コンテクストの段階的抽出の枠組み

 
 

ContextDistillery (2002)


Distilleryとは,酒などの蒸留工場を指します.そしてDistillerとはその中で稼動する蒸留器を指します.

これから転じて,ContextDistilleryはコンテクスト情報をセンサから得られた情報をもとに抽出するフレームワークです.このフレームワーク上に具体的なコンテクストを抽出するための”蒸留器”に相当する処理モジュールを作ることで様々なコンテクストアウェアなアプリケーションを構築することを可能とするアプリケーションフレームワークです.


ユビキタス環境では特に,”超多様性”がキーワードとなります.アプリケーションを構成するセンサを例に挙げると,その種類,規格・性能・品質,センシング方法など様々です.

これまでもコンテクストアウェアなアプリケーション開発を支援するフレームワークやツールキットが提案されてきましたが,このような多様性への対処はアプリケーションごとにアドホックになされており,アプリケーションの規模と生産性を制限するものとなっていました.


ContextDistilleryでは,センサから得られる観測データだけでなく,それを補足説明するセンサの性能や品質を表すデータ(メタ情報)についてもフレームワーク内部で明示的に扱うことで,従来アプリケーション開発者が個別に行ってきた作業を取り除き,アプリケーションを構成するセンサの変更にも柔軟に対応できるポータブルなアプリケーションの実現を目的とします.


また,ContextDistilleryはコンテクスト情報を段階的に抽出します.これにより,アプリケーションは自身が必要とする抽象度のコンテクスト情報を利用することができ,アプリケーション側での変換処理をなくすことも可能となり,リソース制約が大きいデバイスなどで有効です.さらに,コンテクスト情報の抽出過程を共有することができるので新たなアプリケーションで必要となるコンテクスト情報の抽出が容易になります.


現在までに,このフレームワーク上に,"Take me with you!"というアプリケーションを構築しています.これは,外出時に携帯する必要があるものの携帯状況を複数のセンサから得られた情報をもとにチェックして通知するというものです.


ContextDistilleryは以下の論文で説明しています.

  1. 箇条書き項目藤波香織,山邉哲生,中島達夫;“コンテクストアウェアなアプリケーションフレームワークにおけるメタコンテクスト情報の利用方法の提案とその応用”,日本ソフトウェア科学会 コンピュータソフトウェア誌,pp.46-59, Vol.21, No.1, January, 2004.

  2. 箇条書き項目藤波香織,中島達夫;“コンテクストアウェアなアプリケーション構築のためのフレームワーク”,情報処理学会論文誌:コンピューティングシステム(ACS),pp.107-118,Vol.44, No.SIG10(ACS2), July, 2003.

  3. 箇条書き項目Kaori Fujinami, Tetsuo Yamabe, Tatsuo Nakajima; "Take me with you!": A Case Study of Context-aware Application integrating Cyber and Physical Spaces, ACM Symposium on Applied Computing(SAC) 2004, Nicosia, Cyprus, March, 2004.