農工大の樹  その122

ハクウンボク
 (エゴノキ科エゴノキ属の種、学名:Styrax obassia Sieb. et Zucc.,、別名:オオバチシャ

 この種は樹高12m、胸高直径20cm前後に達する落葉広葉樹で、北海道から本州、四国、九州、韓半島、中国に広く分布しています。この種は自然状態では、一ヶ所に多く生育する種ではありませんが、全国のブナ林内によく見かける冷温帯に本拠地を持つ種です。この種の特徴は葉と花にあります。20cmにもなる大きな葉はやや薄く、丸から卵形で、他の樹種の葉とは明らかに異なる形態をしています。また、約20個ほどの白い花が枝一杯に下向きに咲き、壮観です。和名のハクウンボクは、それが白雲のようにみえるということから付けられました。また、学名のobassia はこの種の別名であるオオバチシャから採ったものです。中国は花を鈴に見立てて玉鈴花と呼ぶそうです。この種の材は粘りがあることから、将棋の駒、「へら」などの器具材や彫刻材として使われてきました。また、この種の種子から油を採り、ロウソクを製造したそうです。多くの美しい花を付け、その後、丸い実を多く付けることなどから、庭園樹として公園などに植えられることが多いようです。また、清楚な白い花が好まれて、茶花としても利用されているようです。

農学研究院自然環境保全学部門 教授 福嶋 司

一覧へ戻る