質問とご意見に対する返答
5月18日クラス
質問と返答
プリントの図などの出典を教えて欲しい。
プリントで使用した図の出典をお知らせするのは私の義務です。はっきり述べなかったことをお詫び致します。今回のプリントの図は、概ね、プリントの1枚目で紹介した参考書からとってきていますので、そちらを参考に復習してください。また、昨年、一昨年の授業での「質問と回答」も役に立つかと思いますので、ぜひご参照ください。
呼吸における解糖とはグルコースを乳酸にすることでは?
今回の授業の内容とは異なりますが、解糖とは、グルコースをピルビン酸などに変換する過程をいいます。一方、嫌気呼吸は、酸素の無い状態で、解糖の結果生産されるピルビン酸をTCAサイクルに持ち込まず、エタノールや乳酸に変換してエネルギーを得るところまでを含めて呼ぶことが多いようです。
ADP、ATPについてもっと知りたい
前回までの講義の内容かと思います。私の授業の中で詳しくご紹介する時間はありませんので、参考書やインターネットHPなどをご参照ください。 http://www2.edu.ipa.go.jp/gz/a-cg/a-100/a-140/IPA-acg355.htm では、動画で説明を見ることができます。
細胞内共生についてもっと知りたい
真核細胞が原核細胞に原核細胞が共生することでできた、言い換えると、真核細胞の細胞小器官は過去に共生してきた原核細胞に由来する、ということです。詳しくは、参考書や http://www.bio.nagoya-u.ac.jp:8001/~hori/asahihyakka06.html を初めとするインターネットHPをご参照ください。
遺伝子のnon-coding regionについてもう一度聞きたい
非コードDNA領域:DNA塩基配列のうちタンパク質をコードしない部分。6/1の授業でもう一度ご紹介できる予定です。ただし、詳しいことは細胞生物学などで紹介される内容となります。
溶血実験の画像をみたい
授業のスライドでカラーの図をお見せしていました。実際の動画を、http://www.asahi-net.or.jp/~dz5y-mrt/hemolysis.htm から見ることができます。
膜の輸送についてもう少し詳しく知りたい
次週、もう一度解説します。昨年度の質問に対する返答に関連の内容がありますので、参考までにご覧ください。
授業全般に対するご意見について
プリントにもっと書き込む余白が有ると良い→図や文の配置を工夫します。プリントの図の文字が見にくいものがある→改善を試みます。黒板と映像の使い分けがわかりやすい→さらにビジュアルのわかりやすく説明させていただくよう工夫します。黒板と映像の利用の際の照明の切り替え、あるいは照明状態が悪いことがある→教室の構造上なかなか困難を感じておりますが、工夫をしてみますので、またご意見をいただけるようお願いします。
5月25日クラス
質問と返答
プロトプラストとは何か?
講義のなかでプロトプラストについて紹介した記憶が無いのですが、簡単に解説します。植物・糸状菌等の細胞は、動物の細胞と異なり、細胞壁を持っています。このため、細胞を低張液あるいは高張液に入れた場合の反応も異なってきます。植物や糸状菌などの細胞から細胞壁を取除き、細胞膜が露出した状態をプロトプラスト(protoplast)と呼びます。昔は、高張液中に細胞を浸し、原形質分離を起こさせた後で、細胞壁をメスなどを用いて機械的に除いて、ごく少数のプロトプラストが分離されていました。1960年, Cookingがトマトの根端を糸状菌の培養濾液から調製した細胞壁分解酵素で処理することによって、多量のプロトプラストを分離する方法を開発しました。さらに1968年には、建部らが市販の細胞壁分解酵素を用いて葉肉組織からプロトプラストを分離する方法を確立しました。その後、様々な植物や糸状菌からも酵素を用いて容易にプロトプラストを分離することが可能になっています。プロトプラストは細胞壁を持たないため、高張液あるいは低張液で動物細胞と同様な現象を示します。また、プロトプラストは核酸など高分子を比較的容易に取込むこと、細胞融合も行えることから、細胞生物学、分子生物学などの研究分野で広く用いられるようになってきています。
能動輸送と受動輸送についてもっと詳しく知りたい
