平成27年度
病原微生物学授業情報

Modified: Feb. 8, 2016

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小テスト回答のヒントは、平成15年度の「質問に対する回答など」をご覧下さい。


質問に対する回答など


10月 5日クラス

質問と回答

植物の病気を治療する場合はあるのか?
農業場面においては病気になった個体を治療することはあまり普遍的ではありません。歴史的に重要な樹木や公園の樹木、あるいは庭木や盆栽、果樹などの病気、時にはトマトなどでも菌核病等のり病部位に薬剤を含むペーストをつめたり、薬液を注入することで病気の拡大を防ぐ方法があります。

植物を病原から隔離することはできないのか?
植物工場は植物を病原からできるだけ隔離する試みです。しかし、講義でご紹介したように病原は微生物ですので、侵入を完全に防ぐのは大変困難です。ヒトの病院でも微生物を防ぐためには無菌室のような高度な環境室が必要なことからもわかります。例えば植物の種子、作業をするヒトなどが時に病原微生物を持ち込んでしまいます。しかし、講義でご紹介しますが、植物の周囲に生存する殆どの微生物は病原性ではなく、中には、ヒトの腸内細菌の様に、植物の健康を守っているものもいます。従って、完全に微生物のいない環境ができたとしても、そこで植物を栽培することが理想なのか、私は疑問に思っています。

トマト「桃太郎」はクローンとのことだが、すべて接ぎ木で増やすのか?
「桃太郎」はもちろん種子から栽培します。「桃太郎」はF1種子であり、種子を生産している種苗会社が、その両親として交配に用いる固定品種をもっています。交配でできたF1品種である「桃太郎」種子は遺伝的に同じ情報を持っていますので、いわゆるクローンです。この他、「トマト野生種は毒物をふくむのか?」とのご質問をいただきました。何をもって毒物というのか大変難しいですが、昔はトマトは毒を含むと考えられていましたが、実際には、急性毒性のある物質はあまり多くは含んでいないようです。ただし、トマト(Solanum lycopersicum)も、ジャガイモ(S. tuberosum)が含むソラニンを葉や青い果実に蓄積するとの方向もあります。「トマトの病原菌の起源がわかると病気の防除に役立つのか?」というご質問もいただきました。確かに、直接は結びつきませんが、病原菌がどのように生まれたか、あるいは病原菌特有の機構がわかると、病原菌の検診や防除法の確率に役立ちます。

Economic yieldをatteinable yieldに近づけるにはどうしたら良いのか?
Lucasの教科書の図についてのご質問です。Economic yieldは、「経済的に成り立つ防除を行った場合の収量」ですので、その防除の効率をあげる、あるいは、防除に係る費用を安くすることが必要です。

ポストハーベスト病害に対する対処法はあるのか?
日本では収穫した途端に農薬を使用することができなくなります。しかし、海外では収穫後でも農薬を使用できる国もあります。ポストハーベスト病害の多くは、圃場ですでに感染していた病原が、保存・流通段階で病原性を発揮することによって起こりますので、圃場衛生に注意をするなどのことが必要です。


イネいもち病菌が湿度が高い時期に感染するとのことだが、同様に、発病に環境が影響することがあるのか?
あります。次回ご説明します。


10月19日クラス

質問と回答

微生物の種は殆ど認識されていないにもかかわらず、多くの種が未発見であるとする根拠は?
DNA解析などを行うことで、未知のものが続々認識されるようになっています。また、これまでの方法で分離できない微生物が数多くいることもわかってきています。それらのデータから、多くの種がまだ認識されていないと考えられています。

