紅葉に纏わるchemistry
小金井キャンパスも紅葉真っ盛りという感じではあるが、今年は台風の影響からか、気温が高いせいか、あまり綺麗に色づいていない。特に欅は色づく前に茶色っぽくなって枯れてしまう感じで・・・。それでも東西の欅、南北の銀杏並木で飾られたキャンパスに立つと、季節の移ろいをじゅうぶんに感じることができる。
紅葉のchemistryだが、次の解説文に詳細な記述がある(大谷俊二、化学と生物、23 (11), 701 (1985))。概略は以下の通り。
春から夏まで緑葉の場合、光合成時に光を吸収する役割を果たしているクロロフィル(下図はchlorophyll a, bではエチル基、メチル基が結合したピロール環でメチル基がアルデヒド基になる。約3:1の比)が緑の色素で、黄色の色素のカロチノイド(カロテンやルテイン)も存在するが、量比の関係から緑色が優勢となる(なぜ緑の光を光合成で使わないのかは、不思議です)。
秋になり、日差しも減って、気温も下がってくると光合成の活動も一段落し、いらないものは産出しない自然の摂理にしたがってクロロフィルもカロチノイドも分解していくことになる。分解、退色過程の反応速度がクロロフィルの方が大きいため、結果として葉っぱは黄色くなる(イチョウなど、黄葉の場合)。
一方、紅葉や楓といった秋になると紅変する葉の場合、細胞液内で合成されるアントシアニン系色素が関与する。アントシアニンが生成してもクロロフィルやカロチノウドが残存するため、それらの量比にしたがった複雑な色合いを呈するようになる。多くの植物の紅葉に見られるアントシアニンは下記の構造のcyanidin
3-glucosideである(グルコースが一つだけ結合したもの)。
クロロフィルは光や酸素に弱く、葉緑体中ではカロチノイドによって保護されている。葉緑体自体が崩壊し、カロチノイドと離れ離れになると光や酸素などの外的要因によって急速に分解してくと考えられている。
いずれにしても各成分の生合成のメカニズムなど、まだまだわからないことも多そうです(ちゃんと調べていません・・・)。そもそもクロロフィルが元々関与している光合成でも、人工光合成のシステムは作ることはできません。まさに「生物から学び」、「優れた人工システムを作り上げること」が、私たちが所属しているBASEの理念なんですよねー。
というわけで、ぜひ時間をつくって、紅葉見学など出かけてみてはいかがでしょうか。ということが今回の言いたいことです(もちろん小金井キャンパスの散策でも・・・)。
都内で個人的に思い入れがあるのが、
1)神宮外苑の銀杏並木(秩父宮ラグビー場のすぐ隣で、勤労感謝の日の早慶戦、12月第一日曜日の早明戦(今日ですね)にあわせて・・・・)
2)上野恩賜公園の色々なところ(科学博物館でフーコーの振り子などを見物したあと、ぜひ・・・)