膜における輸送に関してご理解頂きたいことは2つです。一つは、膜における輸送は、「選択的」に行われることです。物理的な拡散は、物質の濃度勾配に準じて、濃度勾配をなくす(均一化)ように物質分子が移動することによって起こります。細胞にとっては、これでは困るので、膜において、必要な物質を細胞内にとりこみ、不要な物質を取り込まない、あるいは排出することができる機能があります。これを「選択的」輸送と言います。一方、この選択的な物質輸送には、エネルギーを用いる能動輸送とエネルギーを用いない受動輸送があり、それぞれ、膜に存在する専門のタンパク質の機能によっています。能動輸送では、ポンプと呼ばれるキャリアタンパク質が、ATPを分解して生じるエネルギーを利用して選択的に物質を細胞内にとりこみ、また、排出します。一方、受動輸送では、ある物質を選択的に通すことができるチャネルタンパク質によって、その物質のみが通過できるチャネルが膜に形成されます。ここをその物質が、濃度勾配に準じて通過することにより(エネルギーを使わないので、濃度勾配に逆らうことはできない)、特定の物質のみを取り込むことができます。これ以上の詳細については、Molecular Biology of the Cell 第4版、p. 615~、あるいは日本語版(現在のところ第3版まで)の相当ページをご覧ください。
あらゆる生体膜にチャネルタンパク質やポンプが存在するか?
細胞内の主要な器官はすべて生体膜によって包まれた構造をしています。各器官は、生命活動の一端を担い、それぞれ特徴的な機能を持ちます。当然ながら、ATP等に保存されたエネルギーを使用したり、それに関連してイオンのやりとりを行います。従って、器官ごとに質的あるいは量的な差はあるとは思いますが、チャネルやポンプとして機能するタンパク質は存在します。なお、核膜は生体膜の二重膜からできており、核孔が存在しますので、核内外に物質を輸送する際には、チャネルやポンプの機能は必要としません。構造を思い浮かべてみてください。
細胞骨格の構造的多様性について知りたい
「生物学基礎 テキスト」の第5章をご覧ください。また、細胞骨格の機能として、プリントに「細胞内物質の移動」と書いてありますが、これは、モータータンパク質等がレールの役割を果たす細胞骨格の上を滑るように移動することなどを示しており、その結果、細胞分裂時の、染色体の両極への移動などの現象がおきます。
原形質流動について詳しく知りたい
プリントp. 4右下に載せた原形質流動の図は、Molecular Biology of the Cell 第2版 日本語版(p. 632)からです。とてもわかりやすい解説がついていますので、ご覧ください。ただ、残念なことに、第4版にはのっていません。
細胞内共生説は真実か?また、それをサポートする証拠は?
例えば、ミトコンドリアは、細胞内共生によって生じたと考えられていますが、これはただ1回の共生の結果生じた1つの細胞から現在のすべての真核生物が派生したということを意味します。細胞内共生を確かめるには、実際にその現象を再現することが期待されますが、ほぼ不可能です。なぜなら、真核細胞のもとになった原核細胞自体も、進化を続けており、もはや細胞内共生がおこった当時の原核細胞はないからです。そのため、半永久的に細胞内共生「説」であろうと考えられています。ただし、様々な証拠が細胞内共生説を支持しています。現在、細胞内共生という現象自体は見られること、ミトコンドリアや葉緑体の外膜と内膜の化学組成の差、ミトコンドリアや葉緑体が原核生物のDNAと類似した環状の独自のDNAを持つこと、などです。詳しくは、参考書や http://www.bio.nagoya-u.ac.jp:8001/~hori/asahihyakka06.html を初めとするインターネットHPをご参照ください。
小胞体やゴルジ体についてもっと詳しく知りたい
簡単な機能は、プリントで紹介したとおりです。小胞体やゴルジ体は、細胞内で生産するタンパク質の細胞内輸送、修飾、分泌などに機能しており、大変興味深く重要な器官です。さらに詳しくは、Molecular Biology of the Cell 第4版、p. 711~、あるいは日本語版(現在のところ第3版まで)の相当ページをご覧ください。
リボソームはなぜ2つのサブユニットからできているのか?また、真核細胞のリボソームと原核細胞のリボソームの違いは?
