農工大の樹  その93

   
ムクロジ
(ムクロジ科ムクロジ属の種、学名:Sapindus mukurossi Gaertn.,漢名:無患子)
 この種は高さ15〜20m、直径30〜40cmになる落葉広葉高木で、中国原産と言われています。日本では関東地方、北陸地方以西によく見かけます。また、中国地方の海岸には野生のものもあるらしいとも言われていますが、さだかではありません。灰色を帯びた樹皮は滑らかですが、一部剥げ落ちる特徴があります。葉は「複葉」で8から12枚の小葉が対生につきます。小さな葉がたくさんつく複葉の葉を持つ植物は多くありますが、その多くが奇数の小葉がつくのに対して、この種の小葉の数は偶数です。花期は初夏で、淡黄緑色の花が円錐状につきます。実は10月に熟しますが、実を包む果皮には光沢があり、サポニンを含み、泡立つので古くから洗濯や洗髪に使われてきました。学名のSapindus はラテン語の石けんsapoとインドをつけて学名化したもので、「インドの石鹸」という意味です。英語でもソープ・ツリーと呼んでいることから、世界的にこの種は石鹸として利用されていたようです。果皮の中には光沢のある黒い種皮に包まれた硬い種子が1つ入っています。この種子は正月の羽根つきの羽の玉として使われています。また、数珠の玉としても利用されました。これ以外にも、この種は煎じて、解熱、止血、咳止め、健胃薬として利用されてきました。
                              
 
環境資源共生科学部門 教授 福嶋 司

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