農工大の樹  その119

イヌザクラ
バラ科サクラ属の種、学名:Prunus buergeriana Miq.漢字:犬桜

  この種は樹高10〜15m、胸高直径30〜60cmになる落葉広葉高木で、本州、四国、九州と韓国の済州島に分布します。関東地域でも雑木林の中などに所々で見かけますが、まとまって生育することはありません。幹は一般にくすんだ灰白色で、枝を折ると強い「苦い?」臭いがします。この種の花は5月頃に咲きますが、ソメイヨシノやヤマザクラなどのサクラ類と違い、花が長い小枝の先の方にまとまって着くことに特徴があります。 その形は化学実験の時に使う試験管を洗う器具「試験管洗い」を連想させます。同じような場所に生育するよく似た種としてはウワミズザクラがありますが、ウワミズザクラは幹が黒紫色であり、花を咲かせる小枝に葉が着くこと、葉の周囲の鋸歯が鋭いことなどで容易に区別できます。和名のイヌザクラは犬桜の意味で、サクラに似ていますが、一般のサクラとは異なることから付けられました。一ヶ所に生育する本数が少ないことから、材としての特別な利用はありませんが、器具材、薪炭材などとして利用されたようです。

農学研究院自然環境保全学部門 教授 福嶋 司

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