金井 亮さん

何故そうなるのか?を突き詰めていくこと。そこでまた新たな発見があるかもしれない。これこそ微生物反応の醍醐味

  • 大学院修士2年(2006年度入学)バイオ班兼イネ班

Q1. 研究のテーマを教えてください。どんなところが大変で、どんなところが楽しいですか?

A. 微生物の働きを利用したバイオマスのエネルギー変換

「微生物」の力を利用して「バイオマス」を再生可能なエネルギーへと変換する研究を行っています。

私が対象としている「バイオマス」とは、「家畜排せつ物」および「稲のわら」です。両者はそれぞれ、「廃棄物系」および「未利用」バイオマスと言われているため、「エコロジー&エコノミー」である「微生物」を利用してエネルギーへ変換することができれば、「廃棄物処理+資源の有効活用+持続可能な社会」の実現が可能となるのです!

日々の実験では「微生物がその力を最大限に発揮できる条件の探索」を行っています。そこで得られたデータからモデルを作成し、実際に商業規模で実現可能なのか?様々なケースに応じた提案をすることをゴールに、研究を行っています。

大変な点は、全体を俯瞰的、多角的に捉えてニーズに合ったを提案しなくてはならないため、生態学だけでなく熱力学や反応工学、モデル化のための数学など幅広い知識が必要となるところです。最初は分からないことだらけで、参考書から学ぶ部分もありますが、仮説→実験→考察の過程で経験的に学ぶことや先生・諸先輩方から学ぶ機会も多く、新しい発見や価値観に出会えることが実は研究へのモチベーションになっていたりします。

ただ、何と言っても相手が微生物というところが面白いですよ。私のアプローチに対して予想通りの「返事」をしてくれることなんて稀です。じゃあ、何故そうなるのか?何が効いているのか?ということを突き詰めていくこと、そこでまた新たな発見があるかもしれないこと、これらこそ微生物反応の醍醐味だと確信しています。

これからも微生物が振り向いてくれるよう、たっぷり「愛情」を注ぎます!(飼料イネ班研究例①参照)

Q2. 金井さんはなぜ細見・寺田研に決めたのですか?

A.環境問題の解決・自分自身の成長へ挑戦

理由は二つあります。一つ目は、研究室の第一の目的として「環境低負荷型社会の構築」が掲げられていたことです。一口に環境問題といっても、アプローチ方法はたくさんあると思います。例えば、燃費効率の良い自動車を作ること、これも一種の環境対策と言えます。一方、当研究室では、「20世紀の負の遺産」と呼ばれる、有害物質の蓄積やエネルギー問題、地球温暖化などを直接のターゲットとし、その解決手法の開発を目指しています。これからの未来のために今、私たちが解決しなければならない環境問題に対し、直接アプローチできるのは細見・寺田研究室しかないと考えました。

二つ目は、「自分自身が成長できる」と確信したからです。学部時代、私は決して態度の良い学生ではありませんでした。そのような私でも細見先生の授業は緊張感があり、また、毎回興味深く講義を受けていました。細見先生は学生の態度をしっかり指摘し、教科書にはないような現状の環境問題や最新の情報について講義で触れて下さったためです。大学の教授は、学部生の授業にはあまり興味がないものだと思っていましたが、「細見先生は違う!」と感じました。諸先輩方にお話しを伺った際に聞いた、「確かに厳しい部分もあるが、研究だけでなく発表、生活、態度などこれからの人生で必要となる様々なものを学ぶことができる」という言葉も自分自身納得でき、この研究室で鍛え上げてもう一回り成長してやろうという気持ちで固まりました。

Q.細見・寺田研の長所はどんな点だと思いますか?

