高校生のみなさんへ 微生物の利用技術で21世紀の環境問題に一緒にチャレンジしませんか

21世紀の環境問題は、水質汚濁・土壌汚染・大気汚染・廃棄物問題等の人の居住エリアで起こる問題から、地球温暖化、食糧問題、砂漠化など、地球規模の問題に至るまで非常に多岐にわたっています。

地球の資源には限りがあり、これらの環境問題解決には省エネ・低コスト・エネルギー回収型の技術の開発が求められています。地球に棲息している未知の微生物を探索し、有効利用するアプローチは一つの有力な方法です。

このアプローチを達成するには、学部で学ぶ化学工学という科目が非常に重要になります。化学工学という科目を武器に、微生物のポテンシャルを探求し、一緒に環境問題解決に向けたチャレンジに取り組みませんか?

21世紀の環境問題

人の居住エリアで起こる問題

水質汚濁
土壌汚染
大気汚染
廃棄物問題

地球規模の問題

地球温暖化
食糧問題
砂漠化

環境問題解決に求められること

省エネ
低コスト
エネルギー回収

未知の微生物を探索し 有効利用

細見・寺田研究室の研究テーマ

バイオ

バイオ

担当寺田 昭彦 准教授

地球上には38-39億年前から出現した最古の生物であるバクテリア(細菌)が10の30乗のオーダーで存在しています。

その種類は数百万種とも報告されていますが、われわれが環境浄化を含めた産業用途で利用している種類はごくごく限られています。

我々は、反応工学や物質移動といった化学工学的な見地から地球上で未だに眠っている有用細菌を獲得し、その生き様を理解して、定量化することで、環境浄化に役立てるような試みを行っています。

細菌細胞が増殖によりコンパクトに凝集し、粘着性のポリマーを産出して自分の棲家を作ります。これがいわゆるバイオフィルムです。

バイオフィルムは、バイオリアクター内に水をきれいにしてくれる細菌群を高密度に存在させることが出来るため、環境浄化用バイオリアクターの一種としてその利用が注目されています。

我々は、バイオフィルム内に存在する役割の異なる様々な細菌群の性能を高めるため、バイオフィルムへ供給する電子供与体・受容体(いわゆる細菌群のエサ)を二方向から供給する対抗拡散方式というユニークなバイオフィルムリアクターの設計を行っています。

このリアクターを利用することにより、異なる役割を担う細菌群の性能を高め、バイオフィルムへの効率的な酸素供給、効率的な酸化・還元反応の達成、温室効果ガスである亜酸化窒素の発生抑制などのメリットが得られます。

排水中や自然環境中に溶存する窒素化合物は硝化・脱窒と呼ばれる微生物による酸化・還元反応により非反応性の窒素ガスに変換されます。

その過程において副生成物や中間生成物として亜酸化窒素(N2O)が発生します。この亜酸化窒素は、二酸化炭素の265倍の温室効果能を有し、強力なオゾン層破壊能を有しています。また、その残留時間は114年との報告もあり、地球温暖化やオゾン層破壊を抑制するために亜酸化窒素の放出抑制が必要不可欠です。

この亜酸化窒素は生物・非生物学的に様々な経路を経て生成することが報告されており、どの経路がどれくらい支配的かということはよくわかっていません。我々は、自然界では0.36%しか存在しない陽子数7、中性子数8の質量数15の安定同位体(15N)を人工的に加えることにより、 15NがどのようにN2Oに入ってくるかを明らかにする方法(15Nトレーサー法)を用いています。15Nトレーサー法を用いることにより、排水処理施設や自然環境中からどのようにN2Oが生成するかを体系的に明らかにすることができるため、排水処理バイオリアクターや自然環境からのN2O生成メカニズムの解明と排出削減に向けた方法を検討しています。

