農工大の樹  その57



  
イチイ
(イチイ科イチイ属の種、学名:Taxus cuspidata Sieb. et Zucc.、別名:オンコ、アララギ、漢字:一位)

 この種は日本全土の山地に自生する高木で、樹高10-20m、胸高直径50―100cmになる常緑針葉樹です。別名をアララギ、あるいはオンコ(青森県ではウンコ)といいます。この名は、この材から高官の笏(しゃく)を作ったことから、木の中の一位と呼んだことに由来します。雌株と雄株の別があり、葉は線形です。葉は螺旋状に着いていますが、一見すると二列に平らに並んでいるように見えます。果実は9-10月に熟して、種子を包む仮種皮が赤くなります。この仮種皮はヤニ臭いのですが柔らかく、食べると甘い味がします。でも、たくさんは食べられません。この種は生け垣などにもよく利用されます。また、材は年輪幅が狭く、弾力性と光沢があることから、建築材、家具材として広く利用されています。この種の葉はカヤによく似ていますが、カヤに比べると葉の先が痛くないこと、葉の裏に白い樹脂道がないことで区別できます。また、この種の変種として高さ1-2mで、葉が全方向に着くキャラボクがあります。この変種は本州の鳥海山から大山までの日本海側に分布しており、大山山頂部に生育するキャラボク(ダイセンキャラボク)が特に有名です。    
 
環境資源共生科学部門 教授 福嶋 司
    

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