「条件的腐生者」と「条件的寄生者」のどちらが腐生に近いのか?
「条件的寄生者」です。講義でもご紹介したように、腐生生活をおくる能力が豊かであるが生きた植物上でも生活して栄養を摂ることができるものを「条件的寄生者」と考えます。一方、「条件的腐生者」は、基本的には植物上で生活をしているが、条件が整うと、腐生生活が可能、言い換えれば、培養も可能な性状をもっている者という理解です。「スイカつる割病菌 Fusarium oxysporum f. sp. niveumが土壌中で長期間生存するのは条件的寄生者だからか?」という御質問もいただきました。たしかに、スイカつる割病菌は腐生能が豊かで土壌中でも有機物を栄養源に腐生生活できます。ただし、スイカつる割病菌は耐久体である厚膜胞子を形成し、土壌中で長期間休眠生活をすることができるため、長期間生存します。絶対的寄生者であるうどんこ病も耐久体である子嚢殻等で長期に生存する場合があることが報告されていますので、生存期間と腐生性とは独立で考えることが適切であると思います。

種子が病原に汚染されている場合、種子に症状が顕れるのか?
病原の種類や病原が感染している部位にもよりますが、症状が顕れる場合があります。代表的なのは、Fusarium属菌によるムギ類やイネなどの赤かび病です。また、Fusarium fujikuroiによるイネばか苗病でも重度に感染した種子では、稔実不足(粃)などの症状や標徴(病原が見えること)が認められる場合があります。一方、問題なのは症状がなく、病原が種子に潜んでいる状況で、この場合、汚染している種子が病原を拡散してしまうことにもなりますので、注意が必要です。


10月26日クラス

質問と回答

DNAレベルで系統解析できるのになぜ分類の基準に今でも形態が使われるのか?
元来形態分類をしてきたことが背景にあります。元々形態分類がしにくかった細菌では、早くから化学分類、DNAに基づく分類がすすんでいます。また、DNAの塩基配列の比較などで分子系統解析はできますが、どこで分類するかは決めにくいことも理由だと思います。

ボロニン小体が隔膜孔を塞ぐのは何か信号がだされるのか?
菌糸が切れたなどの情報が伝わると考えられています。「隔壁のタイプと病原性に関係はあるのか?」という御質問も頂きました。隔壁タイプは菌のグループによって特長があるようで、病原性とはあまり関係ないようです。

有性生殖は、交配型の異なる株が存在すると必ず起こるのか?
環境が大きく影響するようです。例えば、例示したトウモロコシごま葉枯病菌は、実験室内では、貧栄養培地上にトウモロコシ葉を起き、異なる交配型の菌株を対峙、暗黒、20度程度の定温におくと有性生殖を高い頻度でします。種によってその条件も異なります。「不完全菌は研究するとすべて交配できるようになるのか?」というご質問もいただきました。これは未知です。例えば、Aspergillus fumigatusは、適切なパートナー株を見つけ、条件を整えることで交配できるようになりました。イネいもち病菌は、日本産の株同士では交配しませんが、雲南省などからとった株とは交配する場合があります。Fusarium oxysporumではまだ交配が認められていません。

異核共存は菌に一般的な性質か?
多くの菌で異核共存状態をかなり長く保つ場合があることが知られています。「菌が多くのステージで単相である利点は何か?」との御質問を頂きました。逆に言えば、動物や植物が多くのステージで複相である利点は?という問いになると思います。これが、優性や劣性あるいは半優性などの性質が環境適応における多様性に有利だから、という答えだとすると、単相は本来不利な様に思えます。しかしながら、菌は、組織をほとんどつくらず、菌糸や胞子など沢山の菌体を作れますので、この不利をカバーしているものと考えられます。

食パンなどでかびのコロニーが認識する前にもすでにかびが生えているとのことだが食べて大丈夫なのか?
食パンに生えるかびにも、人畜に対する毒素(かび毒、マイコトキシン)を産生するものがありますので、あえて食べることはしないほうがよいでしょう。ただ、多くの場合気付かず食べてしまっても何も起きませんが、これは少量であるからと理解するのが良いでしょう。


11月 2日クラス

質問と回答

病原菌の生活環の分岐点、例えば無性生殖で二次伝染するか有性生殖するかはどうきまるのか?
通常、環境条件や宿主植物の状況で決まるようです。無性生殖による2次伝染は病原が数を増やすため、有性生殖は越冬など環境変化に耐えて次世代に繋げるためにおこなうと考えています。

病原体はどのようにして季節を感じるのか?
菌も光や温度などの環境要因を認知します。また、植物病原菌の場合は、植物の変化(ホルモンや糖や有機酸など)を感知している場合もあるようです。

