕食会やボートトリップなど、直接話しかけることのできる機会も多くあります。55回目を迎える今回の会議は三分野合同で開催され、40名以上の受賞者、900人もの聴講者が参加した大きな会議でした。日本からは博士後期課程の学生や若手の研究者が各分野から5名ずつ、計15名で参加しました。同年代で異分野の優れた研究者や、ノーベル賞受賞者との交流を持てる機会を頂けたことに喜びを感じる一方で、これまでに参加したテーマの限られた国内外の学会とは全く性質の異なるものであったため 大きな不安も感じました。

 期間中は、午前中受賞者の30分の講演数件とラウンドテーブルディスカッション(一つのテーマに対して5、6人の受賞者が意見を交換する)、午後は島内の5〜6箇所で行われる講演を選択して聴講します。フラーレンで著名なKroto教授(本校にも来られた!)の講演は、会議中最も大きな拍手を受けていました。百枚を越えるスライドを使い、ユーモアを交えて息次ぐまもなく情熱的に話し続ける講演は感動的でした。また、異分野の研究者との交流が特に大事であるとの話もありました。私も他大学との共同研究に参加しているため、その面白さや有意義さについて改めて考えることができました。

 講演以外にも、他国の学生たちや物理学賞受賞者である小柴教授との食事会もセッティングしていただきました。小柴教授との食事会では私と同年代の頃のお話などもたくさん伺うことができ、刺激的で楽しい時間を過ごすことができました。日本から参加した研究者との交流も有意義でした。異分野の研究者の持っている研究に対する哲学に触れる機会はこれまでになかったため、大きな収穫であったと感じています。自分の研究に直接影響するような知識を得ることはできませんでしたが、多くのノーベル賞受賞者の生の言葉を聞けたこと、自分の不足している所を痛感しながらも、自分の進めている研究に対して自信を持つことができたことなど、私の将来に大きく影響するであろうと予感させるような非常に充実した一週間でした。

 最後に、御推薦をいただいた前田和之助教授、大野弘幸教授、ならびに数々の御高配を賜りました文部科学省平山文康国際交流官、小山佐和様、千葉美紀様に深く感謝すると共に厚く御礼申し上げます。
  
 向井さんは、本学工学部生命工学科を平成12年卒業、同年大学院進学、14年修了、同年博士後期課程進学、17年3月に修了、博士(工学)の学位を取得されました。 また、平成16年度と17年度の学術振興会特別研究員に採用されております。
 
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