亜酸化窒素の削減に向け、我々は亜酸化窒素を窒素ガスに無害化する細菌群や、N2Oを細胞内に取り込んで体を作るシアノバクテリアなどの探索を行っています。

高効率な細菌群の獲得のため、我々はこれらの亜酸化窒素を削減する細菌が優占的に増えやすい環境をつくることができる装置の開発を行っています。

亜酸化窒素を効率的に窒素ガスに変換したり、細胞内に取り込むことが可能な細菌群を獲得できれば、温室効果ガスである亜酸化窒素の削減に大きく貢献できます。

地球環境に存在する細菌は約9割は固体表面に付着してバイオフィルムとして存在しています。排水処理バイオリアクターにおいてはバイオフィルムは細菌を高密度に保持できるため有益ですが、医療機器・水処理のろ過装置・熱交換器などにバイオフィルムが形成されると、病原菌が増殖する温床になったり、産業用装置の性能が低下するため、バイオフィルムは有害であるともいえます。

バイオフィルムの形成の第一過程は細菌細胞の付着であることから、付着しにくい、もしくは付着してもはがれやすい材料表面の作製を行っています。

さらに、ひとたび不可逆的に細菌が付着するとバイオフィルムの成熟化が始まります。

この成熟化を抑制するために粘着性のポリマーの産出を抑制する化学物質を固定化した材料の開発も行っています。

活かせる能力

  • 反応工学
  • バイオプロセス工学
  • 微生物学

身につく能力

  • 生化学
  • 反応工学
  • バイオプロセス工学
  • 微生物生態学
バイオマス

バイオマス

担当利谷 翔平 助教

本テーマの新規研究生の募集は行っておりません

  • 飼料イネを用いた乾式メタン発酵
  • 水田からの温室効果ガスの放出抑制
  • 発酵残渣の蓮田への適用

活かせる能力

  • 微生物学
  • 移動現象論
  • 流体力学
PCB・ダイオキシン

PCB・ダイオキシンの分解研究

担当細見 正明 教授

本テーマの新規研究生の募集は行っておりません

  • 間接加熱法
  • 水素化脱塩素法

活かせる能力

  • 有機化学
  • 物理化学

細見・寺田研究室の研究生活

実験

研究テーマについて調査した結果から導き出した仮説を裏付けるため、日々実験を行っています。反応によって生じた物質についてのデータの収集、標本である微生物の世話を行うこともあります。

ディスカッション

毎週行われる定例ディスカッション、研究テーマごとに行われるディスカッションなどがあります。定例ディスカッションでは、外国の学会誌を読み、その研究について他の学生・教授に伝えます。テーマ以外のことが題材になることもありますが、知識を幅広く得られます。また、研究室は留学生も多く在籍するため、英語を用いた発表もあり、国際的な素養を養うことができます。

サンプリング

有害物質の生物的分解に最適な微生物を探索したり、水質調査を行ったりします。(例)排水処理施設、干潟、河川、湖沼など

授業

研究の他にも学部生、修士課程では、講義を受講し、課題を作成することも行います。

研究室の行事

細見・寺田研究室では、ほかの研究生との絆を深め、共に研さんするため、数多くのイベントを催しています。また、これらの企画は主に学生が担当します。研究室は学生が主役です。幹事を担当することにより、社会人になっても必須のコミュニケーション力を鍛錬することが可能です。

時期 行事
4月お花見
6月上旬山中湖合宿
7月下旬工場見学
8月中旬夏休み
9月下旬卒論中間発表会
11月上旬研究室旅行
11月下旬M2修士論文中間発表会
12月下旬大掃除/忘年会/冬休み
1月下旬修士論文提出
2月中旬修士論文発表会
2月下旬卒論発表会/打ち上げコンパ&新入生歓迎会
3月初旬M1修論中間発表会
3月下旬実験の引継ぎ期間、卒業式/歓送迎会(追い出しコンパ)

最後に先生から一言

寺田 昭彦 准教授

寺田 昭彦 准教授

失敗を恐れず
チャレンジし、成長しよう

21世紀の地球環境問題に対して幅広い知見から信念を持って取り組んでいける研究者・技術者になるための環境、なりたい自分になれるチャンス が細見・寺田研究室にはあります。研究を通して失敗を恐れずチャレンジし、成長していきたい皆さんをお待ちしています。

細見・寺田研究室への見学・ご相談を承ります。ご相談はメールでも可能です。

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