農工大の樹  その109

   
イイギリ
イイギリ科イイギリ属の種、学名:Idesia polycarpa Maxim.,
   この種は高さ15m(時に20m)、直径50cm以上にもなる落葉広葉高木です。分布域は広く、本州、四国、九州、琉球、朝鮮半島南部、台湾、中国南部に生育しています。この種は雌雄の別がある雌雄異株で、成長した雌株では秋に垂れ下がった房に濃いオレンジ色の果実をつけます。この実は鳥の餌になりますが、鳥が実が熟すのをじっと待っているのか、あるいは、実の味が悪いのでおいしい餌がなくなってから仕方なく食べるのかはわかりませんが、秋が深まるまでの長期間残っています。しかし、いったん食べはじめると実が1日ですべてなくなってしまうという現象が見られます。鳥によって散布された種子は、日当りのよい場所で芽生え、1年に1mも成長することもあります。この種にはキリ(桐:ゴマノハグサ科)と似た名前がついていますが、分類的には遠い関係です。その名前は材が帯白色で軽く柔らかくキリに似ていること、昔、この葉に飯を盛ったということから飯桐(イイギリ)と呼ばれるようになったそうです。この種の材は加工しやすいために箱や下駄の材料として使われましたが、腐れやすいため上等な材ではないようです。
環境資源共生科学部門 教授 福嶋 司

一覧へ戻る