農工大の樹 その17
シラカシ

tree17.jpg (27235 バイト)


シラカシ
(ブナ科コナラ属の種,学名:Quercus myrsinaefolia Blume,和名の別名:クロガシ)

 この木は樹高20m,胸高直径1mにもなる常緑高木で,福島県・新潟県以南の本州,四国,九州に分布します。和名のシラカシは材が白いことから,クロガシは樹皮が黒いことから名付けられたものです。関東地方の農家にはこの種の屋敷林が多く見られます。これは,この木が常緑樹であることから冷たい冬季季節風を遮る効果が期待できること,加えて薪炭材,用材としても優れていたことによると思われます。この木は幹に腐れが入りやすく,樹齢はそれほど長くありません。しかし、株の部分から「萌芽」によって新しい分身を発生させ,親の遺伝子を次世代に引き継ぐ能力を備えることで,短命の不利を克服しています。材が硬く緻密であることから用途は広く,かつては天秤棒,農機具の柄,丹の櫓,炭,薪,菓子型などの生活必需品の用材としてもおおいに利用されてきました。また,その枝条は海苔の粗朶としても使われました。古くから,これほど関東の人々の生活と密接にかかわってきた木は他にはないでしょう。

(農学部教授 福嶋 司)


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