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熱伝導現象やエネルギー変換,物質輸送など,伝熱工学およびその関連の分野のナノ・マイクロスケールの現象に関しての研究を,主にシミュレーションを用いて行っています.以下は、そのうちのいくつかの研究の一覧です.

熱電変換材料の最適構造

熱電変換素子はゼーベック効果を利用して温度差から電気エネルギーを生み出すことができます. ウェアラブルデバイスなどの動力源に期待されていますが,資源の豊富さや無毒性,加工性から特にシリコンが有力な材料です. 一方で,シリコンは熱伝導率が高くそのためエネルギー変換効率は低いという問題があります. そのため,シリコン薄膜をナノ構造化することでその熱伝導率を低下させる研究が世界的に盛んに行われており,その最適構造などが重要な知見になっています.
そこで,ナノ構造化シリコン薄膜の熱伝導率の高速評価シミュレーションの開発や,熱伝導率の形状依存性の解明,最適化手法の開発及びその妥当性の検証を行っております.



多結晶体の熱伝導現象

ナノスケールの結晶粒によって構成される多結晶ナノ構造は,太陽光発電素子や熱電変換素子,熱バリアコーティングなどの多くの場面で利用されています. こうしたデバイスなどにおいて,その熱伝導率が性能を左右することがあります. そのため,特に半導体材料では結晶の格子振動によって熱が輸送されるので,その理解が重要になります. しかし,多結晶ナノ構造は複雑な形状をしているほか,強い異方性を有することもしばしばあるので,熱伝導現象の解明は容易ではありません.
そのため,多結晶構造のモデリング,格子振動伝搬解析法の異方性を有する構造への発展や,理論解析による熱伝導率の予測モデルの構築を行っております.




ナノカーボン材料の伝熱

グラフェンやカーボンナノチューブは炭素原子の六員環からなるシート状または円筒状の物質です. これらのナノカーボン材料は極めて高い電気伝導性・熱伝導性・機械的強度を持つことが知られているため,機械・電子・材料・化学など様々な分野で研究されています. 熱工学としては,その高い熱伝導性を利用した放熱材料としての利用や,電子素子として用いる際の発熱現象の面で興味として持たれています. これらの応用では,機械・化学的な強度を保持したうえで高い熱伝導性をいかに発揮させるかが,課題の1つとなります.
これまで,機械的変形を受けた際のカーボンナノチューブ,ナノ流体中のグラフェン,多層構造化低次元材料の分子シミュレーションを行っております.




半導体結晶中の熱抵抗

人工知能や通信に代表される情報技術の発展は,半導体素子の集積度の上昇により支えられています. また,パワー半導体と呼ばれる大電流変換用の半導体では,現在主流のシリコンからシリコンカーバイドや窒化ガリウムなどのより高い耐電圧の新材料の利用が期待されております. こうした半導体素子の微細化やパワー半導体材料の開発に伴い,その通電によって生ずる熱の除去が課題となっています. 適切な熱管理のためには,それらの結晶材料やその界面の熱抵抗の理解が必要になります.
具体的には,熱伝導率の結晶サイズ依存性の検証,次世代半導体材料における界面熱抵抗の評価,発熱後の振動状態の緩和過程の追跡などを分子シミュレーションにより行っております.




ナノスケール気泡の生成

固液界⾯上の界面ナノバブルはナノカプセルの生成への利用が期待される他,触媒への悪影響が指摘されるなど,工学的に重要です. また,熱を効率よく輸送する沸騰の初期現象にも近いため,その理解は冷却法の向上にも関連します. そのため,ナノバブルの生成や安定性に焦点を当てた実験的な研究が行われているほか,微細な現象の解析に有利な分子シミュレーションを用いた研究も数多く報告されてます.
基板の物理的・化学的な表面状態や,意図せず混入したコンタミネーションが界面ナノバブルへ及ぼす影響に関する研究を行っております.




多孔体中の気体分子輸送

ナノスケールの細孔内の流れの現象は,燃料電池やガス分離膜等の多孔体を有する応用において見られます. こうした系の流れはクヌッセン数が大きく細孔表面との気体分子の衝突が支配的となるので,連続体流れとして扱うことができない場合があります. これらの流体現象は性能に影響を及ぼすため,その理解が欠かせません. そのためには,多孔体の構築と,気体分子輸送の解析を行う必要があります.
過去には,細管表面における気体分子拡散現象のシミュレーション方法の開発,燃料電池内細孔構造の3次元構造再構成,特徴量に基づく多孔体構造の構築などを行っていました.