農工大の樹 その20 |
クロマツ
(マツ科マツ属の種,別名:オマツ,学名:Pinus thunbergii
Parlatore)
この種は海岸の砂地や崖地によく見られ,大きいものは樹高40m,胸高直径2mにも達します。分布域は本州,四国,九州,韓国南部でアカマツと似ています。アカマツに比べると樹形が壮大で,樹皮が黒く,葉が長いことで区別できますが,両種の交配による雑種も多いようです。この種は乾燥や潮風に強いので,古くから海岸地域の防風林,防潮林として植林されてきました。山陰の石見地方では,暴風,防雪のための生け垣(築地松)をこの種で造っています。江戸時代,勇壮な樹形が武士階級に好まれ,武家屋敷には多くこの種が植えられました。それを示すように,明治末期に皇居を撮影した写真には,今はマテバシイ林が広がっているお堀端の石垣の上に,多くのクロマツの大木を見ることができます。また,クロマツは街道並木としても植えられたようで,肥後の細川候が参勤交代で通った久住高原にはクロマツの並木が今でも残っています。
(農学部教授 福嶋 司)