化学の実験(合成、測定、その他諸々)を目的通り行うためには、論文等に書かれていないノウハウを必要とする場合がある。それらは組織・チーム・研究室の先輩から後輩へ伝承されていく。
もちろん伝承の過程で、これまでのノウハウを凌駕する新しい提言、創意工夫が盛り込まれることも多々あるが、伝言ゲームよろしく、口コミ的に伝えられる場合、その情報が劣化することがときとして起こる。手間がかかる操作を時間短縮のため根拠なく端折ったりすることは往々にしてあり、時に改善と称して間違った事実が伝えられたりする。無くて当たり前の事故の予防、安全に関することは特に劣化が早い。であるので時々は研究室のメンバーが集まって、皆で知恵を絞りつつ、再確認する作業がどうしても必要となる。
今の社会はどうだろう。過去から将来に向かって社会が、ひとりでによくなっていくことはありえなく(基本的には、流れる水のように、転がる石のように劣化していく)、誰かが、間違った方向に進まないか監視し、注意を喚起する必要があるのは上で書いたことと事情は同じである。
ラージガートにあるガンジーの碑文に刻まれた『七つの社会的罪』(Seven Social Sins)は以下の通りである。
理念なき政治(Politics without Principles)
労働なき富(Wealth without Work)
良心なき快楽(Pleasure without Conscience)
人格なき学識(Knowledge without Character)
道徳なき商業(Commerce wihtout Morality)
人間性なき科学(Science without Humanity)
献身なき信仰(Worship without Sacrifice)
ガンジーが没したのは1948年だが、見事に21世紀の世界を予言しているではないか。世の中、伝言ゲームと同じで、基盤が劣化しているのだ。劣化を食い止めるためには、我々のノウハウの再確認とは比べものにならない(当たり前か)相当のエネルギーが必要になる。
相変わらず、強引なロジックの展開だが、何事も長い時間スパンで見た場合、「物事をいい方向に進める」ことは意外に難しく、いろんな人々の流れに抗する努力の結集がやはり必要かな、と個人的には感じています。
おまけ(今回は写真で・・・)
山梨県甲州市竹森地区(旧塩山市)にザゼンソウの群生地があります。ここは甲州市から青梅に抜ける柳沢峠から伸びた尾根の北斜面の日当たりの悪い沢の底にあり、春になっても根雪があり、ザゼンソウの生育には適した環境のようです。この花は、開花するときに発熱するそうで、根雪を融かしながら開花するので写真(2014年の3月に撮影)のようなサークルができます。
(2018.12.10)