カイコの非休眠卵の保護法

 ほとんどのカイコは休眠卵を産下するので、越年は保護法が確立しており、休眠卵で保護、冷蔵されている。しかし、多化性系統の卵や2化性系統の非休眠卵の保護法についてはほとんど調査されていない。

簡単な非休眠卵の保護法
卵の冷蔵法
1. 室温で充分交尾させる(2時間位)。
 
2. 2.交尾した雌蛾を5℃に冷蔵する(割愛してから冷蔵してもよいし、交尾したままでも良い)。
3. 数日冷蔵する(2日位が良い。1週間以上冷蔵すると蛾が弱る)。
4. 室温(25℃)に雌蛾を出庫する(割愛する)。
5. 2時間以内にほとんどの卵を産卵する(冷蔵により産卵が集中する)。
6. 翌日(出庫24時間後)、17℃に卵を移す。
7. 翌々日(出庫40〜48時間後)、卵を冷蔵する。 
冷蔵温度は0℃が良いが、5℃でもほとんど同じ。0℃以下は良くない。
冷蔵中の乾燥しないように気をつける(卵をビニール袋に入れるなどする)。
 このようにすると冷蔵に適した卵令で冷蔵することができる。
産卵後25℃→17℃→冷蔵とせず、直接25℃→冷蔵とする場合、卵令は25℃で産下32.5時間辺りになる。昼間産卵させると、冷蔵は真夜中となるだけでなく、冷蔵適期も極めて短くなる。
卵の冷蔵期間
 1ヶ月以内ならほぼ8割の孵化率が得られる。
 2ヶ月以上冷蔵する場合、50日位で中間手入れ(17℃で2〜4日保護)して再冷蔵すればほぼ8割の孵化率が得られる。

卵の出庫
 中間温度(17℃)で3(2〜6)日保護してから25℃で催青する。


非休眠卵の冷蔵抵抗性時期
 非休眠卵の冷蔵抵抗性の胚子は休眠卵の胚子のstageでは8〜13に相等する。

非休眠卵の胚発育 
産下後25℃で保護
産下25時間 産下32.5時間 産下50時間
stage 5
こけし形胚子
stage8〜13
越冬期胚
stage15
腹肢突起発現期

産卵後の保護温度と冷蔵抵抗性時期に達するまでの時間は上記の図の通り。
カイコは変温動物なので温度を高くすれば早く、低くすれば遅く冷蔵抵抗性時期に達する。



非休眠卵の参考文献
水野辰五郎(1926) 蚕卵論
  明文堂 東京
東 嘉昭(1971) 多化性品種の冷蔵に関する予備試験
 タイ養蚕研究訓練センター報告 第1号 11

林 雄次郎(1971) タイ国における蚕種の冷蔵法
 タイ養蚕研究訓練センター報告 第1号 92-84

横山 岳・須貝悦治(1985) カイコの非休眠卵と即時浸酸卵の長期保存
 日本蚕糸学会関東支部第36回学術講演会講演要旨


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