キャン・ユー・スピーク 甲州弁?
「変化についていけない世代」ということで現状を嘆いている私にとって「変らないもの」の象徴として故郷がある。町名、駅名、高等学校の名前も変ってしまったが、時間の流れ方とか空気とかが、あくまで感覚的に昔のままということである。2~3ヶ月に1回ぐらいは石和の自宅に戻り、庭の草取りをしたり掃除をしている。草むしりは、季節によっては結構つらい作業だが、気持ち的には完全にOFFになる。思考のモードが環境で変わるのは確かなようで、帰省すると甲州弁も自然と出てくる感じがする。
農工大に務めるようになってからは、車での移動が増えたが、学生時代は専ら中央本線を利用していた。国鉄時代なので、新宿発の「普通列車松本行」とか、「急行(特急ではない)かいじ甲府行」などが活躍していた時代で、今の9番線、10番線あたりのホームに立つとモード切替のスイッチが入った。石川啄木の短歌「故郷の訛り懐かし停車場の人ごみの中にそを聞きに行く」では、盛岡出身の啄木にとって停車場とは、おそらく上野駅のことだと思うが、新宿駅はそんな停車場の「甲州人、信州人」版ということになるのだろう。当時は、普通電車の乗っても立川、八王子、高尾の順に停車していたが、三鷹を過ぎて、「黄色い電車」が見えなくなり、高尾を過ぎて「オレンジ色の電車が見えなくなるにつれて、モード変換は少しずつ進み、「大月」を過ぎて笹子トンネルを抜け、「勝沼」あたりからブドウ畑に縁どられた甲府盆地の風景が車窓の全面に拡がると、変換はほぼ終わり、「石和」駅に降り立つとそれは完了した(上京時には逆のプロセス)。
これは自分だけにあてはまることかもしれないが、初めて上京する山梨県人は「方言を方言」と思わずに使ってしまっているふしがある。地理的に東京に近いこともあって、大胆なことに「言葉も標準語に近い」という意識が私にはあったし、多くの人も似たようなものだろう。そんなわけで、最初に東京で生活をはじめたとき、結構無防備に方言を使っていたと思う。そんな時、寮の山梨出身の先輩に
「それ通じないよ」
と忠告された・・・。
「出身地がわかる方言」ということで、よく紹介されるのが、山梨も含めた東海地方の一部で使われる「えらい」である。「ひどく疲れた」とか「体がきつい」といった意味だが知らない人は当然「偉い」と間違える。
「〜ちょし」=「〜するな」(食っちょし、行っちょしなど)
「〜ちゃー」=「〜しよう」(食っちゃー、行っちゃーなど)
「〜し」=「〜して下さい」(食えし、行けし、そうしろし)
「〜ずら」=「〜ですよね」(想像して物事を言う場合、じゃっかんの疑問文)
「ブチャーる」=「捨てること」
「おまん」=「おまえ」
「ぼこ」=「こども」(そこの「ぼこ」んとー=そこの子供たち)
「ちっくい」=「小さい」
「ちょべちょべする」=「調子にのっている」(ちょべちょべしちょ=調子にのるなよ)
「しわい」=「いやなやつ」
「てっ!」=(ひどく驚いたときの感嘆詞)
「そ」が「ほ」になる(そうでしょう→ほうずら。そうしなさい→ほうしろし)
と自分なりに考えてもこのぐらいはすぐに出てくる。基本はあまり綺麗な言葉ではない。
非常に不思議なのが
「ジャッシー」=「ジャージー」のような外国語系である。こういった言葉のルーツは大変気になる。
もう10年近く前になるが、石和駅近くの本屋で「キャン・ユー・スピーク甲州弁?―がんばれ!みんなの甲州弁」著者/五緒川津平太(ごっちょがわ つっぺえた)(樹上の家出版)という本を見つけ早速買ってしまった。自費出版された本で、面白可笑しく甲州弁が紹介されている。山梨の国中地方(甲府盆地を含んだ西側)を中心に相当売れたようだが、残念ながらこの本の面白さは甲州の人にしかわからないだろう。
休日の夕方、山梨から東京に向かうとき、「東京に戻るの面倒だな・・・」といつも思っているような気がする。社会復帰しなければならないことに対する、ある種の現実逃避なのかもしれないが(必ず、中央道が渋滞するのもうんざりする原因)、過ぎ去った時代を懐かしみ故郷を想う郷愁・望郷の念が根底にあり、体質的に「変らないこと」を求めていることも大きな理由のようだ。
こういう話って、同年代でない人、同郷ではない人の興味を引く可能性は著しく低いんですよね・・・。まあ、自己満足系ということでご容赦を。
追記)今回は山梨お国自慢みたいな雑文を書こうと思っていたが、方向がブレてしまった。最近はやりの「シャインマスカット」(マスカットのような黄緑色をしているが、種がなく、甘味が強いブドウで皮のまま食べられる)やかつ丼(山梨のかつ丼は、とんかつがキャベツの千切りやトマトと共にご飯の上にのっている。ようはとんかつ定食のお皿のほうが省略されたもの。東京のかつ丼を食べたい人は、50円ぐらい高い「煮かつ丼」を頼まないといけない)の話はまたの機会に。
おまけ
問1 二人で次のようなゲームをすることを考える。図1のように黒と白の石が並んでいて、二人は順番に黒と白の石を動かす。石は一個ずつ同じ列の中を好きなマスの数だけ、前または後ろに動かせる(石を飛び越えることはできないので、鉢合わせになっているときは後ろに下がるしかない)。最終的に図2のようにすべての石を相手陣に追い込んだ方が勝ちとなる(図では黒の勝ち)。先手となった場合の最善手は?
問2 下は面積が3 cm2の正三角形を3つ並べてもので、点Aは辺の中点である。斜線部分の面積を求めよ。
解答例
問1 一つの列の石(x)を完全に詰める(図3)(答え)。敵がb(またはc)を進めた数だけz(またはy)を進めるといった要領(図4,5)でゲームを進行させる。そうすると最後の石を自分の手番で鉢合わせさせることができるので、先手の勝ちとなる(頭の体操第2集改題)。
問2 図から、△DBCと△DEFは相似であり相似比は3:1である。△BCEは面積3 cm2なので、△DBCは9/4 cm2で△DEFは9/4x1/9=1/4 cm2である。よって斜線部分は3-1/4=11/4=2.75 cm2 (答え)
(2018.10.14)