水を好む菌の防除法は?
鞭毛を持つ胞子(遊走子)をつくる病原の多くは水がある状態で感染しやすいです。土壌中の水分を低減するなどが対処法になります。また、鞭毛を持たない菌でも、感染に水か必要なもの(例えば、イネいもち病菌)があります。葉面に降りる露が感染を促すため、風等で葉面の露を除くことも良い対処法になります。「水をこのまない菌もいるのか?」との御質問もいただきました。菌類をはじめ生物はある程度の水を必要とします。ただし、例えばうどんこ病菌などは葉面への水の散布でかなり減少します。

土壌中のネコブカビはどれくらいの年月でいなくなるのか?
ネコブカビの休眠胞子は土壌中で10年以上生存するとされています。

ツボカビはどうして植物と両生類の両方に感染するのか?
ツボカビ門には植物に寄生する種(Olpidium visiae)と、両生類に寄生する種が知られていますが、どちらにも感染する種はないと考えられています。実際、植物病原菌で正常なヒトに感染した例はあります。「ツボカビ」と「接合菌」の違いは何か?ツボカビは菌糸状にならないことが特徴です。接合菌は有性生殖の子実体として接合胞子をつくることが特徴です。


11月 9日クラス

質問と回答

菌の持つ異核共存を保つことができる能力を動物や植物は進化の課程でいつ失ったのか?
けっして「菌」は、動物や植物に比べて下等だと言うことはできません。異核共存状態を保つ能力はもしかすると菌が進化の過程で獲得した他の生物ではほとんど見られない能力である可能性もあります。

さび病菌が宿主を交代するメリットは?
さび病菌はあまり高い腐生能を持っていません。講義でご紹介した栄養のとり方で言えば「条件的腐生性」とすることができます。このような菌では、宿主植物が不在であると生存がしにくい可能性があります。そのため、例えば、ナシ赤星病菌はナシの葉が落ちる冬季に常緑の針葉樹であるビャクシン類の上で、コムギ黒さび病菌の場合は、夏季はメギ、冬季はムギ類の上で生活することで、生存場所を確保できるというメリットがあると考えられます。「宿主交代する菌がまちがえて他の種類の植物についてしまうとどうなるのか?」というご質問もいただきました。基本的に宿主範囲以外の植物に付着しても感染できませんので、死滅すると考えられます。実際には、さび病菌も多くの胞子をつくり、うまく宿主植物につくことができたもののみが生存する、と考えられます。

黒穂病菌はなぜ種子の中、胚まで到達できるのか?
花器は花粉を受容し、受粉する器官です。そのため、花器は「他」を受け入れやすくできていると考えられます。そのため、花に菌がつくと柱頭経由などで種子内部へ感染拡大、特に黒穂病金は胚乳にまで進入する場合があります。

裸黒穂病にかかったトウモロコシの味は変わるのか?
そもそも、裸黒穂に感染し発病したトウモロコシ粒は正常な粒ではなく、大きく肥大し、内部には黒穂菌が蔓延します。見かけも味も通常のトウモロコシ粒とは全く異なります。ちなみに、ホウレンソウペーストのような味でした。

マコモの黒穂病菌はマコモに感染しているのか?新たに感染するのか?
菌はマコモの苗に潜んでいて、全身に感染拡大する模様です。


11月30日クラス

質問と回答

植物病原菌が産生するペクチナーゼは病原性に関係するのか?
講義の中でもご紹介したように、ペクチナーゼは、植物の細胞間のペクチンを分解する酵素です。植物病原菌は、ペクチナーゼで細胞間を緩めてそこに侵入・進展する、あるいは、ペクチナーゼでペクチンを分解、資化して生育します。ペクチナーゼには、ポロガラクチュロナーゼやペクチン酸、ペクチンエステラーゼ等複数種類の酵素を、複数遺伝子持つことが多く、その機能が病原性に関与することが確認されているものもあります。

