農工大の樹  その64

〈上:葉の表面 下:葉の裏面〉
  
コウヤマキ
(コウヤマキ科、コウヤマキ属の種、学名:Sciadopitys verticillata Sieb. et Zucc.、漢字:高野槇)

 この種は樹高30m、直径1mにも達する常緑針葉樹で、1科1属1種の日本固有種です。主に太平洋側に分布し、長野以西の本州、四国を経て、九州では大分、宮崎県に分布します。関東地方には分布しませんが、福島県に隔離分布します。自然の分布地では尾根の岩場のような、土壌が浅く、乾燥する貧栄養な立地に限って生育しています。コウヤマキは「高野槇」のことで、和歌山県の高野山で霊木とされていることに由来します。この種の葉は鱗片状のものと緑色の針葉の2タイプがありますが、緑色の葉は輪生状につき、葉の中央部に溝があります。これはマツのように本来2枚の葉であったものが合着したことを示すもので、葉を切断すると維管束が2本みられることからもそれがわかります。この種は木曽五木の一つとしても有名ですが、加工しやすく耐水性に富むことから建築材、器具材などいろいろな用途に利用されてきました。日本書紀の中には「棺」をこの材でつくるとの記述があります。また、この種が分布しない韓国の王陵からもこの材で作った棺が出土しているそうです。意外なところから昔の両国の交流関係がわかるものですね。この写真は府中キャンパスの正門を入った体育サークル棟付近に生育しているものです。庭園樹として植えられることも多いので、是非一度、葉を手にとってその特徴を観察してみてください。
 
環境資源共生科学部門 教授 福嶋 司
                                                     

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