この種は樹高5〜10m(時に15m)、胸高直径20〜30cm(時に70cm)になる落葉広葉高木で、本州、四国、九州、琉球、台湾、朝鮮、中国に広く分布しています。葉は楕円形または卵状楕円形で、葉の脈が丸くそりながら縁に達するという特徴があります。花は5月から6月にかけて咲きます。先が尖った花びらのように見える4枚の白または淡紅色の総ほう片の中の丸い花軸の上に目立たない30位の花が集まってつきます。秋になると球形で多肉質の果実が赤紫に熟します。おいしそうですが、実は味がなくあまりおいしくはありません。街路樹に植えられているアメリカハナミズキと同じ仲間で多くの点で似ていますが、アメリカハナミズキは総ほう片の先は尖らずに凹むこと、赤い果実は一つひとつが分離していることで区別できます。和名のヤマボウシは「山法師」の意味で、丸い果実を山法師の坊主頭に、そして、白い総ほう片を頭巾に見立てたものと言われます。学名のkousaは箱根地方のこの種の方言「クサ」にから来たと言われています。この種の材は堅く、淡黄色で光沢があり美しいので、器具材、櫛、下駄の歯などに利用されてきました。最近では、花の美しさから庭木としても植えられることも多いようです。私は、街路樹として、最近特に多くなっているアメリカハナミズキに換えて、日本在来であるこの種を植えてほしいと密かに願っていますが、なかなかうまくいきません。この種は里山にも見られることから、人々の生活と密着しており、長野ではヤマボウシの花が咲いたら田植えを開始するという指標植物にもなっているそうです。
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