南光式レーザー雨滴計(Nanko-type Laser Disdrometer)の開発
概要
自動かつ連続的に雨滴の粒径と落下速度を計測できるシステム「南光式レーザー雨滴計」(Nanko-type Laser Disdrometer)を開発しています。 光学式雨滴計(optical disdrometer)の一種です。 この装置では、降ってくる雨滴ひと粒ひと粒の粒径と落下速度を測定でき、雨滴粒径分布や運動エネルギーなどの情報を得られます。 自然降雨だけでなく、雪粒や林内雨滴も測定します。
基本的には、PCで制御するシステムです。C言語で開発したアプリケーションにより稼働します。 開発当初(2001年)に比べ、2005年以降のversionは、PC制御での雨滴測定の安定性はかなり向上し、降雨に対する雨滴の捕捉率は95%を超えます。
Arduino系のマイコンによるロガー制御タイプも開発し、2017年より稼働しています。 PC制御よりも精度が低く、限界最小粒径が小さいですが、バッテリーとソーラーパネルなどの併用で電源供給のない場所でも測定できます。 2022年頃からはPCタイプと同じくらいの精度が確保されています。
従来の市販されている雨滴測定システム(OTT Hydromet社のPARSIVEL、Thies CLIMA社のLaser Precipitation Monitor)と基本的な測定原理は一緒です。 それらに比べると、小型(雨滴計のフレームが30cm四方程度)で安価であり、山地斜面への測器運搬や生産コストに利点があります。
測定原理
レーザー雨滴計は投光側と受光側の一対のセンサを使用しています。 帯状のレーザービーム部分を雨滴が通過すると、受光側で受け取るレーザー量が減少し、それに伴いレーザー受光部から出力されるアナログ電圧が低下します。 その電圧低下の様子から、通過した雨滴の粒径と速度を算出します。
通過する粒子の形状を、真球と仮定するか、楕円球と仮定するかが必要です。 雨滴は楕円球、雪粒は形状が一定ではないため真球過程とすることが多いです。 好みの形状を決める式を与えれば、それに応じて計算アルゴリズムを変更することが可能です。
測定例
林内外に雨滴計を置いて、同一降雨イベントで雨滴を測定した例。秒単位で雨滴を検出可能。 青で示される林外雨(自然降雨)に比べて、緑で示される林内雨(林内雨)で大きな雨滴が発生していることがわかります。
貸し出し・共同研究
レーザー雨滴計は常に全台が稼働しているわけではなく、研究室に予備機がある期間もあります。 たとえば「人工降雨装置の性能評価をしたい」「雨滴の大きさを測りたい」「衝撃エネルギーを評価したい」などのニーズがあれば、ぜひご相談ください。 共同研究・測器貸与などで協力できる可能性があります。
これまでの共同研究相手(機関種類ごとの共同研究実施順)
大学
東京大学, 筑波大学, 東京農業大学, 三重大学, 山梨大学, 京都大学, 東京農工大学, 九州大学, 京都造形芸術大学, 東京理科大学, 富山大学
公的研究機関
防災科学技術研究所, 情報通信研究機構, 三重県林業研究所, 森林総合研究所, 気象庁気象研究所
民間企業
株式会社ハイドロテック, 国土防災技術株式会社, 株式会社テクノコア, 株式会社大林組, 中部電力株式会社
海外
University of Hawai'i (USA), University of South Carolina (USA), University of Delaware (USA), IDAEA-CSIC (Spain), University of Colorado Colorado Springs (USA), University of Tübingen (Germany), RWTH Aachen University (Germany)
測定実績
これまでに自分のLDGで雨滴・雪粒・人工降雨の水滴などを測定した場所を示します。じわじわと世界中に広げたいです。
関連文献
開発時に参考にした文献
- 山田正・日比野忠史・鈴木敦・蓑島弥成・中津川誠. 1996. 新しいタイプのレーザー雨滴計の開発とこれを用いた降雨の雨滴粒径分布の観測.土木学会論文集 539: 15-30.
- Loffler-Mang, M. and Joss, J. 2000. An optical disdrometer for measuring size and velocity of hydrometeors. Journal of Atmospheric and Oceanic Technology 17: 130-139.
雨滴計の性能評価が載っている自分の文献
- Nanko, K., Hotta, N., Suzuki, M. 2006. Evaluating the influence of canopy species and meteorological factors on throughfall drop size distribution. Journal of Hydrology 329: 422-431.
- Nanko, K., Mizugaki, S., Onda, Y. 2008. Estimation of soil splash detachment rates on the forest floor of an unmanaged Japanese cypress plantation based on field measurements of throughfall drop sizes and velocities. Catena 72: 348-361.