講義の中で、真核細胞のリボソーム(80S)は、40Sのスモールサブユニットおよび60Sのサブユニットからできていることをご紹介しました。講義では省略しましたが、この40Sのサブユニットは18S RNAから、60Sサブユニットは18S, 7S, 5SのRNAおよびタンパク質から構成されています。同様に、原核細胞の70Sリボソームは、30Sスモールサブユニット(16S RNAからなる)と50Sラージサブユニット(23S、5SのRNAからなる)から構成されています。これらのサブユニットを構成するリボソーム(rRNA)は、染色体のリボソームDNA(rDNA)領域に情報として保存されており、これを転写すること(真核細胞の場合は、核内の核小体でこの転写が盛んに行われる)で作られます。リボソームの2つのサブユニットの機能については、次週のタンパク質の合成のなかで簡単にご紹介する予定です。沈降定数(S)については、昨年のクラスでの「質問に対する返答」をご覧ください。なお、プリントの表でリボソームの英語が「ribosime」となっているのは「ribosome」の誤りでした。訂正をお願いします。
リソソームや液胞についてもう少し詳しく知りたい
真核細胞内の一重の膜で包まれた小さな細胞質構造体で、主にエンドサイトーシスで取り込んだ物質の細胞内消化に機能します。ゴルジ体から輸送される、グリコシダーゼ、ヌクレアーゼ、プロテアーゼ、ホスファターゼ等の加水分解酵素を含んでいます。これに対し、植物細胞で特徴的な(正常動物細胞ではまれ)液胞は、二次代謝産物あるいは老廃物の蓄積の場であり、植物細胞では老化にともなってきょだいかすることが知られています。
横紋筋の細胞も多核では?菌に多核のものが有る理由は?
横紋筋は、分裂後の細胞が細胞融合することで多核になります。したがって、1細胞内に同一核が複数存在します。なぜ多核なのかは私は知りません。一方、菌類では、1細胞内にヘテロな核(異核)が複数存在する場合があります。菌糸融合などによって異核状態が生じるとされます。この場合、通常はそのうち1つの核が機能しており、生存に不利な環境条件になった場合などに異核が機能するようになると言われています。組換えなどしないでも形質を変化させることができるため有利と考えることもできますが、なぜそのような機能をもったのかについては不明です。
ゲノムあたりの塩基対数とは?
講義の中で紹介したように、ゲノムとは、「染色体およびその上の遺伝子(情報)」を意味します。ゲノムあたりの塩基対数とは、1つの細胞が持つ染色体を構成するDNAがいくつのヌクレオチド対からなっているかを数値であらわしたものです。すでに学ばれたように、DNAは2本鎖になっていることに注意してください。次週いちぶ紹介します。
6月 1日クラス
質問と返答
「DNAは(分解などにたいして)強い」と聞いたが、、、
確かに、RNAなどに比べると壊れにくい分子です。事実、私が10年ほど前に抽出して、水に溶解した菌のDNAは、冷蔵庫に入れて、まだ安定で、実験に使えます。また、化石や乾燥標本のDNAを用いて、過去の生物のDNAを増やす実験も行われています。しかし、1本鎖のDNAは比較的壊れやすく、2本鎖を形作ることで、分解などに対して強くなります。
核酸分子の5'、3'の決め方がわからない
講義で紹介したように、核酸はヌクレオチドが複数つながってできています。この時、1つのヌクレオチドの糖の3位の炭素原子と隣接するヌクレオチドの糖の5位の炭素原子が、ホスホジエステル結合によって結合されます。すると、核酸分子の片側には、5位の炭素原子に結合したリン酸基が、反対側には3位の炭素原子に結合した水酸基が、残っていることになります(プリント p. 2の右上参照)。核酸分子の方向性を表すために、この特徴に準じて、5'側、3'側と呼びます。プリント p. 2の右下の図の2本の鎖の5'、3'がどうしてわかるのか?との質問もいただきましたが、上で説明したことを参考にすると、1個のヌクレオチド(プリントでははっきりしませんが、講義で示しました)のリン酸基が有る側が5'ということになります。なお、関連の質問に対する返答が昨年のページにもありますので、参考にしてください。
センス鎖とアンチセンス鎖は、図をひっくり返すと、入れ替わるのでは?
