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平成の大合併に纏わる話

 1999年から約10年間、政府主導で行われた「平成の大合併」だが、合併を主導した総務省の資料によると、その主たる目的は「人口減少・少子高齢化等の社会経済情勢の変化や地方分権の担い手となる基礎自治体にふさわしい行財政基盤の確立」とあり、小規模で財政基盤の弱い町村を周囲の市町村と合併させることで、住民サービスの向上をはかることを狙っていた。ただし、東京を含んだ大都市圏では、ほぼ合併は行われず(田無市と保谷市で西東京市)、もともと都会生まれの人たちにとっては「田舎の人たちがなんか騒いでいるな・・」という感じだったのかもしれない。私の故郷の山梨における合併は、県が主導し、生活圏を基準にしていて市への昇格を狙っての無理やり感のある合併は少なかった等の特徴があるといわれている(山梨型合併、基本山とか峠が多く生活圏の共有が難しい)。合併の結果、64の市町村が半分以下の27となったが、その功罪については、その土地の住民でないとわかりにくく、特にコメントできないが・・・。

 私が生まれ育った旧東八代郡石和町も周辺の御坂町、一宮町、八代町、境川村、春日居町(東山梨郡)と対等合併し、笛吹市となった。個人的にはとてもよい判断だったと思うし、「笛吹市」というネーミングも悪くないと思っています(笛吹川もしくは笛吹権三郎由来)。

 新しく誕生した市町のネーミングに関しては、目につきやすい、わかりやすいこともあって、いろいろと論評の対象になる(山梨ばかりではないと思うが)。山梨県の県庁所在地は甲府市であるが、もともとあった「山梨市」に加えて「甲州市」、「甲斐市」、「中央市」が誕生し、県庁所在地を覚えなければいけない小学生たちを悩ましていると思われる(甲斐はかつて地方行政区分だった令制国の名称(広域地名)であり、甲州はその別称であるので、県全体を表すネーミングだと認識され「大きく出た感」が払拭できない。静岡県の「伊豆市」とか「伊豆の国市」と同じセンス)。やりすぎだと言われた「南アルプス市」だが、住所表記で旧町名を廃するという決断をした(「中巨摩郡」と「町村名」を「南アルプス市」に置き換える。例:中巨摩郡櫛形町△△(大字)○○番地 ⇒(新)南アルプス市△△○○番地)。そのため、芦安村を除く旧町村名の八田村、白根町、若草町、櫛形町、甲西町の名前が住所表示から消えてしまった。幸いにして、笛吹市の場合、「山梨県笛吹市」の後に従来の町村名以下が続く方式をとっているので、(旧)東八代郡石和町市部○○番地 ⇒(新)笛吹市石和町市部○○番地のようになり、旧町名が住所表示に残った(例の甲州市も勝沼という名前が残った)。自分は革新的な人間ではないので、これに関しても、とてもよい判断だったと思っている。

 一連のプロセスにおいて、私の知るところでない、いろんな人たちの努力と話し合いで今の形ができあがったことは容易に想像でき、安易なもの言いはできないことは確かであり、ネーミングを含めた大合併の功罪については、令和の時代の歴史家たちの判断を待つことになるのだろう。

 いつもそうだが、無理やりサイエンスの話に展開すると・・・、高分子化学の分野は有機化学と違って、人名を冠した重合方法はほぼない。有名どころではカーネギーメロン大学のMatyjaszewski教授らのAtom Transfer Radical Polymerization (原子移動ラジカル重合、長すぎるので頭文字をとってATRPと呼ばれる)、du Pontの研究グループにより1983年に見出されたメタクリル酸エステルのリビング重合であるgroup transfer polymerization (グループトランスファー重合, GTP)(命名には有機化学の大家であるウィスコンシン大学のB. M. Trost教授が関与していると言われている)などがあるが、個人的には、重合の特徴をよく表す東京大学、相田、井上両先生らによるimmortal polymerization (イモータル重合:不死身の重合) (J. Chem. Soc. Chem. Commun., 1985, 1148)が、センスという点では、他を圧倒しているように感じています。


おまけ:

問. 下の式の□に1~9の数字を入れ、等式を完成させなさい。同じ数字を何回も使ってもよい。

  








解答

2079を素因数分解すると2079=33 x 7 x 11となる。これらを組み合わせて2桁の数を2つつくり、右辺の分子が2桁になるような数を選べばよい。左辺の分母は33と63、右辺の分子は96となる(答)。

(2019.4.14)