灰星病菌はなぜ、バラ科核果類のみを宿主にするのか?
大変興味ある御質問ですが、文献検索をしてもこのメカニズムを明らかにした論文は見つかりませんでした。他に、「灰星病に感染した果実の種子は発芽するのか」との御質問を頂きました。キャンパス内でも発病果が落下しているのを見かけますが、発芽しているのを見たことはありません。

灰色かび病菌のように多犯性の菌の方が生存戦略としては有利だと思われるが、なぜ、宿主範囲が狭い菌がいるのか?
宿主範囲が狭くても、その植物上では他の菌より優位に増殖できる、などの優位点があるのではないかと考えられます。

青かび病や緑かび病が発病したかんきつ類果実を食べても大丈夫か?
青かび病や緑かび病ではほとんど報告されていませんが、Penicillium属菌はマイコトキシンなどの二次代謝産物をよく産生する菌であり、発病している(軟腐している)果実を敢えて食べることはお薦めしません。潜在感染しているのに気づかずに食べてしまう可能性はありますが、心配する必要はないでしょう。

病害毎に防除法は異なるのか?
各論でご紹介しているように、病原、生活環(伝染環)、宿主植物など、病害によってそれぞれ異なりますので、防除法も異なります。病原の性質や生活環を良く知ることが防除法確立あるいは適用の際に重要です。

キャベツ萎黄病菌は他のアブラナ科植物に病害を起こさないのか?
ブロッコリーなど近縁の植物の一部品種、シロイヌナズナに感染することが知られています。近年、群馬県で発生したハクサイの病害がキャベツ萎黄病菌による可能性が報告されています。一方、トマト萎凋病菌は、トマト以外のナス科植物、すなわち、ナス、ジャガイモ、タバコ等に病気を起こしません。


12月 7日クラス

質問と回答

灰色かび病菌の人工接種で貴腐ブドウをつくることはできるか?
できると思いますが、貴腐ワインをつくる原料の貴腐ブドウは天然で発生した物を使用することになっています。ブドウ果実の貴腐化は、単に灰色かび病菌が感染するだけでなく、気温や湿度などの環境条件が重要です。

宿主特異性毒素は子嚢菌しか産生しないのか?
現在のところ、子嚢菌以外で宿主特異性毒をを産生する病原は知られていません。

病原が産生する毒素は植物に対する病原性以外に生理活性を持つのか?
一般に、生物が産生する、自らの生育と生命活動を維持するために必要な代謝物質以外のものを二次代謝産物と呼びます。病原が産生する病原性因子の多くは二次代謝産物であり、毒素は基本的に二次代謝産物です。微生物が産生する二次代謝産物には、抗生物質もあり、これは自ら以外の生物に対して有利になるために産生するとされています。本年度のノーベル賞はその発見と利用に対して与えられたものです。御質問いただいた、植物病原が産生する毒素は、一義的に植物に対する毒素であり、病原性に係るのか?という御質問は大変興味深い点ですが、あまり明らかになっていません。「菌などが、もともと産生していた二次代謝産物が、偶然植物に対する毒素としての機能をもち、その結果その菌などが植物に病原性を示すことができ、生活の場を得られるようになり、であった。その結果、病原が生まれた」という考え方もあります。

うどんこ病はどのように防除するのか?
通常は、登録されている殺菌剤の散布で防除します。ホームセンターにも各種うどんこ病に効果のある多用な殺菌剤が販売されています。その他、うどんこ病抵抗性品種も植物種によっては販売されていますので、それを使用することも選択肢です。研究としては、うどんこ病菌を食べる昆虫の天敵としての利用、静電によるうどんこ病菌のトラップによる発病低減、物理的処理によって植物にうどんこ病に対する抵抗性を誘導することなどが報告されています。

