学びの方法
このくらいの時季になると思い出すことがある。高等学校時代、教室の開け放った窓からは春風が吹き込み、視界には桃の花をメインとした春の盆地の風景が広がっていた。そんなときぼんやり窓の外を眺めていると・・・、
「荻野、一句できたか?」
と例の英語の先生に皮肉たっぷりに言われた。3年間担任で、英語を教えていただいた先生だが、英語(語学)の学習には、「強制された努力」が最も効果的であることを教えていただいた(一部の英語好きは除く)。高校生というのは生意気盛りということもあって、「信じられるのは自分のみ」というスタンスで、「強制された努力」の重要性について認識したのはもう大学受験も終わったずっと後だったが。結局、現実に起こったことを客観的に振り返り、そこから窺える自分自身を見つめる(内省的に生きる)ことはたいへん難しく、その道の方からの教え(コーチング)が、最も効果的な学びの方法であることが徐々にわかった(駒場時代の体育のテニスの先生とか、寮で麻雀を教えてくれた先輩とか)。
「人に教えられること」の重要性に気づき始めた頃、プロ野球界に多大なる功績を残し選手のマネージメントを中心にさまざまな名言を残している野村克也氏の「我以外皆我師」という言葉に出会いとてもしっくりきた(元々は作家の吉川英治氏の言葉であるが)。そして長い年月を経て、英語やテニスや麻雀だけでなく、ありとあらゆることに対して非常に多くの先生、諸先輩、同輩、そして後輩の影響を生まれて以来ずっと受け続け、今の生き様が形成されているのだなということ悟ることになった。
学びの重要性に関して「習うは一生」とか高等学校で習った「子曰、学而不思則罔、思而不学則殆」【学びて思わざれば則ち罔し(くらし)。思いて学ばざれば則ち殆し(あやうし)】など有名どころがあり、両方とも曲がりなりにも研究に携わってきた今だからこそ身に沁みる言葉だが、それこそ若い頃は、言葉だけは知っていても本質は理解できず、言葉の重みを実感するのには個人的には長い時間がかかったようだ。ハウツー物の本をいくら読んでも、ハウツーが身につかない(自分の行動様式に落とし込めない)のとよく似ている(あくまで自分の場合です)。格言とか名言というのは、自らの体験の中で初めて行動様式の中に落とし込めるものであることはわかってはいるのだが(即効性はないが)、やはり学生諸氏をはじめとした若い人に心に留め置いて欲しい言葉がある。
「不機嫌というやつは怠惰とまったく同じ」(若きウェルテルの悩み、ゲーテ)
「努力は運を支配する」(日比野弘早稲田大学蹴球部元監督の座右の銘、元日本代表監督宿澤広朗氏の言葉)
「科学者は常に謙虚な態度で、自然が我々に何を囁くかに耳を傾けなければならない」
私たちの業界では、「人生の師」は「人」と「自然」ということになるわけだが、「自然が師である所以」を端的に表している名言であると思う。この言葉は、1986年に始まった佐藤研究室の実験室の一つだった四学科棟(現4号館)の123号室の壁にマジックで、乱暴に書かれていたものだ。出展など調べてみたが、今のところ見つからず、先輩のオリジナルかもしれない。
最後にたいへん個人的な話をすると、見本とすべきは、HPに関しては阿部寛さんであり、日常トークでは、高田純次さんです。
おまけ(折り紙の問題です)
表が赤色、裏が白色の正方形の色紙がある。Mを辺ABの中点としたとき、赤色と白色部分の面積比を求めなさい。
解答例
AM=a,
LA=bとすると、
LM2=LA2+AM2→(2a-b)2=b2+a2 →b=3/4a
→LM=5/4a
△AMLは辺の長さが、3:4:5の直角三角形。
また
△AML∽△BCM∽△DCNよりBC=4/3a
DC=2a-MC=2a-5/3a=1/3a→DN=1/4a
赤色の面積をS1、白色の面積をS2とすると・・
S1
=(1/2)*AM*LA+(1/2)*
MB*BC
=1/2*a*3/4a+
1/2*a*4/3a
=25/24a2
S2=(1/2)*(LM+DN)*MD=1/2*(5/4a+1/4a)*2a=3/2a2
したがって
S1:
S2
=
25/24a2:
3/2a2=25:36 (答)
この問題からもわかるように、BC=4/3aより点Cは元々の辺の三等分点になる。
これを芳賀の第一定理という。折ることで、辺を三等分できることを意味する。
おまけのおまけ
下図のように一辺の長さが1の正方形ABCDを折り返す状況を考える。
∠DEA‘=∠CA’Gなので△EDA’∽△A’CGである。したがって
y
: (1-x)=x : z→yz=x(1-x)
EA=EA’=1-yであるため△EDA’について三平方の定理を書くと、
x2
+ y2 =(1-y)2
→y=1/2(1+x)(1-x)
→
z=2x/(1+x)
x=1/nとするとz=2/(1+n)となることがわかる。折り紙で2等分は簡単なので、1/(n+1)が容易に得られることがわかる。
折り紙の数学的研究の中で、上で紹介させていただたい芳賀和夫先生は「オリガミクス(origamics)」という学問領域を提唱し、著書も出されているようだ。折り紙というと、2017年12月に学会の用務で堅田にある東洋紡さんにお邪魔したとき、高分子フィルムでできた「オリエステル」という“折り紙”をお土産にいただいた。通常、フィルムを加工するとき、「折れ曲がらないもの」を目指すのが普通だが、発想を逆にした「折り目がつきやすいフィルム」でできている。こういったところにもサイエンスがある。https://origami.olyester.net/