DNAの2本鎖は、片方の鎖が5'→3'、もう一方の鎖が3'←5'となっており、これは180度回転しても同様です。しかし、その場合、DNAの鎖を作るヌクレオチドの塩基の並び方は逆になってしまいます。講義で紹介したように、遺伝子はタンパク質を支配する領域ですから、タンパク質の合成のメカニズムを考えると、塩基の並びは重要な意味を持ちます。タンパク質合成に関するアミノ酸配列情報を持つmRNAと同様な(UがTになっている)塩基配列を有する、DNA2本鎖のうちの片方をセンス鎖と呼びます。図を180度回転しても、センス鎖はセンス鎖、アンチセンス鎖はアンチセンス鎖のままです。ただし、塩基配列を示すときに、センス鎖の5'を左に、センス鎖の3'側を右に書くきまりがある(そうしないと、遺伝子がどれかわかりにくくなります)ので、図をひっくり返すようなことはあまりありません。但し、2つ以上の遺伝子領域の染色体上での位置関係を示すときに、有る遺伝子は左から右へ、有る遺伝子は逆方向へ示される場合がありますが、その場合は、それらの遺伝子が、DNA2本鎖の異なる鎖をセンス鎖、あるいはアンチセンス鎖としていることを示します。
RNAポリメラーゼ複合体IIについてもっと詳しく知りたい
「生物学基礎」ではこの詳細については省略致します。詳しくは、Molecular Biology of the Cellか、「遺伝子の部屋」 ホームページ(応用編、転写開始!!)をご参照ください。
エクソンおよびイントロンについて詳しく知りたい
詳しくは、「遺伝子の部屋」 ホームページ(応用編、目指せ完全体!)をご参照ください。「イントロンのスプライシングに機能する酵素(これについては講義では紹介しませんでしたが、遺伝子の部屋では紹介されています)をなくすとどうなるのか?」との質問をいただきました。イントロンがスプライシングされないと、正しいタンパク質が合成されず、形質の変化が現れる可能性が高くなります。酵素ができない場合は、イントロンをもつすべての遺伝子由来のタンパク質が以上になりますので、致死すると考えられます。
タンパク質を合成する場であるリボソームは小胞体についていないものだけか?
逆で、小胞体に結合したリボソームでタンパク質の合成が行われます。小器官の説明で紹介したように、合成されたタンパク質は多くの場合、小胞体によって他部位へ輸送されるのですから、リーズナブルです。
tRNAにも個体差はあるのか?
個体差については私は知識はありませんが、もちろん、生物種などによって少しずつ異なっているはずです。
「遺伝子の部屋」以外にも参考になるホームページはあるか?
ニュートンスペシャル電子出版「細胞」http://www.newtonpress.co.jp/search2/index.html は基本的に有料ですが、その一部を無料で閲覧できます。絵がきれいですので、一度見て頂くと良いかと思います。福岡大学の「核酸の化学」http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/NA_index.htm も参考になるかと思います。
6月 8日クラス
質問と返答
DNAの複製の際、新しいDNA鎖はどこから出てくるのか?
講義でも説明したように、DNAの2本鎖が複製起点において(ヘリカーゼという酵素によって)ほぐれ、その各鎖を鋳型として、相補的な塩基を持つヌクレオチドが5'→3'方向に結合して、新しい鎖が形成されます。すなわち、細胞内のヌクレオチドからDNA鎖が新生されるのです。6/1の講義でもご紹介したように、各ヌクレオチドはホスホジエステル結合により鎖状に結合します。
RNAプライマーとは何か?
