農工大の樹 その26 |
ヤブツバキ
(ツバキ科ツバキ属の種,別名:ツバキ,ヤマツバキ,学名:Camellia japonica L.
漢字:椿(日本字),山茶(中国字))
この種は樹高10m前後,胸高直径20〜30cm(時に15m,50cm)に達する常緑広葉樹で,厚くて光沢のある葉を密につけます。分布は青森県(夏泊半島)を北限とし,本州各地から四国,九州,韓国南部,中国山東省舟山列島までの暖温帯域に広がっています。種子には35%もの油分が含まれ,古くから「椿油」と呼ばれて,化粧用,食用,燈用に用いられてきました。すでに遣隋使や遣唐使によって中国にも運ばれていたそうです。材は器具材として様々に利用されてきましたが,この木炭は蒔絵金粉研磨の必需品と言われています。この種は古くから人々に親しまれ,室町時代にはすでに多くの園芸品種があったそうです。野生にも多くの変種があります。
先般,小林幸子が熱唱した演歌「ユキツバキ」のユキツバキもその一つで,それは日本海側山地に分布し,樹高1〜2mの花びらを平開する変種です。この種はサザンカとよく似ていますが,花が平開しない,花糸が裂けない,若枝に毛がないことなどで区別できます。サザンカの花びらは一枚一枚散りますが,この種は花がそのままの形でポトッと落ちます。それが首が落ちることに通じるとして,武家の庭には決して植えなかったそうです。
(農学部教授 福嶋 司)