根頭がん腫病細菌(Agrobacterium tumefaciens)の宿主範囲は広いか?
広いです。イネの形質転換にも使用できるように、双子葉植物から単子葉植物まで感染能を持ちます。そればかりか、菌や動物に感染できるとされており、近年では、菌の形質転換にもA. tumefaciensが使用されます。「根頭がん腫病にかかった植物で多く産生されるオーキシンの由来は?」という御質問も頂きました。詳しくは、1月にご紹介しますが、A. tumefaciensが持ち、感染時に切り出されて植物の染色体に挿入されるT-DNA領域にオーキシン生合成の遺伝子が含まれており、これが発現して植物がオーキシンを産生します。「根頭がん腫病細菌は根粒菌に近縁なのか?」との御質問も頂きました。細菌の系統樹のなかでは、根粒菌に近縁であり、一時は、属名がRhizobiumになったこともあります。「根頭がん腫病にかかった植物のがん腫を切除してしまえば防除は可能では?」との御質問もありました。病原細菌がこれ以外の部分に感染していることも多いため、切除だけでは不十分であり、他の個体への伝搬を防ぐ観点からも、発病個体は速やかに取り除くことが望まれます。

トマトかいよう病はトマト栽培上大きな問題か?
大きな問題です。例えば、栃木県農業指導センターのかいよう病の紹介ページを御覧ください。防除が困難なため、発生させない、予防することが大変重要です。「トマト果実のかいよう病が発生するとどのような症状になるのか?」との御質問をいただきました。同上のページにある果実に発生したかいよう病の症状はやや進行していますが、感染したものの進展せずに止まったもの(褐色になっていない)はしばしばく市場でも見かけます。


12月14日クラス

質問と回答

「タバコ野火病」の英語名は「fire blight」か?
講義の中でそのようにお伝えしたようです。申し訳ありません。「wild fire」が英語の病名です。

クオルモンについて詳しく知りたい
平成26年12月15日クラスの質問と回答で参考資料などをご紹介しています。ご参照ください。「ハクサイ軟腐病はどうして結球期に発病しやすいのか?」という御質問を頂きました。講義でご紹介したように、軟腐病菌はハクサイにかなり初期に定着し、僅かな栄養を元に少しずつ増殖しているとされています。結球期が近づくと、ハクサイに傷ができやすくなり感染しやすくなること、栄養分が供給され急に増殖することなどから発病しやすいとされています。

ファイトプラズマが叢生症状を起こすメカニズムは?
東京大学植物病理学研究室でファイトプラズマに関する研究が進められています。その中で、叢生にかかわる小さな分泌タンパク質が見出されました。このタンパク質がオーキシン生合成経路に影響して植物の形態に影響を及ぼします。この他、「ファイトプラズマが昆虫唾腺で増殖したり、植物で増殖したりする適応メカニズムを知りたい」との御質問もいただきました。この回答を含め、東京大学植物病理学研究室のファイトプラズマ研究の概要がこちらから見られますので、是非参考にしてください。

センチュウが病原を媒介することはあるのか?
センチュウが感染した傷から土壌病原菌が侵入し、被害が拡大することがあることが知られています。その他、センチュウに関する御質問を幾つか頂きましたが、12/21の講義でご説明します。

センチュウに感染したダイコンが市販されているとのことだが、市販の際に病気などの感染していることでの基準はあるのか?
1月にご紹介するマイコトキシン(かび毒)等を除いて、公的な基準はありません。販売者などがみかけなどから自主的に判断している状況です。


12月21日クラス

質問と回答

線虫の寄生性による有利・不利はあるのか?
「外部寄生性」、「半内部寄生性」、「内部寄生性」の違いによる有利・不利についてのご質問です。内部寄生性のものは一旦植物組織内に侵入して定着すると、外部環境の影響を受けず、栄養をとり続けられる利点があると思います。一方、外部寄生性のものは、栄養をとれるところを探して移動しやすい利点があると思われます。しかし、これは推察の範囲であり、それぞれの線虫がなぜそのような寄生性を取るようになったのか、その理由は明らかではありません。

「複合病」とは何か?
複数の病原が関与して起きる病気を複合病と呼ぶことがあります。線虫が感染するとその感染痕から土壌病原菌が侵入し土壌病害がひどく発生することがありますが、線虫が土壌病原菌の侵入を増長しているだけの場合は複合病とは呼びません。

