農工大の樹  その81

  
ガクアジサイ
(アジサイ科アジサイ属の種、学名:Hydranea macrophylla Seringe
別名:シチヘンゲ(七変化)、漢字:紫陽花)

 この種は高さ1.5から2mになる落葉低木で、本州の房総、三浦半島、伊豆七島、和歌山県神島、四国の足摺岬などに自生しています。葉は長さ15cmほどで大きく、長卵形で光沢があり、葉脈が目立ちます。花は2種類あります。あまり目立ちませんが写真の中央にあるのが本当の花で、その周辺にある大きな花は偽花あるいは装飾花とよばれ、花粉を運ぶ昆虫を誘い込むために変化したものです。梅雨空の下で美しい大輪の花をさかせるアジサイは、このガクアジサイが品種改良され、ほとんど装飾花だけになったものです。背が低く、装飾花が大きく、しかも白、青、紅、ピンクなど様々な花の色を持つセイヨウアジサイは、日本のアジサイが中国を経て1789年頃に英国の王立キューガーデンに渡り、その後、各国で改良されたもので、昭和初期に「ハイドランジャー」の名前で逆輸入されたものです。いまでも、アジサイの仲間は西洋人には人気で、ベルギー、ドイツ、オランダ、フランスなどでは400-500もの品種があるそうです。日本人にも古くからこの種は好まれていたらしく、万葉集にもアジサイを詠んだ歌が2首あるそうです。花言葉は花の色を反映して「心変わり」あるいは、「高慢」です。低木であることから材の利用はありませんが、かつては爪楊枝や木釘などに用いられ、煎じて解熱薬としても利用されたそうです。
     
環境資源共生科学部門 教授 福嶋 司

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