DNAの複製のきっかけとなるRNAの断片のことです。複製起点においてほぐれたDNAの鎖(親鎖)の鋳型と相同性を持つ短いRNA断片で、RNAプライマーゼという酵素の働きでつくられます。RNAプライマーが相補的にDNA鎖に結合し、2本鎖を形成している場所にDNAポリメラーゼが結合し、そこからDNAの新しい鎖(娘鎖)を合成します。複製後に、RNAプライマーは、DNAに置き換えられ、DNA娘鎖が完成します。
DNA合成はなぜ5'→3'に限られるのか?
これは、DNA合成を司る酵素(DNAポリメラーゼ)の機能によって決定されています。DNAポリメラーゼは、鋳型とするDNA鎖(親鎖)を3'→5'方向に読み取り、親鎖と相補的な新しい鎖(娘鎖)を5'→3'方向に合成します。
細胞分裂の度になぜテロメアは短くなるのか?
講義でもご紹介したように、DNA複製において、リーディング鎖では5'→3'方向で連続的に新しい鎖がつくられますが、ラギング鎖では、短いフラグメント(岡崎フラグメント)が複数形成され、これが後で結合して新しい鎖ができます(詳しくは、プリントおよび「遺伝子の部屋」などをご参照ください)。染色体の末端のテロメア領域で複製が起こるとき、その5'端のRNAプライマーがDNAに置き換えられないため、その部分が2本鎖を形成できず、切断されます。その結果テロメアはだんだん短くなります。詳しくは、http://www.lif.kyoto-u.ac.jp/labs/fish/cancer/genomeOS/Go-4.html などをご覧ください。
減数分裂のはじめで、なぜDNA量を一度倍加しなくてはならないのかわからない
これはとても大切な質問です。核相が2nの動物や植物が配偶子(核相n)を作る場合、減数分裂によって各配偶子の細胞は、元の細胞の相同染色体のどちらかしかもたないため、最終的に核相が半減します。しかしながら、この相同染色体は、親の細胞(体細胞)が持つ相同染色体のどちらかの完全なコピーです。このコピーを作る段階で、一旦DNAを複製する必要があり、そのために染色体あたり、および、核あたりのDNA量が倍加します。ただし、質問いただいたように、倍加しなくても相同染色体の1つずつが娘細胞に移行すれば核相nの配偶子はできることになります。しかし、生物はこのようなシステムを持っていません。また、その理由もわかっていません。これについては、「Essential 細胞生物学 南江堂、1999、p. 564」に既述があります。
相同染色体とは何か?
1つの細胞(核)内に存在するサイズ(長さ)や形などが相等しい1対の染色体を言います。一般に、それぞれ、父方および母方から由来します。1対の相同染色体上には、同じ遺伝子か対立遺伝子が,同じ座でも存在するのが原則です。減数分裂時に相同染色体は対合します。
2n=46のnは何を意味するのか?
相同染色体の組数です。
塩基配列で「A/T」などは何を意味するのか?
説明するのを忘れてしまい申しわけありません。「A/T」は、「AまたはT」の意味です。
子供が23通りとはどういう意味か?
そのようなことを授業でご紹介した覚えはありません。ヒトの体細胞は、2n=46(22組の常染色体が各2本、性染色体2本)で、減数分裂の結果形成される配偶子はn=23になります。
参考になるホームページ紹介(追加)
国立遺伝学研究所「遺伝学電子博物館」 http://www.nig.ac.jp/museum/index.html。
6月15日クラス
質問と返答
エンドウの染色体数はいくつか?
2n=14でした。講義時に把握しておらず、失礼致しました。従って、7種類の染色体をもつことになります。
優性形質は劣性形質よりもなぜ優先的に後代に伝わるのか?