シストセンチュウの孵化促進物質は何のために植物が分泌するのか?
興味深いご質問ですが、明確な答えはありません。似たような例として、植物寄生性植物(ストライガ等)の種子の発芽を促進する宿主由来の物質(ストリゴラクトン)が知られていますが、この物質が植物にとって有益な菌根菌を誘引していることが報告されています。ストライガの生存戦略ということができます。しかし、ストリゴラクトンは二次代謝産物で、植物が生産する一義的な目的は不明です。12月7日の「質問と回答」も参考にしてください。

マツ枯の防除になぜ殺線虫剤を使うのか?カミキリムシを防除するほうが効率的と思われるが
マツ枯の伝染環については、3つの生物が関与していることなど講義でご紹介しました。したがって、防除ポイントとして、殺線虫剤の樹幹注入のほか、センチュウを媒介するマツノマダラカミキリの防除も挙げることができます。実際に、殺虫剤の空散、散布、燻蒸などの方法でカミキリを防除することも一般的です。ただし、殺虫剤の空散布は標的害生物に対する影響や、不十分な効果などから控えられるようになっています。

ニンニクなどで外的障害によって抗菌性物質のアリシンを生産するのはなぜ、動的抵抗性でなく静的抵抗性なのか?
講義でご紹介したように、動的抵抗性とは、植物が外的障害を認識し、その信号が核に伝えられて、de novoで起こる防御反応をいいます。アリシンは、すでにその前駆体が組織にあり、外的障害の結果酵素が機能して前駆体が変換されて形成されます。その過程には、上記の、外的障害の認識→信号伝達→de novoの防御反応の経路がありませんので、静的抵抗性であると考えられます。

静的抵抗性に含まれる物理的防御壁は本当に病原から植物が身をまもるのに寄与しているのか?
植物の周囲には多くの微生物がいます。この殆どは、物理的防御壁を含めて、静的抵抗性、あるいは、認識されて引き起こされる動的抵抗性によって排除され、病原になり得ません。したがって、物理的防御壁は植物が身をまもるのに寄与していると考えられます。「サポニン類はどうして抗菌性をもつのか?」とのご質問をいただきました。サポニン類がもつ界面活性作用は、リン脂質からなる細胞膜に破壊などの影響を与え、細胞毒性があるとされています。


 1月18日クラス

質問と回答

パピラ、リグニン化、過敏感反応のうちどれが一番強力か?
病原菌それぞれ、感染・侵入の機構が異なります。そのため、病原の種類によって異なる植物の反応が効果的です。例えば、細胞内に吸気を侵入させるうどんこ病菌では、パピラ形成が有効です。細胞間隙のリグニン化は一般に、細胞間隙を進展する病原に効果的であるとされます。

ファイトアレキシンの動物に対する毒性を知りたい
様々な文献がありますので、調べてみてください。例えば、サツマイモのファイトアレキシンであるイポメアマロンは、肺のうっ血と水腫,間質の肥厚,肝臓表面の出血斑などの症状をウシに及ぼし、ひどい場合には死亡させる。

PRタンパク質も人畜毒性があるのか?
アレルゲンとなることがあると報告されています。


 2月 1日に定期試験を実施しました

試験は、以下の要領で行いました。
『試験に際しては、事前に配布するB4用紙(両面使用可)1人1枚を持ち込み可とします。参考書、講義で配布したプリント、ノートなどは持ち込めません。試験前に講義のプリント・ノートおよび参考書を利用して勉強していただき、病原微生物に関する理解(記憶ではない)をしていただきたく思います。従って、細かい語句、名前等の情報については配布したB4用紙をご利用いただき、独自性のある答案をつくっていただくことを期待しています。』 
図書館所蔵の教科書・参考書は、皆さんが閲覧できる機会を確保するために、長期間借り出ししないようお願い致します。
なお、成績の評価は、シラバスにもありますように、「授業出席回数(12回が最多)」+「試験評点(88点満点)」で行います。授業出席回数が「7」未満の者は試験の成績にかかわらずDと評価します。詳しくは有江へお尋ね下さい。 
2/1は30分弱講義を行い、その後60分間で試験を行いました。また、2/8は試験の解説を行うとともに、講義(最終回)を行いますので、ご出席下さい。

試験問題と評価のポイント(801 kb pdf)


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