A.学生一人ひとりの主体性、そして成長

何と言っても一人ひとりが様々な形で成長できることだと思います。研究室内の行事は全て学生主導で行っていきます。週に一回の全体ゼミでは、半期ごとに学生が意見を出し合って内容を決めます。そのため、研究という枠に捉われることなく英語の授業を行ったり、ディベートやグループディスカッションなどそのときそのときに、今後必要となる知識・技術の習得を目指しています。さらに、研究発表の時期になると学生だけで発表練習会を開き、改善を行います。このように様々な場面でお互いが納得のいくまで意見をぶつけ合うため、気付いたら朝になっていることもありますが、仲間と議論を交わせる環境というのが最大の長所と言えるかもしれません。

また、年に一回、環境に関する展示会であったり、活動に参加していますが、こちらも学生のみで企画内容を話し合います。昨年度はエコプロダクツ2010に出展し、一般の方や教育機関の方、企業の方々から多くのアドバイスを頂く事が出来ました。私たちが扱っている環境問題は、最新技術だけでなくその実情についても日々絶え間なく変化しています。その変化にキャッチアップしていかなければならないため、一人ひとりが主体性を持って取り組み、その結果成長していける研究室だと思います。

Q.逆に悪いところや、今後の課題となってくる点はどこだと思いますか?

A.研究に対する分野を越えた相互理解

学生同士のそれぞれの研究に対する相互理解が課題だと思います。当研究室は、学生が20人を超える大所帯であり、大きく分けてバイオ班・飼料イネ班・有害物質班・モデル班から構成されています。学生はそれぞれの班に属し、もちろん班内でディスカッションを行っていますが、班を超えての交流およびディスカッションは限られているという現状です。

化学工学は、俯瞰的・多角的な視点が必要不可欠であり、また環境問題はひとつの問題に対してひとつの答えがあるわけではありません。様々な事情や課題が複雑に絡み合っているので、各班を越えた意見交換の場が重要になってくるのではないかと考えています。それぞれ扱う物質や装置、求められる精度が異なります。お互いが、異なる分野から「これはおかしいんじゃないの?もっとこうした方がいいんじゃないの?」という意見を出し合うことで新たな発見や総合的な解決策を立案できるようになると思います。

前述のように、学生主導で行っている部分を今後さらに拡大し、班を越えた相互理解をより深化させていければ、より細見・寺田研究室の長所を活かせると思います。

Q.来年以降どのような仕事につきますか?細見・寺田研で学んだことをどう活かしたいですか?

A.研究に対する知識だけでなく、アプローチ方法を生産現場の課題解決に

食品業界で、生産工程の改善や課題解決、環境対策を実施する所謂「エンジニア」として働くことが決まりました。研究室で行っていた「環境問題に対する直接のアプローチ」からフィールドを変え、生産工程における環境負荷の低減に挑戦します。

仕事をしていくにあたり、研究内容が直接関係してくるケースは少ないと思います。私の場合、これからは、細見・寺田研究室で学んだ知識と研究に対する取り組み方を活かしていきたいと思います。まず、知識としては排水処理に代表される「水」に関する知識と「微生物」に関する知識です。研究室では、水質分析手法や様々な排水処理方法を学びました。生産工程では多くの水が使用されているため、いかに低コスト・低環境負荷で排水処理ができるかに挑戦していきたいです。さらに、食品業界では発酵や醸造など微生物の働きを利用するケースが多いのが特徴です。これまで習得した微生物の扱い方を活かして、効率の良いプロセスを提案していきたいです。機械や装置だけでなく、「水」や「微生物」に関する基礎知識を有している点は私の強みとして大いに発揮していけると思います。

また、私の研究はまず課題があり、これまで当研究室で実績を積んできた二つの技術を組み合わせることでその課題を解決できないかという形で始まりました。

実績ある既存技術のマイナーチェンジや新たな組み合わせを駆使して課題を解決するという取り組み方はまさに、これからの仕事に繋がる考え方であると思います。

細見・寺田研究室では、幅広い知識を身に付けられるだけでなく時には足を使って主体的に取り組む行動力とサポートを受けることができます。これらは私の今後の人生の大きな財産になると確信しています。