対立形質のうち、より優先的に後代に伝わる形質を「優性形質」と呼んでいることをご理解ください。例えば、A遺伝子が物質X→物質Yの変換を司る酵素をコードしていて、物質Yが形質を決定している場合(aはこの酵素をコードしていないとします)、AAの個体もAaの個体もAという酵素を(量は異なっても)生産しますので、どちらの個体でも物質Yが生産され、同じ形質が現れます。
トランスポゾンについて詳しく知りたい
生物学基礎の範囲を逸脱していると思いましたので、講義の中では詳しくは述べませんでした。いわゆる「動く遺伝子」で、最近では。6月9日の朝日新聞朝刊で紹介されています。インターネットで「トランスポゾン」で検索をかけると非常に多くのURLを見ることができます。http://micro.fhw.oka-pu.ac.jp/microbiology/genetics/transposon.html など、比較的わかりやすく解説されている場合がありますので、閲覧してみてください。
染色体の乗換えはどのような場合に起こるのか?また、組換えとは何か?
配偶子を形成する減数分裂において、倍加した相同染色体が対合して四分(子)染色体を形成します。この状態で、相同染色分体間に交叉が起こり,染色分体が切断され、異なる染色分体と結合することを染色体の乗換えといいます。その結果,遺伝子の組換えが起こる場合があります。
なぜ、同一染色体上の遺伝子間の距離が長いほど組換えの可能性が高いのか?
上で説明したように、遺伝子の組換えは、相同染色体分体の乗換えによって起こります。この乗換えは、基本的にはランダムに起こりえます。ですから、遺伝子間の距離が遠ければ、その間で染色体の乗換えが起こる可能性が高く、結果的に遺伝子の組換えが起こる可能性が高くなります。
遺伝子組換えの何が危険なのか?
講義でもご紹介したように、この場合の「遺伝子組換え」は染色体の乗換えの結果起こるものではなく、外来遺伝子の導入などによってつくられたものです。その何が危険なのか、抗原性に基づくアレルギー、同種生物への遺伝子の伝播など様々な危険性について議論がなされているのが現状です。インターネット上で検索すると数多くのURLを発見できると思います。ただし、その危険性に対する議論は、「生物学基礎」でするには、あまりにも壮大です。私は、「植物保護学」などの講義を通じて、これらの疑問に対して、客観的なデータを集め、科学的に考えることのできる人に、皆さんがなって頂けるように期待しています。ご興味が有る方は、是非そのような講義を受講する、あるいは研究室まで議論しにお越しいただければ幸いです。
本講義が、皆さんが生物学に興味を持って頂くきっかけになれたら幸いと思っています。
試験
試験答案の評価ポイントとコメント
試験問題
1 細胞内共生説
原核細胞同士の共生の結果により真核細胞が生じたこと(2点)、細胞小器官(ミトコンドリア、葉緑体)が細胞内共生によって生じた器官であること(3点)、細胞内共生説を支持する証拠(自立的に分裂する、独自の環状DNAを持つ、異質二重膜など)(1点)を理解しているかどうか評価しました。
2 遺伝子
染色体上のタンパク質合成に関与する部分(2点)、主にDNAが本体である(2点)、生命活動(形質発現)を司る、あるいは遺伝の基本単位である(1点)、構造(1点)を理解しているかどうか評価しました。
3 リン脂質二重層
生体膜(細胞膜)を構成していること(4点)、構造や表面の親水性(2点)を理解しているかどうか評価しました。
4 半保存的複製
DNAの複製様式であること(3点)、相補的にヌクレオチドを結合して娘鎖をつくること(3点)を評価しました。
5 優性
対立形質(3点)を持つホモ個体同士の交配で、次世代(F1)に現れやすい形質(3点)を優性と呼ぶことを理解しているか評価しました。
コメント
講義の中で紹介した生物学的の基本的な内容についての理解を評価しました。特に、これから生物学分野を志す方は、すべてを理解して頂おいてきたいと思います。合計30点で評価し、平均点は、En 17点、Rn 19.8点、Vn 20.3点でした。
ご自分の評点、答案についての質問などは、有江までお越しください。