農工大の樹 その24 |
クリ
(ブナ科クリ属の種,学名:Castanea crenata Sieb. et Zucc.,漢字:栗)
この種は高さ20m,直径1m以上にも達する落葉広葉高木です。最近は三内丸山遺跡で,縄文人がこの材を使って大きな建物を建てていたことが分かり脚光を浴びました。また,野生のもの(シバグリ)が古代人の重要な食料源となっていたことも知られています。クリの語源は,種子の色を表現した黒実(くろみ)に由来すると言われ,一般に使う漢字の「栗」は日本のクリではなくシナグリを指すもののようです。この仲間はアメリカグリ,ヨーロッバグリ,シナグリなどの呼び名があるように,北半球の中緯度地方の落葉広葉樹林内に広く分布しており,どこでも食用にされてきたようです。日本の「クリ」は,北海道西南部以南から,本州,四国,九州に分布し,朝鮮半島の中南部にも生育すると言われています。材は古来より建築,家具,薪炭材などに使われてきましたが,かつては鉄道の枕木としても重要な材でした。クリの葉は狭長楕円形でよく見かけるクヌギにたいへんよく似ていますが,葉の縁の鋸葉まで緑色であることで容易に区別でき,樹皮が黒く,縦に裂け目があることでもそれから区別できます。
(農学部教授 福嶋 司)